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C.O.E. ~ヘタレ勇者の冒険~  作者: 滝音小粒
ヲーロスの章
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第29話 外に出ろ!


 そろそろこの転移の感覚には慣れたけど、いきなりヤツの前に現れるのは止めて欲しいよ。前回ので懲りて、いきなり殺気をぶつける様な事はしなかったけど、あんまり良い気分じゃないからね!


「やっと来たか、遅いぞ!」


 しかも僕を見ていきなり文句を言う竜王子キョウガだったよ。事情が分からないけど、さすがにムッとするね! 言い返そうかと思ったけど、その場には僕が会いたくない女性も居たので黙っている事にしたよ?


「まあ良い、これに着替えろ」


「これ? 何か見た事ある衣装だね?」


「それは、魔王城の女官の服ですわ」


「あ、そうだった、ありがとう、ダリヤ」


 うん、確かに目の前にいる女性魔姫ダリヤの居た魔王城の女性が着ていた……!


「キョウガ、テメェ、外に出ろ!」


「何だ、ヤルのか!」


「キョウガ様!」


「チッ、いいからそれに着替えろよ!」


 1人だけ冷静になってもこっちは許さないぞ!


「お前が着ろ!」


「何だと!」


「プククッ……、キョウガ様が女装、クククッ、お腹が痛いですわ……」


「お嬢……」


 一触触発の雰囲気を和ませたのはダリヤの忍び笑いだったよ。確かに想像すると気持ちが悪いね! キョウガ自身も情けない声しか返せないみたいだ。(キョウガの弱点を見付けた気がするけど、これは諸刃の剣だね!)


「何で僕が女装しなきゃいけないんだ?」


「何だ、そのちっちゃいのが話さなかったのか?」


「自分がちょっと大きいからって生意気なの!」


 ……、酷い事って”ちっちゃいの”だったらしいよ? 何だか妙に気が抜けたね!


「ジル、カジールにそう言う事を期待しちゃ駄目なんだよ」


「使えない奴だな」


「やる気なの!」


「ジルはちゃんと役に立ってるよ。君が居なければ僕はここに居ないからね?」


 これは、別に、その場凌ぎの言葉じゃないよ。僕には日本から(ここが何処だか分からないけど)シングリーフの何処かに移動する事も出来ないし、その前には、ダリヤの魔の手に落ちていたかも知れないんだからね。


「うんなの♪」


「竜王子も僕に用があるのなら言葉遣いには気をつけてください」


「こっちは精霊王に頭を下げているんだ、人間などに気を使う積りはねえよ!」


「精霊王に頭を下げた?」


 うーん、キョウガが誰かに頭を下げる姿は想像出来ないよ。ダリヤの方に視線を向けると、ついっと視線を逸らされた。これは絶対に下げてないね! ただ、精霊王に話が通っているのは確かだろう、強引にジルを誘拐とかは有り得ないだろうからさ。


「これからヒロキに会って欲しい方にちょっと事情があるのですわ」


「ダリヤ、事情というのは?」


 事情を聞いても女装する気はないけどね!


「元々男性恐怖症の女性なのですわ。ちょっと衝撃的な事があってあまり刺激したくないんですの」


「女性?」


「雌の竜だよ。名前はリセイ」


 折角ダリヤが助け舟を出してくれたのに、口を挟んで来るキョウガだった。コイツは黙っていた方が話が進む気がするけど、問題の女性が竜ならば竜から話を聞かない訳にはいかないだろうね。


「それで、どうして僕がそのリセイさんと会わないといけないんですか?」


「黙ってその服を着れば良いんだよ!」


 黙っているべきなのはあんただよ!


「キョウガ様、今回の話には竜族と魔王の一族との協定が関わっていますわ。ここはあたくしが話を」


「分かったよ、任せたお嬢、いや、魔王代理ダリヤ殿」


 聞いた話題が出てきたね? 魔王城でも同じ様な事を聞いた筈だよ。もしかして、キョウガが急に魔王城を去った問題が未だに解決してないのかな?


「ヒロキ、魔王と竜族の協定の話は覚えていますわね?」


「ああ、相互協力するんだっけ?」


「微妙に違いますわね。あたくし達魔人に竜族の方が手を貸してくださる替わりに、竜族の危機に魔王の力を貸すという協定ですのよ」


 違いがイマイチ分からないけど、立場的には竜族が優位なのかな? それよりも問題なのは……。


「竜族の危機?」


「そうですわよ?」


「竜族を危機に陥れる事が出来るのって、精霊位だと思っていたよ」


「それは間違いではありませんわね。でも、竜族には最も厄介な敵が居ますの」


「霊獣とか?」


「いいえ、霊獣と竜族では相性が悪いのはお分かりでしょう?」


「そうだったね、マナを打ち消すプラーナの塊だったっけ。そうなると敵って?」


「お分かりになりませんの? 竜族にとっての最も厄介な敵は、同じ竜族ですわ」


 成る程ね、”人間の敵は人間”的な考えは分からないでもないよ。確か竜族の数って少ないって聞いたよ、同士討ちしていれば数も減るよね! 特にキョウガみたいなのは周りが敵だらけだろうしさ!


「竜の敵は竜か……」


「竜族の方の名誉の為に言っておきますけど、竜族の方は仲間内では争いませんのよ?」


「あれ、そうなの?」


「お嬢、構わないぜ」


 賢明にも黙っていたキョウガが妙な口出しをしてきた。竜族の秘密とかかな?


「竜族の最大の敵は、狂った竜ですの。人間の方にとっての魔獣みたいな存在ですかしら?」


「狂った竜は、別の竜を攻撃するんだね?」


「そうですわね。元々、竜族の方々は争わないものですの」


「あれ、竜って強さを価値観の第一に置くんだよね?」


 それが少し変わって魔人に伝わってる筈なんだ、気闘術の強さが魔人というか魔王の価値だったよね?


「俺達は人間なんかと違って、そいつと向き合えば自分より強いか弱いか位は分かるんだよ!」


「そう言う事ですの」


 それは便利な能力だね、それで納得が行くかは別だけどさ。


「言い方が悪かったですわね。竜族の方々は互いに争えないものですの」


「争えない?」


「そうですわ、キョウガ様?」


「そうだな、竜同士が普通に争わないのは割りに合わないからだぜ」


「はぁ?」


 なんだそれは?


「そうだな、俺が別の竜を傷付けたとするだろう?」


「如何にもありそうな話ですね!」


「するだろ! そうすると相手が受けたと同等の傷を俺が負うんだよ! そんな馬鹿な事をするのは子供の竜だけなんだがな」


 このキョウガが言うのだから間違いないだろうね、そう言うのが竜の生態らしいよ。何かの呪いみたいだけど、確かに争えないね。キョウガに勝とうと思えば、竜族の誰かを仲間にして攻撃すればいい訳だよ。それで勝てたと思える筈も無いけどさ。


「そして、相手の竜の方を殺してしまうと、その竜自身が狂ってしまうそうですわ」


「それが狂った竜なんだ、やっぱり竜が攻撃すると……、あれ?」


「お分かりになりまして? 狂った竜を殺せば、その竜が狂ってしまうのですわ」


 それは確かに厄介過ぎるね、このシングリーフ最強の生物にも致命的な弱点がある訳だ。殺せない相手をどうやって倒すか?


「狂った竜を殺すのが、魔王の役目という事なんだね?」


「その通りですわ!」


 ダリヤがそのたわわな胸を張って断言したよ!(目の毒だね?)


「そこまでは良いけどさ、それだと僕の出番は無いよね?」


「それは、若い竜の方が相手の時ならばですから……」


「今回の相手は、俺の叔父貴なんだよ!」


「竜王の弟って事?」


「そうだよ、此間俺が魔王城から呼び出されたのは覚えているだろう?」


「ええ、それが?」


「若い奴がふざけている間に相手を殺しちまったんだ。ここまでは偶にある話なんだがな……」


「本来ならば出来る限り早く”魔王”が出陣すべきだったのですわ。でもあの騒ぎで……」


 魔王陛下自身の体調と、魔王が治めるレーグナでの霊獣の暴走か、本当に時期が悪かった。キョウガが時間稼ぎとか言っていたのが思い出せるけど、確かに相手が悪い。


「霊獣の暴走は大丈夫なの?」


「ええ、フェンリルが色々役に立ってくださいましたの!」


 霊獣の氷像が乱立する風景が目に浮かぶよね?


「もしかして、僕の役目って、狂った竜のプラーナを打ち消す事?」


「そうですわね」


「精霊王の所に助力を頼みに行ったら、お前達を推薦されたんだよ。精霊王自身が出てくれば話は早かったんだぜ!」


 それは竜王子も精霊王の怒りをかったんだろうね。もしかすると相手にされなかった可能性もあるけどさ!


「あの叔父貴が相手なんだ、俺とお嬢では分が悪い。お嬢がプラーナをマナで打ち消すって戦法を提案したんだ」


「まあ、ヒロキの戦法を活用させていただいただけですわ!」


 何故か自分の首を絞めた気がするよ! 間違った事はしていない筈なのに、おかしいよね? ダリヤって根に持つタイプなのかな、ちょっと火炙りにしただけなのに……。


「理解したな? 分かったら早くそれを着ろ!」


「それとこれとは話が違う!」


「まあ、あたくしにあんな事を言わせて逃げ出したヒロキには丁度良いのでありませんの?」


 あんな事というのは、あれかな? 永久就職(奴隷的な意味でね!)を誘われた話?


「キョウガ様、実はゴニョゴニョ……」


「何だと、乙女に告白させておいて逃げただ?」


「えっと、それは……」


 第三者的に見れば、その通りかも知れないけど。あそこで頷いていたら、今僕はどうなっていたか想像したくないよ!


「乙女に恥をかかせた報いですわ!」


「きちんと振ってやるのが男の務めだろう!」


 こんな感じで追い詰められて、意に染まぬ女装をさせられた訳だよ。”意外に似合うじゃねえか?”とか”これはこれでありですわね!”とかは耳に入らないったら入らないんだ!


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