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第34話 私を塔に連れてって

「まあ良いや、攻略方法が分かっているなら楽でいいよ。それならモニカは塔の中に入らなくても良いね?」


「えっ?」


「どんな試練が待っているか分かっているんだよね?」


 モニカの神託は凄いと思うけど、モニカ自身は冒険者の真似事には向いていないよ。ダリヤは気闘術の使い手でその胸には霊獣が住まう魔魂晶もある。リセイさんとジルは竜と精霊だから、この2人を傷付けられる存在の方が少ない位だよね。何故か唯一の男である僕が一番弱い気がするけど、それは秘密だ!


「いえ、試練があるのは分かっていますし、この方々の力が必要なのは確かです」


「そうなの?」


「はい、実際の試練を目の前にすれば別の神託が下るかも知れませんけど……」


 さすがにそこまで分かっていると、試練とは呼べない気もする。随分と微妙だけど、寝惚けた創造主様に期待しちゃ駄目だろうね。もしかすると、創世記にある様に、態とこんな中途半端な状態にしているかも知れないし。


「それなら、他の巫女とか(いわい)でも良いよね?」


「はい?」


「試練と言うのだから危険は無いとは言えないよね? モニカって体を動かすの得意だっけ?」


 そもそも服装からして、神官長っぽく、丈の長いローブっぽい物だし、動き易そうには見えない。ダリヤはそのまま戦争に行けそうな例のレザーメイルを持参だし、リセイさんの作り出す竜器は身体の一部なのでどうにでもなる。


「あれ、あれれ?」


「若い男性の、出来れば実戦経験のある(いわい)って心当たりが無い?」


「なんで私を仲間外れにするんですか?」


「モニカ、何か隠してない?」


「そんな事はないにょ?」


 あ、久々に噛んだよ! 絶対に何か隠していると見た!


「ヒロキ、見損ないましたわ!」


「えっ、ダリヤ?」


「何の力も持たない女が男性と一緒に行動したいと言っているのです、察して差し上げるものですわ!」


「ダリヤ様!」


 おかしいなダリヤがモニカを援護するなんて?


「とりあえず名前だけの神官長という職に、権威付けをしたいに決まっていますわ!」


「?」


「なんと言ってもあの曲者に育てられたのですのよ、それ位当たり前でしょう!」


 あ~、トーマさんのせいでモニカが酷い誤解を受けているね? ただ、モニカはその不本意な誤解を解こうともせずにいる、こんなのでも味方が欲しいのかな?


 どうしても同行したい理由がモニカにあって、その理由を他人には明かしたくないらしかった。冒険者の護衛を付ける提案もしたんだけど、モニカは絶対に同意しなかった。


 結局、時間切れ(ダリヤも切れたけどね)で、僕と女性4人のハーレムの様な構成で創造主の塔にアタックする事になったよ。モニカの事は出来るだけフォローするけど、一番頼りになるのはリセイさんだろうね。


 + * + 


 1階部分にある”生きた迷路”と言うのは、簡単に言えば不定期に開閉する扉を備えた10×10の部屋で構成された迷路らしいよ。冒険者が定石通りマッピングを試みたんだけど上層への階段のあると思われる部分へどうしても侵入出来なかったそうだよ。


 構成は単純だけど、誰かが出入りする事を前提に作られたダンジョンとかなり勝手が違ったらしいね。それはそうだよね、10年に1度とか人間には考えたくない話だよ。


 僕の手の中には、見知ったマークの入ったマップがあるけど、問題の閉鎖区画の壁は何重もなぞった跡が残っている。これを書いたのはきっとホレスだね!


 僕達は、入り口から入ってそのまま真っ直ぐ進んであっという間に石作りの階段のある部屋に辿り着いた。本当に文字通り最短距離だったよ! 何度か側面の扉が開閉したけど、正面に当たる扉は開きっぱなしだった。


 この状況を冒険者の誰かが見たら、どう思うだろうね。というか、扉や壁に焦げ跡が残っているから、かなりストレスが溜まっていたと思う、きっと見せない方が良いよね?


 こんな感じで、第1の試練は無事突破出来た訳だよ。ただ通路を歩いただけだって突っ込みは無しでヨロシク!


 + * +


 1階の試練を抜けると、暫くは階段が続いたんだ。前後は殆ど真っ暗で、らせん状に延々と続く階段というのは精神的に辛いものがあったけど、100段を数える頃には次の階への入り口が見えて来た。あれ?赤いし、妙に熱い気もする……よ?(嫌な予感がするね?)


 そして、2階に入ると目に入ってきたのは、文字通り炎の壁だったよ。レーグナの霊獣フェンリルとの対決以来、微妙に火と言う物が苦手なんだけどね。別にトラウマと言う程じゃないけどさ。


「炎の試練という感じだね、とりあえず水をかけてみようか?」


「そんな簡単に消える物ですの?」


「無理だろうね」


 ダリヤの疑問は当然だろうね。消火の基本としては火元への酸素の供給を止めて温度を下げてしまうのが重要なんだけど、火元って何処?


 試しに、魔法で小さな水球を作って適当に放り投げてみたら、”ドカン!”と結構派手な音がして爆発したよ。


「キャッ!」


 高温と言う程ではないけど、かなり熱い水蒸気が僕達を襲い、モニカが悲鳴をあげた。


「ヒロキ何をやっているんですの!」


「ゴメン、爆発するとは思わなかった。ダリヤは大丈夫そうだね、モニカは?」


「あ、はい、ちょっと驚いただけです」


 水蒸気爆発って奴なのかな、少し不用意だったね。普通に赤い炎ってそんなに高温じゃないと思うんだけど、普通の炎とは限らないか? そうなれば、直接冷却系の魔法で炎自体を冷やす!


 魔法の効果で炎の壁が薄くなったのは確認出来たよ、これなら上手く行きそうだね。


「こっちに出口があるなの!」


 ジルが気を利かせて(多分そんな気分だったんだろうけどね?)炎の壁の向うを偵察に行ってくれたよ。この手が使えたんだね?


「ジル、そっちに何か変わった物は無い?」


「うーんなの?」


 やっぱりジルはジルだね、何か炎を止めるスイッチとか無いかなと思ったんだけど、ジルにそれが動かせるかが問題だよ。そもそも、そんなスイッチが無い可能性も高いんだよね?


「あれ、なの?」


「どうした、ジル?」


「戻れないなの~」


 戸惑った様なジルの声が聞こえた。戻れない? さっきは普通に炎の壁を通り抜けた筈、いや、炎が薄くなった部分を通っていった気もするね? もう1度、炎の壁に冷却魔法をかけると、慌てた様にジルが戻って来た。


「ジル、大丈夫?」


「ヒロ兄~、怖かったなの!」


 短時間でも孤立は精霊にとってかなり苦痛らしいね。一方通行の炎の壁か、やっぱり一筋縄じゃいかないらしいよ。


「ダリヤ、どう思う?」


「厄介ですわね、最悪の可能性も考えておかないといけませんわね?」


 最悪か、一方通行なのが移動だけじゃなくって、道を開く事にも適用される可能性があるんだ。そうすると帰れなくなる事も有り得るよ!


「モニカ、神託は?」


「ありません、誰も受け取っていない様です」


 ああ、モニカ自身だけが受ける訳じゃなかったね。もしかすると巫女が全員で来ているんだろうか? 続いてリセイさんに視線を向けたけど露骨に目を逸らされたよ! リセイさんって気は利くけど、頭の回転が速いというタイプじゃないしね。(どっちかといえば、細かな作業を延々と繰り返すとか得意そうだよね?)


「試してみるしかないね、僕が行くよ。ダリヤ、もしもの時は頼むよ?」


「望むところですわ!」


「えっ?」


 いや、何故か勇ましいけど、ちょっとらしくない返事が戻って来たよ。


「何ですの?」


「いや、僕と同じで火が苦手になったのかなと思っただけだよ?」


「そんなことはありませんわ。あたくしを誰だと思っていますの? ちゃんと人間の魔法使いを呼んで訓練しましたもの!」


「そ、そうなんだ?」


 普通そこまでやらないよね? ちなみに今のダリヤの位置は炎の壁から一番遠い所だったりする。駄目だね、ダリヤが火を苦手になったのは僕のせいでもあるんだからね。


 何の因果か、僕がもう1度炎の中へ飛び込む事になった。それ自体は度胸の問題だけだったけど、案の定炎の壁の反対側からは魔法で炎を弱める事が出来なかったんだよね。


 ダリヤが氷狼フェンリルの力で氷の通路を作り出して、モニカとリセイさんは壁のこちら側に来る事が出来た。炎が弱められている間は行き来が可能だけど、長時間それを維持するのは難しいよね。(半端な魔力では、十分に弱める事も出来ない気がするしさ)


 こうして、ダリヤ隊員の貴重な犠牲じゃなくって、退路を確保するという重要な任務を引き受けてくれた事で、僕達は更に上層を目指す事が出来た。僕がその役目を買って出ても良かったんだけどね!(ほら、ここは俺に任せて先に行けって奴だよ、別に敵も居ないから死亡フラグじゃないからさ)

次回、主人公の名推理が爆発して、ヘタレ具合が輝きます!

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