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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第二章 天才アンドロイド
19/80

STEP17 セイレーン

本編の中では一番短いけど一番書いてて疲れた。

☆☆☆


 雨は次第に強くなっていった。

 ネロに気絶させられていたツンツン頭の男は顔面に大量の雨を浴びて目を覚ました。


「げほっ……ん?」


 彼が体を起こした瞬間、頭の上を何かが通過した。

 そして、彼のツンツンヘアーの一部が落ちた。


「ん?」

「っ邪魔だどいてろ!」


 呆けている彼をネロが無理やり押しのけ黒の一閃かわさせる。


「うひゃぁぁぁ……っ!」


 ツンツン頭(過去形)の男が前のめりになりかけながら逃げていく。

 

「くそっ……」


 ネロは濡れて垂れ下がってくる髪をかきあげ視界を確保する。

 路地の奥からぬらりと影が現れる。

 白銀の剣が揺れた。


「っ!」


 とっさに横に跳んで避ける。

 さっきまで彼のいた場所が大きくえぐれる。

 飛ぶ斬撃。華奢な見た目なのに相当な筋力なのだろう。


 ――……♪


 口笛。

 そういえば、前にそんな敵がいたような、いなかったような。


「くそっ! 集中だ……」


 相手の動きだけではなく、呼吸、足音、剣が雨をはねのける。

 それらすべてに注意を払う。

 相手の出方を予測し、最善の一手を打つのだ。

 集中しなくては……。


 水の跳ねる音。

 濡れた地面を蹴る鈍い音。

 来る!

 ネロは体を低くして懐に飛び込む。空振りした手をつかみ、組み伏せようと――。

 ――――ゴキュッ!

 関節が外れた、いや外された。

 重心が崩れて逆に体勢が崩れる。そこに強烈な蹴りが入る。息が詰まって思わずうめく。


「――しーかたがないのでおーてがみかーいた……」


 この歌は……!


「さっきのてがみのごようじなぁに!?」


 転がったままのネロに少女がとびかかる。串刺しにするつもりだ。

 彼はとっさに足を突き出した。そして刀身を掴んだ。

 勢いを殺しきれずに手の皮が切れるがそれでも攻撃をしのいだ。

 そのまま少女の肩の外れている方の手を蹴り剣を離させる。その方向に転がっていきそれを奪い取る。


「……くろやぎさんからおてがみついた…………」

「――――っ!」


 ネロは少女の喉下に、少女はネロの首筋に、剣を突きつける。

 その瞬間、雷鳴が轟く。


「…………」

「お前が、あの“歌う殺し屋”だったとはな」


 少女はあきらめたように剣を収める。ネロは油断せず立ち上がり奪った剣を地面に突き刺した。


「……あのままだったら同士討ち。しかし私の終焉はまだ。つまりあなたは私の運命を変えようとしていたということ」

「人が死ぬときなんか、誰にもわかるわけないだろ」

「……運命は神が記す。記されなくなった時が人の終焉」

「何なんだよ……お前は!」


 少女はゆっくりと突き刺さった剣を引き抜き、答えた。


「――私はセイレーン。運命を紐解く者」


 それだけ告げると、立ち去っていく。

 残されたネロはその背中を呆然と見つめていた。

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