第9話 強制帰還
「弘樹、あんたこんな所で何やってるの!」
次に目が覚めると、何故か母さんの顔が目の前にあったよ。あれ? もしかして夢オチと言う奴ですか?
何か体中が痛い気がするけど、こんな所で寝ていれば当然だよね。自分が自分の家の廊下に横になっているのは直ぐに分かったんだけど、妙な夢のせいで少し現実感が無いんだよ。
「貴方ね、高校生になったんだから外泊でとやかく言わないけど、ちゃんと連絡位入れなさいよ」
「へっ、外泊?」
「何、寝惚けているの? 金・土・日と帰って来なかったじゃない!」
「?」
剣道部の練習を終えて帰ってきたのは金曜の18時過ぎだった筈だよね? ほぼ丸3日過ぎてるって? 僕がいくら鈍いといっても、廊下の姿見の前で3日も寝てられる筈も無いよね。今日は学校をサボっちゃった訳だけど、そんな事はどうでも良いかな?
「先沢さんの所とか、中学の時の新藤さんとか連絡してみたけど、知らないって言うし……」
「えーっと?」
「お父さんと相談して、明日にでも捜索願を出そうかって話してたのよ!」
「捜索願って、大袈裟な……」
「でも、まあ、そう言う事をやってたなら、私達に知られたくは無かったのね?」
母さんが、僕を見て染み染みと、妙な事を言ってるよ。僕と言うより僕の格好って、あれ?
「コスプレって言うんだったかしら、そのままの格好で家まで帰ってくる勇気があるんなら堂々としていなさい」
堂々ね、確かに僕はこの格好で堂々と名乗りを上げたんだったね。僕の今の格好は、まるで漫画やアニメに出てくる勇者様みたいな格好だった。具体的に言えば、青を基本にしたシャツとズボンとベストっぽい物、そしてあの国の紋章が大きく染め抜かれたマントという出で立ちだった。
ついでに言えば、要所要所に金糸の刺繍や、宝石をあしらったボタンなんかも金製だよね。そして、手の込んだ事に、所々切り付けられた様な切り口があったりするよ?
金属製の全身鎧というのもあったんだけど、動き易さを重視した結果なんだよね、あ、現実逃避失敗しちゃったな……。
「一応似合っているから問題無いけど?」
「そう言う問題じゃないよ、母さん」
「そう? 昔はドレスとか似合ったのにね?」
「うぐっ、人のトラウマを笑顔で撃ち抜くなんて……、今、何時?」
今更だよね、切り替えて行こう。
「七時ね、そろそろご飯よ。余り物になるけど構わないわね?」
「うん、ありがとう、母さん。父さんにも謝らないといけないね」
こうして、僕の最初の冒険は終わりを告げたんだ。僕にとっては凡そ1カ月、実際には丸3日だけの冒険がね。時間の流れが違う可能性は聞いていたけど、こちらの方が10倍位遅いなんてね……、逆よりはマシだけどさ……。
あ、制服忘れてきたね、鞄とかは吸い込まれなかったから大した物はなかったけど、時計替わりの携帯も鞄の中だったし……。
「僕はこれからどうすれば良いんだろうね……」
そんな独り言が、自然に口からこぼれたよ。本当の意味で落ち着ける場所に戻って来れたというのに、思い出すのはあちらのことばかりだ。特にあの名前も分からない奴の事は忘れようと思っても忘れられないさ!
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ここまでの登場人物
・天原弘樹
公立高校に通う高校1年生
女顔で小学4年位まで、女子と間違えられた。
中学から一念発起して男臭いと思われる剣道をはじめた、意外と有望だが経験で友人には敵わない。
クラスメイトの浅木結歌に片思い中です。
+++ 友人
・先沢英知
主人公の高校入学時からの友人、剣道部の次期主将と目される。
短期間だけ”浅木結歌”のボーイフレンドだった。
現在は委員長:仙道咲耶の恋人
図太い! 無神経!
・浅木結歌
ヒロインです! 存在感皆無ですけど、ヒロインなんです!
今は多く語れませんが、プロローグの彼女はこの娘。
プロローグ以外で喋る最初の言葉が「さよなら」になる予定?
・仙道咲耶
ヒロインの友人(多分唯一の)
成績優秀、容姿端麗、しかも、責任感が強く姉御肌
ストーリーの鍵を握る女の子
+++ アクシリス王国
・モニカ
異世界シングリーフ・アクシリス王国の巫女姫
弘樹を召喚した犯人?
創造主の”声”を聞く巫女であり、勇者を召喚出来るアクシリス王家の血も引く稀有な存在
笑顔が似合う女の子
・トーマ
モニカの教育係の男性、先王の頃には有望な文官だったが代替わりの際に閑職に回された
巨漢だが、意外と怖がり
・ミリア
モニカに行儀作法を教える女官
モニカを実の娘の様に思っている
・リース
王国騎士団の副団長
トーマと同郷
・マーク
騎士団の団員
弘樹の練習相手
+++ ゴールデンバッツ
・ディーン
リーダー格で、大剣と小刀を器用に使いこなす
・ホレス
一番の若手、得意武器は弓と斧
・シェリル
火と風を得意とする魔法使い、ドジっ子特性持ち
・マリカ
水と土を得意とする僧侶、ディーンの奥さん
+++ その他
・バックス
魔王の息子。彼がアクシリス王国まで遠征してきた理由は、とある人物を見返す為です。
この辺りは、3章で詳しく!
・謎の敵
名前はキョウガといいます。その正体は多分想像通りですよ!
詳細は4章でしょうか?
主人公にとっての起爆剤です。間が悪く、ライバルにはなりません。
ここで第1章終了です。
第2章の連載開始は活動報告で告知いたします。
一応、ライデトの章になりますが、話のほとんどは現在の日本での修行の話になります。
宜しければ感想などお送りください。




