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C.O.E. ~ヘタレ勇者の冒険~  作者: 滝音小粒
レーグナの章
24/43

第23話 急変

 こっ、これは、必殺の土下座しかないね! 絶対に引かれると思うけど、でも、この場を誤魔化せる自信はあるよ! ダリヤ殿下なら逆に男らしくないとか怒りそうな気もするけど、根に持たれるよりはましな気がするからさ!(多分顔色が悪くなっている僕を見て竜王子がニヤニヤしているけど、知った事か!)


”バタン”


 僕が必殺技を繰り出そうとした瞬間、謁見の間の奥にある扉が乱暴に開かれて、軍人っぽい小父さんが駆け込んで来た。何となく間を外された感じだね、別に土下座したい訳じゃないけどさ。


 軍人さんは脇目も振らず、玉座に近寄り、一礼して魔王に近付くと、小声で何かを告げたんだ。僕の所だと何が告げられたのか分からなかったけど、魔王とダリヤ殿下、そして竜王子の耳には聞こえたらしい。(魔王父娘の表情が曇ったし、竜王子は笑みを深くした気がする)


 容易ならざる事態が起こったのは理解出来たけど、その事態はそれだけでは終わらなかった。


「ギシャー!」


 いきなり特撮の怪獣の様な鳴き声が聞こえて、


「クギュルル」


 と同系統の鳴き声が直ぐ近くで聞こえた。最初の鳴き声は城の外からだろうけど、次のは竜王子の喉(口は動かなかったし、人間の発音できる音でも音量でもなかったよ!)から聞こえたと思う。


「キョウガ殿?」


「クソッ、こんな時に……」


「やはりか?」


「魔王陛下、竜族と魔族の協定に基づき、魔王の出陣を願いたい」


「キョウガ様、陛下は今!」


「黙れ、ダリヤ」


 魔王の叱責の声が飛んだけど、今度はダリヤ殿下も引き下がらなかった。


「いいえ、黙りませんわ! 今この城に向けて霊獣が迫っているのです、こちらも協定に基き竜族の助力を要請致します!」


「お嬢……」


 ダリヤ殿下の言葉に戸惑った様に視線を彷徨わせた。事態が全然分からないけど、良い気味だと思ったね。でも竜王子の視線が僕の所で留まったのは嫌な予感を覚えたよ。あの嫌な感じの笑みが竜王子の顔に再び浮かんでいるしね!


「仕方ねぇな。竜族の代表として、魔王陛下が何時でも呼び出しに応じられる状態で居てくれれば良い所まで妥協しよう。替わりに竜族からの助っ人は出せないぜ。こっちは時間稼ぎしか出来ないからな」


「感謝する、キョウガ殿」


「バックス坊やを呼び戻すんだな、最悪お嬢に出てもらうかもしれん!」


「はい……、キョウガ様」


「そんな弱気な顔は似合わないぜ、竜族から助っ人は出せないが、そこに居る勇者様を連れて行け」


「はぁ?」


 勇者様って僕だよね? 何で僕が竜王子の指示に従わないといけないんだよ?


「俺程じゃないが、役に立つぜ。じゃあな!」


「おい、ちょっと!」


 竜王子は僕の言葉を無視して近くの窓に駆け寄ると、窓を抉じ開けてそのまま飛び出して行っちゃった。真っ黒なでっかい竜が飛び去るのが見えたけど、それを暢気に眺めている余裕は僕には無かったよ。


 少し落ち着いて考えると、多分、暴走した霊獣が魔王城の方向に向かって進んでいるんだろうね。竜族側の話は全く見えないけど、とりあえず僕には関係無さそうだ。霊獣の方は直接的に関係が出来ちゃった気がする。(嫌な奴が嫌な事を言い残して行ったからね!)


「ヒロキ、準備はよろしくって?」


「いや、全然?」


「何を言っていますの? 事態は一刻を争うのです!」


 それは見れば分かるけど、何故僕がダリヤ殿下を手助けしないといけないのかは全然分からないよね?


「いきなり霊獣と戦うから、援護しろって本気ですか?」


「貴方も勇者と呼ばれる立場なのでしょう? この城の人々が危険に晒されるのを座視するとでも言うのかしら?」


 それが出来れば苦労しないよ。この城にはヘイルズ伯をはじめとするアクシリス王国の外交使節だって滞在しているんだ。


「そんな事は言わないけど、霊獣と戦った事なんて無いんだ、いや、ですよ?」


「あたくしだってそれ程経験豊かと言う訳ではありませんわ!」


 そんな事胸を張って言わないで欲しいよ。そうだ、霊獣を退治した経験のある軍人さんとか居れば!


 本当なら魔王陛下なんだけど、さっきのやり取りからすると、戦闘行為は無理だと想像出来るよね? 元々青白い顔色の魔人の体調なんて見ても分からないよ。


「軍は動かせないのですか?」


「ヒロキ殿の指摘は尤もだな、現在我が軍はこの大陸の南北に拠点を置いている」


「はい、南はバックス殿下が率いていらっしゃいますね?」


「そうだ、北はこの城だが、現在多くの兵が各地で警戒を行っていてな。一昨日西で別の霊獣が暴れだし、軍の司令が残った主力を率いて出陣したのだよ」


「そんな……」


 随分間抜けな事をしている気もするけど、魔王陛下の”志”を知っていれば馬鹿には出来ないよ。本当に最悪のタイミングなんだね、僕にとても魔王陛下にとってもさ。


「お分かりになりまして? あたくしの命を賭しても霊獣を止めてみせますわ!」


「馬鹿、貴女の兄は貴女の為に1人の部下として生きる事を決めたんですよ。気軽に命を賭してなんて言うなよ!」


「そ、そんな事、分かっていますわ。気闘術以外では殆ど兄様には勝てなかったのですから……」


 こんな時だと言うのに、ダリヤ殿下の表情は凄く柔らかい感じだったよ。怒っている表情ばっかり見て来たから新鮮だった。それともう1つ分かった事があるよ、この兄妹はお互いの事が苦手なくせに、互いの良い所だけはちゃんと見えているみたいだ。


 そうなると、さっきの茶番もストーリーが見えてくるよね?


 もし、僕がダリヤ殿下に負けたら、


「おーほほほっ、人間の勇者など所詮この程度、兄が敗れたなど小賢しい計略の結果ですわ!」


とか言いそうだよね! 逆に僕が小母さんとか言わずに普通に勝っていたら、


「くっ、人間の勇者程度と侮っていましたわ。ここまで強いとは、これではあの兄が敗れても仕方ありませんわね」


って言いそうな気がするよ。うわっ、想像しただけで声まで頭の中で再生されちゃった!


 でもそうだよね、魔王陛下の子供達が愚かであり続けられる筈も無いさ。それなら、僕も何かをしなきゃいけないね!


「魔王陛下、僕も喜んで霊獣退治に参加させていただきます」


「そうか、助かる」


「何としてでも、お嬢さんを無事に連れ帰ってみせます」


「うむ、頼むぞ」


「陛下は子供に恵まれましたね?」


「ほう、そう言われたのははじめてかも知れん。そなたに敗れて、バックスは見違える様になった。ダリヤも何かを得るかも知れんな」


 うーん、僕と魔王で魔姫を褒めているんだけど、本人は、


「何故そこで俺が倒すとか言えないんですの、きっと兄様ならそう言いますわ!」


とか言いながら僕を睨んでいるよ。霊獣を倒すには気闘術が必須とバックス殿下が言っていたんだ、僕が倒せる筈無いよね?



 + * + * + * + * 



「ダリヤ殿下、竜器はどうなさるんですか?」


「それ、止めて下さる? あたくしの事はダリヤで宜しくてよ。それに、無理に敬語とか似合いませんわ!」


「はぁ、君って一応次の魔王陛下だよね?」


「今はただの王女ですわ」


 ただの王女って居ないと思うけど?


「僕なんて庶民だよ?」


「貴方はこれからあたくしの戦友になりますの、お分かりかしら?」


「ああ、そうだったね。よろしくダリヤ」


 出来れば”あたくし”とか”ですわ”を止めて欲しいけど、絶対怒られると思うので言わないよ?


「ええ、よろしくヒロキ。竜器でしたわね?」


「ああ、竜器がなければ気闘術が使えないよね? 霊獣には気闘術でしか対抗出来ないんだろ?」


「その通りですわ、ですから今宝物庫に向かっていますのよ?」


 ダリヤが謁見の間を飛び出したから付いてきたんだけど、そのまま霊獣に向かって行きそうだったから聞いてみたんだよ? そこまで無謀じゃなくて良かったね。


 ところで宝物庫と聞くとワクワクするよね? ね…? あれ?


「ダリヤ、ここって武器庫だよね?」


「いいえ、ここにある武器が全部竜器ですのよ?」


「それって、武器庫だよね?」


「違いますわ、竜器は魔人にとって何ものにも代えがたい宝物ですもの」


 うーん、魔人の価値観ってそこまで人間の物と違うのかな? あ、アクシリス王国でも魔晶石という水晶の出来損ないにとんでもない価値があるんだよね? 地方によっては、貨幣替わりにもなるって話も聞いたよ。


「竜器には武器以外の使い方があるんだよね?」


「ええ」


「何に使うの?」


「え゛! そんなの言える訳ないですわ!」


 何だろうこの反応、まさか照れてるのかな? 顔が赤くなるとかなら分かり易いのにね……、ああ、顔色が青くなるんだね? 魔人の血が蒼いってすっかり忘れてたよ。


「何ですの、そんなに見詰めないで!」


 あ、注目し過ぎだったよ。でも今は顔が青くなった気がするね?(うん、僕が名探偵なら犯人で決定だよ!)


「あ、ごめん。それでどれを持って行くんだい?」


「ドラゴン・クローじゃ役不足かも知れない。ここはドラゴン・ファングですわ!」


 クローにファングか、そして竜器という名前からすると……。うーん、宝物と言うほど有り難い物かな?


「竜器って、竜の体の一部なんだよね?」


「そうですわ、ここに所蔵されている竜器は殆どキョウガ様の物ですのよ」


 そう言われると何故かムカつく倉庫だよ! あの時竜王子が何処からか曲刀を取り出した様に見えたけど、文字通り爪を伸ばしただけなんだろうか?


「まあ良いけど、武器ばっかりだね?」


「ええ、竜の男性は基本的に武器の竜器を、女性は防具を作るそうですのよ。向き不向きがあると教えてくださいましたわ」


 あのキョウガが防御に向くとも思えないよね? もしかしたら、ダリヤが身に着けているレザーメイルも竜器なんだろうか?


「ちなみに兄様の斧にはキョウガ様の皮が使われておりますの」


「あ、脱皮するんだ」


「それがどうしたんですの?」


 少し妙に感じるけど、別に普通らしいね。でっかい蜥蜴と思えば、違和感は無いけどね? 竜王子をからかうネタにはならないみたいだ。(竜王子キョウガには弱点が無いのかな?)


「さあ、行きますわよ!」


「頑張れ!」


「貴方も頑張るんですの!」


 いや、霊獣っていうのは人間にとって相性が悪いんだよね? まあ、人間と相性が良いのは精霊だけど、共倒れを目指せばという条件になるね。僕が頑張るのは魔姫殿下が(多分)無茶をするだろうから、怪我なんかをさせない事だよ。魔王陛下と約束した事だからね!



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