第4話 行方不明
それから何日もの間、俺は同じような仕事をこなしていった。
倉庫の整理、荷運び、市場への搬入。
大差の無い仕事であるものの、リュックを使うことで重さによる疲労を限りなく減らしていた。
特に倉庫においては、数回行ったのもあって、あの倉庫番から名前を呼ばれることが増えてきた。
どんなものを入れても、リュックの重さは変わらない。
それが、俺にとってはバフだった。
気がついたら、依頼をこなして宿に戻っているだけの生活が続いていた。
まるで転生前とそっくりだな。
どっちが良かったのかは、分からないが。
いや、リュックが使える分、今の方が良いかもしれない。
「さて、今日はどんな依頼があるのだろうか」
多少は財布にお金が入っているが、油断は出来ない。
すぐにお金を使い切る可能性だってあるからだ。
何があるか分からないからな。
依頼内容は、これまで受けてきたもの変わらないものばかり。それでもこなせてきているから、問題は無い。
ちょうど良いのを探していくだけ。
「騒がしいな」
見ていくうちに、ギルド内がざわめいていた。
何があったんだろうか。
「あの新人、戻ってないらしいぞ」
焦っている様子でもなく、雑談程度に。
「新人?」
誰なんだろうな。
戻っていないって、そういう事があるのか?
さらに他の人の噂話は、その新人の事で持ちきりだった。
「ダンジョンに入ったって話だが」
「初層で引き返したはずだ」
「でも剣が折れたって話だぜ」
別方向から別の噂。
断片的でどれも内容が違っている。方向は合っているが、細かいところで違っているって感じの。
俺は噂を聞いていくだけ。
誰なのかは確認しなかった。
「剣聖の、セーシェンだろ?」
受付近くで言われた名前。
「ああ、あの時の」
ここで俺は情報を一致させる。
あの話しかけてきた、剣聖か。
スキルは大当たりだったはずなのに、行方不明だなんて。
どういう事なんだ。
「装備が想定よりも弱かったらしい」
「思っていたよりも魔物が多かったって」
「撤退判断が遅れたらしい」
さらに行方不明になった原因、どんどん出てくる。
ただ、どれも噂に過ぎないし方向が違っている。
統合させる事は出来るだろうが、それが正しいのか分からない。
「あれ、外されているな」
一人が掲示板の方向を見る。
「剣聖が受けたダンジョンの依頼か」
「やはりな」
どうやら行方不明者が出ると、外されるみたいだな。
「……戻っていませんので」
受付も小声でそう言っていた。
「まあ、しばらくしたら出るだろうよ」
そうなんだな。
また依頼が出るなんて、容赦がないな。
新しく出すことで、この依頼に関して行方不明者は出ていないって言っているのだろうか。
「でも、そういう世界か」
まだ仮登録で、倉庫などの仕事をしている俺にとっては遠く感じてしまう。
ギルドは行方不明の人物が出ても、普通に依頼を受けていた。
「これを受けたいのですが」
「分かりました」
受付も淡々と受けている。
俺は倉庫の依頼をこなすことにした。
「剣聖でも、駄目な時はあるんだな」
「当たりスキルでも、準備次第だろ」
ギルドを出るタイミング、そんな声がした。
準備、か。
俺は自分のリュックに触れてみた。
質感は前と変わらない。重さだけが無くなっている。
このおかげで、仕事が多少順調にいっている。
だからこそ、外れかもしれないけれど、スキルは役立っている。
俺は今日も、荷物を運ぶだけだ。




