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第40話 フラグ回収

なんのフラグを回収するんでしょうね?


「あの西村先生、まだ6限の授業残ってるんですけど?」


「許可は取ってあるから、座りなさい」


 いきなり5限目の終わりに、教師にカウンセリングルームに行く様に言われたから嫌な予感がしたんだよね。カウンセリングルームに入ると、そのまま無言で面談用の個室っぽい所に案内されたよ。浅木結歌の居る筈の部屋の直ぐ隣だから、同じ様な構造なのかも知れないね。


 個室自体は、教室の中に更に小部屋を作った感じで広さは四畳半位かな? 小さな窓の外に普通の教室の窓があって、微妙に圧迫感があるけど、空調の方はちゃんときいているからこの季節でも暑い位だね。


 椅子も机も教室で使っている様な物ではなく、ちゃんとした事務用の物だったよ。こんな所に立派な応接セットとかあっても邪魔だし、お金の使い方が間違っていると断言できるけどね?


「それで、何の御用でしょうか?」


「浅木さんにとって君、天木君が有害かどうか見極めたいと思ったの、私はその為にここに要るのだからね」


「有害ですか? 僕が?」


 いきなり告白は拙かったかな? 僕としては、自分の立場というか、伝えていなかった気持ちを伝える必要があったんだけど?


「お昼の様な事をされると困るの、分かるわね?」


「いいえ、全然分かりません。僕が浅木さんに好きだって言う事が、今の彼女にとって迷惑だと言うのは分かりますよ」


「そう思うのなら、もう少し、時間をかけて、ソフトなやり方で告白してくれないかしら?」


 時間をかけて、遠回りな表現で好意を伝える? それをやっていたからあんな事になったんだぞ! 目の前で好きな女の子が飛び降りを決行したんだ、もう1人の|浅木結歌≪モニカ≫が意図的に遠回りをさせてくれなかったら、僕はあの場にさえ居る事が出来なかったかも知れない。


「あの、先生には生徒の交際を禁止する権利があるんですか?」


「そんなのある訳無いでしょう? ただ、校内で浅木さんと君を会えない様にする事は出来る。それに、浅木さんのご両親にお話すれば、校外だって可能かも知れないわね?」


「……」


 ほう、面白いね。本当にそんな事が可能かな?


「西村さんにそんな事が出来ますか? 貴女は校内でも浅木結歌だけを構う訳にはいかない立場ですよね」


「……」


「浅木さんのご両親は彼女に過保護な位ですけど、それでも24時間彼女だけに注意を払う事は出来ませんよね?」


「……」


「僕は、これから何度でも浅木さんに告白し続けますよ。そして、西村さんはそれを全て阻止する事は出来ないでしょうね!」


「あ、貴方、自分が何を言っているか分かっているの?」


 しまった、素人さんに直接”気”をぶつけていた。それも、多感な男の子なら粗相をしてしまう位だぞ? 身の危険を感じたとか言われてもおかしくない……。


「西村さんこそ分かっているんですか? 僕は命を懸けて浅木結歌を助けようとしました。僕を止める積りなら、浅木結歌を受け止めた仙道咲耶並みの覚悟が要ります」


 一応、僕が意識不明の重態になったのは事実だよ、本当に運良く助かったけどさ。それに、”事故”の真相が、新聞は取り上げないだろうけど、女性週刊誌とかに漏れたらどうなるか、分かっているのかな? 少なくとも2人の女生徒の人生が大きく狂う筈なんだ、それをお金で雇われている時々が学校に来るだけのカウンセラー如きが!


「そっ、それでも、やると言ったら!」


 正直驚いた、か細くは無いけど普通の女性が、今の状況で何か言い返せるとは思わなかった。僕は、文字通りこの女性の経歴やプライドを壊す積りで居たんだ。(この部屋を出てそのまま校長室に向かう積りだったんだ。上手く交渉出来るか分からないけどさ!)


「西村先生!」


 僕はそう言いながら、目の前の机に昇り西村先生に向かって思いっきり頭を振り下ろした! あ、妙な想像をしないで欲しいよ、単に土下座しただけだからさ。


「僕に手を貸して下さい!」


「な、何?」


 いや、勢い余って机に頭をぶつけたのが悪かったかな? 痛くは無いけど、結構良い音したよ! あっ、机の上と言うのは誠意に欠けるか?(でも、この部屋の床のの部分って少なくって思い切って土下座出来るスペースが無いんだよね!)


「僕はこれから何回も浅木さんに交際を申し込む積りです。本人が嫌がったとしても止める事はないですし、止めるとすれば浅木さんが僕に一切関心を示さなくなった時だと決意しています」


 え? ストーカー? ……、別に付き纏う積りは無いんだよ? でも例えそう呼ばれても止める気は無いよ!


「貴方、天原君?」


「分かっていますよ、そこまでやるのはやり過ぎだって。心が壊れてしまうなんて僕だって望みません」


「それなら!」


「止めるという選択肢は僕には無いんです。ですから西村先生、浅木さんが限界だと思ったら僕を止めて下さい。何としても!」


「何の目的で? 単に彼女にしたいのでは無いのね?」


「ええ、僕は恋愛を通じて浅木さんに感情を教えてあげたのです」


 言葉には出さなかったけど、モニカが創造主:浅木結歌に告げたかったのはこんな感じの事だと思うんだ。”借り物の感情に振り回されて、シングリーフを滅ぼすな”とか言いたかったんだろうね。


「……、本当に変わった子よね」


「そうですか、普通の高校生ですけど?」


 元勇者だけど、今は普通の高校生だよ? 死ぬ気になればちょっとした奇跡を起こせるけど、方向性は違っても誰だって死ぬ気になれば奇跡の1つ位起こせると思うよね? (そうだ、精神力をマナの代わりに出来るかもね……。効果は期待薄だけどさ……)


「普通は、貴方の年頃なら普通とは違う所を探す物なんだけどね?」


「それはそうかもしれませんけど、何もしなくても普通で居られる誰かの観点ですよね?」


 別に僕が勇者(っぽい事)をやっていたからじゃないよ、努力して男性らしくしていた中学生の頃の僕の経験だからね。高校に入った時に一人称を”俺”に変えたら、似合わないって英知とかに言われた事もあるし、母さんには笑われたんだよね!


「ふーん、成程ね?」


「何ですか?」


 うーん、勢いで押していないと駄目だね、何か余計な事を言ってしまった気がする。


「あんまり強引だと嫌われちゃうわよ?」


「そうですね、最悪それでも構いませんよ。嫌悪と言うのも立派な感情でしょうし……」


 西村先生は、昼に僕が告白した時の浅木結歌の表情を見ていなかったかな? 単純に読めなかっただけかもしれないけど、あの時の彼女の表情に僕に対する”悪感情”は無かった様に見えた。(モニカが色々教えてくれたから、少し自惚れが入っているかもしれないけどね?)


「ふう、私だって浅木さんの症状に詳しい訳じゃないのよ?」


「それはそうでしょうね。でも、僕達の年代の悩みを聞く事に関しては、プロでしょう」


「勿論よ!」


 この問いに関して西村先生からは、心強い返事が返って来た。浅木結歌が感情を取り戻せたのが今の”主治医”の治療の結果だったり、自然治癒ならば兎も角、どう考えても異常な事が原因なのだから普通の治療法が役に立つとは思えないんだよね?


 そもそも精神的な”しょうがい”というのは目に見えない事が多くて、同じ症状が出ているからと言って同じ、いいや、はっきり言ってしまえば、目に見える症状だけで”病名”を割り当てているとも言えるんだと感じるんだよ。(もっと言えば、浅木結歌にあんな表情をさせた主治医に僕は悪感情を抱いているけどね!)


「分かったわ、天原君、君の提案に乗ってあげる。でもね、状況は出来るだけ詳しく知らせて欲しいの」


「はい、僕が無茶をしたら止めて下さい。時々ですけど、僕は無茶をしてしまうので」


「そう思っているなら、無茶を止めなさい」


「それは無理ですね、僕を何処かに閉じ込めるとか有効ですよ?」


「何を考えいるの君は!」


 怒られました、一番有効な方法なんだけどね! 実際には、浅木結歌が遠くに転校でもしてしまえば、今の僕では手も足も出せないんだけど……。


 こうして、僕の”浅木さん付き合ってください。ごめんなさい作戦”は最初で最大の難関を突破して続行される事になったんだ。

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