表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C.O.E. ~ヘタレ勇者の冒険~  作者: 滝音小粒
レーグナの章
26/43

第25話 復讐


 熱さ、というより痛さを感じたのは、”それ”に対して呪文が効いた事を確信して気を抜いた瞬間だったよ。対象が大きいから上手く跳ばせなかったけど、かなり押し戻せた手応えはあったよ!


「アイチチッ!」


 熱いとか痛いとかで済んだのは、焼身自殺の経験があるからじゃないよ! 成功すれば死んでるしね! サーカスの火の輪くぐりもやった事はないよ! あ~、くだらない事を考えていたら、痛みが治まってきた気がする。精剣の加護って有り難いよね。


「貴方、馬鹿ですの!」


「馬鹿だって分かってやったんだよ、君が言う台詞じゃないけどね」


「あっ、……」


「君達兄妹って似てるね、君が引かなければ被害が増えるだけだって分かっていて、何故引けないんだよ!」


 さすがにダリヤがシュンとなったよ。落ち着くならもっと早めにお願いしたいね! 味方がいきなり火達磨になるのはかなりショッキングな物だから、よーく分かるよ。


「ごめんなさい……」


「べ、別に君の為にやった訳じゃないんだからね! 冗談だよ!」


「ヒロキ、貴方何がやりたいのかしら?」


 五月蝿いな、こっちだって一杯一杯なんだよ。こう言う時は深呼吸だ、す~は~、す~は~。何故かダリヤも一緒になって深呼吸しているけどね。ふむ、良い事を思いついたよ、僕にあんな事をさせたダリヤに対するある意味復讐にもなるね。


「うん、落ち着いた気がする。今の手は使えるね?」


「何ですの? 嫌な予感がしますわ!」


 ダリヤも意外と鋭いね。こんな事を考えるなんて自分でもまだ自分の思考が変だと思うけど、この際まあ良いさ。


「一度城へ戻って戦力を整える? 攻城兵器とか使えば何とかなるかもよ?」


「却下に決まっていますわ!」


 だと思ったよ、危険感知能力が高いのに、自分から危険に飛び込んでいくって救いようが無いと思わない? 僕? 僕は違うよね? 鈍いからさ……。


「フェンリルは意識が無い状態だと思う。だけど、敵意ある物が近付くと本能的に身を守ろうとして、”凍結”を使うんじゃないかな?」


「それに関しては異存はありませんわ。彼らの犠牲で分かった事ですもの!」


「うん、そうだね……」


 ダリヤって本当に強いよね。怒りを制御出来れば、バックス殿下が支えるに相応しい女王になるかも知れないよ。


「”凍結”自体は恐ろしい効果があるけど、同等以上の炎であれば、瞬時に効果を発揮出来ないね?」


「ええ、ヒロキが実証して見せましたもの!」


 好きでやった訳じゃないけどね。僕の呪文がダリヤの気闘術に相殺されたのを見たのと、火で攻撃する方針を決めていた事が結びついた結果の暴挙だよ! ただ、フェンリルがこの場で暴れなかった事で、単純に凍結してしまった騎兵は蘇生の可能性があるらしい、馬鹿をやった甲斐があるね。


「霊獣の暴走を止める方法って、気闘術で強化した竜器で霊獣を切りつければ良いのかな?」


「少し違いますわね、霊獣の中枢にプラーナを送り込んで体内の一時的に高まったマナを中和するんですのよ」


「それなら、一撃で終わるね?」


「ええ、狼の霊獣ならば頭部で決まりですわ!」


 おお、言い切ったよ。さすが、魔姫ダリヤだね!


「ダリヤは本当に強いね?」


「あたくしが強い? 皮肉ですかしら?」


「いいや、僕が君の立場だったら、きっと戦いを続けるなんて言わないからさ」


 僕が”バラバラ”になってしまった同僚たちの遺体を片付ける騎兵達に少し視線を送って、強さの意味を示した。


「そう言う事ですの? 戦いで兵が死ぬのは当然の事ですわ」


「いや、そう言う訳ではあるんだけど……」


 下手をすれば、その場で非難を浴びそうな答えが真顔で返って来たよ。但し、兵士の皆さんから奇異の目で見られたのは僕だったりするけどね!


「ああ、そう言う事ですのね? ヒロキの出身はどちらかしら?」


「えっ? ハーメリアって所らしいけど?」


「ああ、中央諸島の出身でしたのね。アクシリアの勇者が別の国の出身とは思いませんでしたわ」


 ハーメリアって中央諸島の地名なんだね、もう使わないと思ったから誰にも聞かなかったけどアクシリアの人には馴染みが無い筈だ。ダリヤが勇者のシステムを知らないのは仕方ないかな?


「うん、小さい頃アクシリアに移り住んじゃったからね」


「あちらの大陸では、3つの国に分かれて争っていると聞いています。このレーグナであっても同じ事ですわ」


「それはそうなんだけどね、レーグナではどんな戦いがあるのかな?」


「生きる為のですわ、魔獣達はより快適な縄張りを求めて。その煽りで魔人が身や畑を守るための戦いをしなくてはなりませんの」


「畑って、そういえば魔人って耕作してたね」


「そうですわ、こんな土地では寒さに強い野菜の類しか育ちませんですけどね」


 ダリヤが少し困った感じで話してくれたよ。そういえば、さっき(もうすごく前に感じるけど)魔王城での交渉って、嗜好品としての穀物のアクシリアからの輸入の話だったんだよね。


 中央諸島だと大量に採れなくって、アクシリアから中央諸島を経由してレーグナだから値が張るんだってさ。レーグナからは魔晶石が輸出されるんだけど、それも中央諸島の商人相手だと買い叩かれるらしいね。(魔晶石ってレーグナだと縄張り争いの結果か道端に転がっているんだけどね)


「あー、魔晶石ってアクシリアでは結構高く売れるんだよ?」


「何ですって!」


「誰かが中間マージンじゃなくって、仲介料を多く取ってる気がするよ?」


「成る程ですわ。ヘイルズ伯が妙にしつこく値段について交渉して来たのは、そのせいですのね?」


 あ、しまった、結構重要な交渉材料になっちゃうかも……、まあ仕方無いね。


「それよりさ! 霊獣と戦う時っていつもあんな無茶をしているの?」


「普通は竜族の援助がありますから、あんな事は稀にしかありませんわ!」


「ああ、そうだったね」


「ですが、魔王軍の兵は、魔王を守って死ぬ事を誇りとさえ思っていますわよ?」


 何だか妙に納得してしまったよ。別にダリヤを守って無謀な防御戦をしようとした騎兵さん達の関してだけではなくて、魔王城を命懸けで守ろうとしたダリヤ自身の行動はここに根差しているんだろうね。


 大切なものを守る為に、命を懸けられるという部分は同意できる気がする。でも相手が国だとか城だとかだといまいち同意出来ない気もするんだよ。まあ、言質は取れた様だから良いけどね。


「ダリヤ、気付いてると思うけど僕はフェンリルを倒した訳じゃないんだ」


「ええ、倒したのなら魔結晶が残されている筈ですもの」


 魔結晶か、魔晶石の上位版みたいな物かな?


「多分、少し北の方に転移させただけだと思う。少し時間は稼げたと思うけど、何か作戦はあるかい?」


「それは……、あの凍結を気闘術で防げるかが鍵になると思いますわね」


「正攻法は通用しないと思った方が良いよね?」


「何か策がありますの?」


「一応ね、気闘術であの凍結が防御出来るんなら話は早いんだけど、その様子じゃ問題がありそうだね?」


「ええ、気闘術は人間がマナを力にして使う魔法と同様の技術ですの、竜族の持つプラーナを力に変えると言う面ではね」


 プラーナというのは竜が持つ”気”の様な物らしい。その為の竜器なんだろうし、竜器を扱える魔王の血族がこの大陸では大切なんだろうね。


「ああ、それで?」


「霊獣と言うのは、精霊に近い存在と言うのはお分かりになりまして?」


「うーん、ちょっと理解出来ないけど、感覚的には分かるよ」


「霊獣の振るう力は自然の力に近くって、気闘術で上手く打ち消せるか分かりませんの……」


 僕の魔法は綺麗に打ち消してくれたのにね、無意識だろうけどさ!


「それに、上手く打ち消せたとしても、その時点でフェンリルに送り込むプラーナが十分に無くては話になりませんでしょ?」


「それは確かに問題だね」


「そんな事は分かっていますわ、ヒロキの策と言うのを話してみなさい!」


「僕の策はね……」


 + * + 


 こうして、後に引けなくなったダリヤが、僕の魔法で宙を舞い、炎を纏って一撃で氷狼を打ち倒した訳だね。その姿を噂で聞いた人々によって、”氷炎の魔姫”と呼ばれて熱狂的な支持を受ける事になる訳だよ。(魔法が打ち消されないように鎖でぶら下げる感じだったし、最後は放り投げてダリヤを炎で包んだんだよね?)


 その場に居た人間は僕だけだし、他は口の堅い(忠誠心の高いと言うべきなんだろうね)魔王軍の兵士だけだったから、


「ヒロキの馬鹿~、絶対に許しませんわ~!」


と半泣きになりながら、氷狼に体当たりをかました魔姫の詳細は一般に知られることは無かったんだよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ