第3話 軽い仕事
「本当、昼過ぎの仕事があって良かった」
俺はギルドが指定した倉庫へやってきた。
ギルドが指定したのは、昼過ぎから夕方までの作業だった。
メチャクチャ早いが仕方ない。
それにしても、大丈夫なのだろうか。
とはいえ仕事をしないと、野宿することになるから、なんとしてもこなさないと。
倉庫には同じように、仮登録であろう人達が集まっていた。
「さて集まったな。これから作業を行っていく」
倉庫番は無愛想だった。
俺達を見る目も、そんなに良い感じじゃない。
「今日は量が多い。無理だと思ったら言え」
そう言われ、俺達は言われるままに仕事をしていく事に。
倉庫Aから倉庫Bへと、荷物を持っていく。
穀物の袋や木箱、資材など。それらが山のように置かれている。
「うわぁ……」
これは多すぎるって。
片付けられないだろ。
「普通なら、きついな」
それでも一個ずつ持っていこうとするものの、どれもが重すぎる。
数人で一個を運ぶのが精一杯。
荷車も数が足りていない。
体力が消耗されて、こまめに休憩しないと持たないくらい。
「出来るのか……?」
俺は一人で持てるギリギリのものを、リュックに詰めていく。
誰にも見られないように。
こんなのおかしすぎるから。
明らかに入らないだろうと思えるような感じだが、袋がリュックの口に入った途端に、そのまま消えるように入ってしまった。
俺はもう一袋入れていく。
「持っていけるよな?」
普通だったら背負えないはずだが、何も入れていないかのように軽かった。
そのまま倉庫Bまで歩いていく。
「置くのは仕方ないよな」
倉庫Bまで来たら、人目に付かないように取り出して置いていく。
やはりであるが、リュックから出た途端に重さを取りもどす。
この部分だけはどうしようもない。
だが、負担は何倍も軽くなっている。
「よし、このまま行こう」
俺は怪しまれないように、数を増やしながらもこっそりと、木箱をリュックに入れていく。
入れるまでは本当に重いな。
でも入れてしまえば、取り出すまでは問題ない。リュックを横倒しにし、押し込むだけで良かった。
そして、そのまま歩けばいい。
「あれ? もう戻ったのか」
こんな調子で往復していると、他の作業者が呟いていた。
一人で動いていたから、そうなるよな。
リュックを背負いながら手ぶらで動いているし。
それでも疲れているようだったから、気にしていないようだった。
「うわっ」
「何でだよ!?」
「今日はここまでだと思ったのだが」
少なくなっていたはずの倉庫Aに追加の荷物が来ていた。
倉庫番は呆れながら呟いているから、想定外だったみたいだな。
どうしてこんなに。
他の作業者は嫌な顔をしながら、運んでいく。
「何とかなるか」
俺はさらにリュックに荷物を入れていく。
見られないようにしながら。いくつも入れたって、重さは発生しない。
だからこそ、追加分が出ても問題なかった。
「……助かったな。しかも通常よりも早い」
倉庫番は一瞬だけ俺を見てから、そう言った。
何往復もしていくうち、倉庫Aにあった荷物は全部、倉庫Bに行ってしまった。
倉庫番の言葉からすると、早めに終わっているみたいだ。
他の作業者はへとへとだが、俺はまだ余裕があった。
ペットボトルのお茶を余り飲んでいないし。
「さて、報酬だ」
俺は倉庫番から、お金を受け取る。
銀貨1枚と銅貨数枚。
依頼には銀貨1枚って書かれていたが。
「銅貨は追加分だ」
倉庫番は淡々としながらも、俺に言った。
「ありがとうございます」
「また来られるか?」
倉庫を出る直前、彼はそう俺に話した。
「予定が合えば」
そう答えながら倉庫を後にした。
空は橙色に染まっていて藍色とのグラデーションを見せていた、星が多少見えている。
「よしっ」
リュックを背負い直した。
軽さはさっきと同じ。
「やっぱり、重さは関係ない、か」
何を入れたとしても、重さが発生しない。
これがこの仕事にとっては、最高のバフとなっていた。
「さて、宿屋へ行くか」
お金を手に入れたから、野宿をしなくてもいい。
とりあえず安宿へ行って、休むことにした。
あの銀貨でおつりが出るような感じのだが。
「ふぅ……」
ベッドで横になりながら今日を振り返る。
シーツは安そうだが、それでも十分だった。
異世界に転生して、初めての仕事。
それをリュックのおかげでこなせた。
お金も貰えたし。
「にしてもこれ、どうなっているんだ?」
デパートで売っていただけのものなのに。
無限に荷物が入るなんて。それでいて、重さを感じることはないなんて。
財布も定期券もちゃんとくっついている。
俺が転生する前にあったものは、残っている。
だからはっきりと、俺が使用していたものだ。
「これだけか、元の世界が分かるのは」
リュックの中に入っていたもの。
それだけが俺を元の世界と結びつけていた。
俺は飲みかけのペットボトルのお茶を飲み干す。
やがて、疲れが多少発生しているからか、眠気が一気に出てきた。
「あの仕事、向いているのかもしれないな」
そう呟きながら、俺は眠りについたのだった。




