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02.のんき者 :大原視点


小川は能天気だ。

のんびりやとかおおらかと云えば聞こえはいいが、つまり鈍くてトロイということだ。

「ウドの大木」と悪口を言われてもへらへらしているし、「ドンくさい」と邪険にされても逆に謝る始末だ。

バカでごめんね、役立たずで気が利かなくて、でも優しくしてくれてありがとうなどと利用する時だけいい顔をするクラスメイトに対してもそんな風に平気で口にするアホだ。

本気だから性質が悪い。


……そんなどこか一本ヌけたヤツだから、周りから煙たがられている俺にも分け隔てなく接してくる。


にこにこ。

にこにこ。

にこにこにこ。


笑顔が怖い。

小川の笑顔は俺にとってはある意味脅威だ。

「大原くん、さっきはありがとう」

「……何のことだよ」

俺はそらとぼけた。

礼を云われることなんかしてねえし、とシラを切る。

なのに、ヤツは、うんうんと満足げに頷くと去っていった。

……いやだから勝手に自己完結するんじゃねえよ。


クラスの奴らがうるさかったから俺は「うるせえっ」って正直に怒鳴っただけだ。

別にからかわれていた小川を庇ったわけでも肩を持ったわけでもない。

そもそもマラソン大会でビリッケツになったぐらいなんだというんだ。

小学生ガキでもあるまいし。

ふざけんなよ。気分悪い。

小川も亀よりノロイとか言われてへらへらしてんじゃねえよ。

もうどうしようもなく五月蝿くて腹が立ったので怒鳴っただけだ。

教室は一気に静まり返った。

耳障りな雑音も聞こえなくなった。

やれやれこれでゆっくり眠れる。

俺が考えたことといったらそんなことだ。

決して、小川を慮っての行為ではない。

誤解するなともっとちゃんと訴えたかったのに、彼女はさっさと去っていってしまった。


取り残された俺は、どうにも居心地の悪い思いをさせられた。


のんき者の小川のくせに、逃げ足だけは早かった。


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