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第39話 泣いたり笑ったり出来るようにしてやる!

 僕が寝ている間に色々準備は整えられたらしいけど、浅木結歌が気軽に学校へとはなる筈も無かった。そこで、僕が切欠を与える事になる訳だね。


 具体的に言えば、”ゆ~いかちゃん、がっこいこ作戦”の発動である。別に浅木家の門の外から大声で叫ぶ訳ではなく、朝早めに家を出て浅木家に向かい、普通にご両親に挨拶して、浅木結歌に登校を促すという穏当な作戦である。


 いきなりやると問題だけど、その辺りは委員長が浅木家と学校に連絡を入れてくれたよ。僕の方は、病院を脱走、もとい、自主退院するのに忙しかったからね! 母さんは五月蝿かったけど、父さんが協力的だったんだ。何でも、浅木結歌の父親と意気投合したらしいよ?


 浅木の小父さんが気を利かして車で送ってくれたから少々予定が狂ったけど、次の作戦を発動する機会は幾らでもあるさ。危なく”義父さん”と呼びそうになったのは秘密だよ?


 カウンセリング室の方はまだ開いていなかったので、浅木結歌ととりあえず保健室の方に向かい、そこで彼女を委員長に任せて僕は自分のクラスを目指した。


 何人か、心配半分興味半分で話しかけてきたクラスメイトに、


「いや~、ちょっと怪我してさ。自分の血を見て気を失っちゃったんだよ」


と、一部事実を含む話をしておいたよ。


 小学生の頃、朝ご飯抜きで登校して授業中に彫刻刀で自分の指を切って気を失った事はあるんだよね? まあ、実際、例の校舎崩落事故ではクラスで1人だけ醜態を晒した事も手伝って、意外とすんなりと僕のヘタレ具合は噂から(一部の例外を除いて)事実として受け入れられる事になったよ。(委員長とは全く逆の意味で日頃の行いって大事だよね?)


 一部の例外は、英知ともう1人の剣道部の友人だったよ。その友人の方は、英知と違って常識のある生徒なので僕がヘタレを演じていると誤解しれくれたみたいだ。英知の場合はそう言う事を一切無視して、”もう1度試合をしろ!”だからね!


 丁度、ガーゼを剥がした所が痒くてわき腹に手をやったら、”怪我が治ってからだ!”とか言って自分の席に戻って行ったんだよね。これで何処まで引っ張れるか試していよう、クラス替えまでは無理かな?


 + * + 


 そんなどうでも良い午前中を乗り切って、昼休みになると僕はカウンセリングルームに向かったんだ。そう、第二の作戦”浅木さん付き合ってください! ごめんなさい作戦”を発動する時が来たんだ!


 ……、ネーミングセンスが無い? 良いんだよ、分かり易いからさ。 ……、そっちじゃない? 何で玉砕前提なのか? それは、今、僕が浅木結歌に求婚じゃなくて告白してもすんなりオッケーを貰える筈が無いと分かっているからさ!


「失礼します!」


「貴方は?」


 カウンセリングルームに居たのは、30前位の結構ふくやかな体型をした女性だった。


「カウンセラーの西村先生ですね、2-Cの天原です。浅木さんとは去年同じクラスでした」


「ああ、君が天原君ね。浅木さんに会いに来てくれたのかしら?」


「はい、出来れば一緒に昼食をと思ったんですけど、構いませんか?」


「ええ、歓迎するわ。私も一緒だけどね」


 西村先生が抜かり無くそんな事を笑顔で言ってくれた。最初の告白が観衆付きというのは恥かしいけど、もう後戻りはしないよ! さすがに赤の他人に遠慮は要らないだろ?(カウンセリングルーム出入り禁止とかは有り得るけどさ!)


「浅木さん、天原君が一緒にお弁当をだって」


「はい……」


 西村先生が奥にある扉を開けて声をかけると、中から浅木結歌が出て来た。カウンセラーの私物を置く部屋なのか、面談室みたいな場所なのか分からないけどね。


「いただきます。ところで浅木さん?」


「何、天原君?」


「僕と付き合ってくれない?」


「ちょっと、君! 何を!」


「ゴメンなさい……」


「そう、ありがとう。今日、母さんが弁当を作ってくれなかったんだよね」


 + * + * + * +


 我ながら不自然なくらい強引に話題を変えたよ。分かっていてもやっぱり胸が痛いね、だけど、これは僕が味わう義務のある痛みの筈だ。その後集めたプリントを職員室に届けていた委員長がカウンセリングルームにやってきた事もあって、僕の告白は単なる冗談だと思われた、筈もなかったよ?

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