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C.O.E. ~ヘタレ勇者の冒険~  作者: 滝音小粒
レーグナの章
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第24話 迎撃そして炎上

燃えますよ、主人公が本当に……


 こんな感じで僕とダリヤは100騎程の魔王軍の騎兵と、魔王城を出て北北東へと向かったんだ。体感で凡そ2時間ほど馬(っぽいもの、3本の角あり)をとばすと霊獣の影響が現れはじめたんだ。(あ、ちゃんと腕時計は持ってきたんだけど、ずっと88:88:88って表示されてるよ?)


「寒いな、やっぱり霊獣の影響なんだろうね?」


「そうですわね」


「その霊獣って、どんな霊獣なのかな?」


 え、今更そんな事を聞くなって? 対策を考える時間がある状況じゃなかったよね、色んな意味でさ。


「話しても良いですけど、逃げませんわね?」


「聞いても分からないと思うから、逃げないよ」


「もう少し頼りになる返事を期待した自分が馬鹿みたいですわ!」


 勝手に期待して、勝手に落胆して、勝手に怒らないで欲しいよ! あ、でも、ダリヤも不安なんだろうね。僕的には、霊獣をテレポで被害が出ない所まで跳ばしたい所なんだよね。簡単に跳ばされてくれるとも思えないけど、魔王城直撃コースから外れれば時間稼ぎには十分だと思うんだ。


「冷気を操る霊獣なのかな?」


「そう、|氷狼≪フェンリル≫ですわ」


「氷狼か、火が弱点だったりする?」


「それは、そうかも知れませんわね。でも、大規模な山火事を吐息1つで鎮めたという逸話もありましたわ……」


「……」


 そんな話聞きたくなかったよ! でも、誇張されている可能性はあるけど、火を嫌うのは確からしいね。吹雪の中で、マッチ棒1本では暖は取れないけど、消えない暖炉があればそれなりに役に立つ筈だよ。


 人海戦術が使えれば効果は高いだろうけど、相手が動くと運用が上手く行かないだろうね。無い物ねだりしても仕方無いよ。狼と言うんだから素早そうだし、元々使えない手だと割り切ろう。


「ダリヤ、作戦はあるのかな?」


「騎兵で撹乱して、あたくしが仕留めますわ!」


「それって、作戦なの?」


「……、前の時はそれで行けましたの」


 そんな物なのかな? 何か違うと思うけど、代案が有る訳でも無い。シーサーが敵に回ったらと考えた事はあるけど、地下の洞窟に居る事が前提で”ドカン”と洞窟を崩すアイデアだったんだよね。冒険者の間では霊獣と出会ったら、話し合えって言われている位だし……。いきなり逃げ出すより生存率が高いらしいよ。


「それなら、僕は火の魔法で援護するよ。足止めはしたいだろ?」


 上手く行けば足に怪我をさせて、そのまま仕留めたいよ。僕が仕留める訳じゃないから、出来るだけ自由に動ける位置に居たい。


「全く、ヒロキは臆病者ですわね! それでよく勇者なんて名乗れる物ですわ」


「臆病だったらここには居ないよ。勇者と名乗ったのは都合上さ。アクシリス王国の勇者と言うのを知ってから言って欲しいな」


 少し腹がたったけど、これが魔姫ダリヤなのだと思えば、少しは我慢出来る。今は”不殺の勇者”なんだけど、強そうに聞こえないよね?


「近いですわ。皆、注意なさい!」


 ダリヤの言葉を受けて、騎兵さん達が僕達の前に陣を構えたよ。場所はちょっとした広場みたいな所で、その周りは背は高いけど細い針葉樹の森になっているから大型の魔獣が縦横無尽にと言う訳には行かないね。最上と言う訳には行かないけど、悪くない戦場だと思う。


 それ程待つ事無く、フェンリルの姿が森の木の枝を折りながらその姿を現したよ。体高はシーサー|(大)と同じ位かな、体毛は青と灰色の中間だね、ただその目は魔王城の方向だけを見詰めている。暴走と言うからもう少し荒っぽい状態を想定していたんだけど、何かちがうね、それも悪い方にだよ!


 フェンリルがそのまま進んで、騎兵が動きフェンリルを二重に取り囲んだ。その動きは素人の僕が見ても鮮やかだったよ、でも結果的には良い戦術じゃなかった。


「止まりなさい、フェンリル!」


 ダリヤが一応と言った感じで声を掛けたけど予想通り無視されて、フェンリルは前進を続けた。表情には出さないけど、ダリヤが少しむっとした印象を受けたね。(本当に怒りっぽいね?)


「行きますわよ、掛かりなさい!」


 ダリヤの声で、内側の輪の半数の騎兵が一気にフェンリルに槍を向けて突進し、槍の穂先がフェンリルに触れたと思った瞬間、


”ウォーン”


というフェンリルの遠吠えが響き、騎兵達が馬ごと凍り付いてしまった。そこまではまだマシだったよ、フェンリルは何事も無かった様に歩を進めて、前にある小さな障害物を踏み砕いたんだ。まるで理科の実験で液体窒素に浸けられた薔薇が砕け散るような現実離れした光景が目の前で展開される事になったよ。


 魔人の血が蒼いというのをこの時ほど感謝した事は無いよ。もし赤かったら、自分が冷静で居られたとは思えない。蒼い人の断面は、僕にとっては現実的じゃなかったけど、ダリヤにとっては悪夢であって欲しい現実だった。


「ゲルト、クラウス、マティアス……」


「姫様、お逃げ下さい!」


 一番近くで見ていた僕には分かったよ、ダリヤが逃げる筈がないって事がね。頭に血が昇りやすいというのは魔王の子供の特徴なのも知れないけど、今は拙い。ダリヤが引かなければ他の兵士も引けないんだぞ!(このまま無策じゃ全滅だよ!)


「ダリヤ、駄目だ!」


「離しなさい!」


 やっぱりだ、素早くテレポの呪文を唱えて、ダリヤを後方(出来れば魔王城まで)に跳ばそうとした。


「テレポ」


「離せと言っているでしょう!」


 くっ、気闘術か、完全に呪文が相殺された。準備が無かったとは言え、次期魔王は伊達じゃない、どうする? 咄嗟に馬鹿な事を思い付いたけど、それをそのまま実行してしまう辺り、僕も何処か壊れているらしいよ!


「騎兵、前を空けろ!」


 騎兵に怒鳴りつけて、彼らが下がるのを見極めもせずに、フェンリルの前に魔法で火柱を起こす。何人か焦げた気がするけど無視だ、僕はその火柱に向かって馬を走らせて、馬が勝手に火柱を避けようとした瞬間馬から飛び降りて火柱の中に身を投げ、そのまま口の中で唱えていた呪文を手に触れた物に向かって解き放った。


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