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ep3:正式に勇者、正式に聖騎士

「目的が魔王を倒す、か。すぐに信じるわけにはいかないが、この際もういい。実際に手助けは受けてしまっているわけだしな。そこまで礼儀知らずではない。」


ティアの大きな傷に治癒魔法をかけてから、塗り薬と包帯を巻いていく。俺とイヴェンの契約内容については治療を行いながら伝えている。


「最後にもう一度確認するが、オクタル、君の魂などは契約に縛られていないのだな?」


「ああ、契約は魔力の供給、魔術の構築の補助、指南、ある程度の情報の提供に対して、魔王を倒す、の一点だった。俺に危害を加えないこと、俺が指定した人間に危害を加えないことを条件につけてもそこは変わらなかったよ。」


そうか、とティアはつぶやきながら安心したように顔を少し緩ませ、体の状態を確認し始めた。


「よし、なら最低限は問題ないな。あいつに、な、なにかされるようなら私が守ってやるからにゃ!」


立ち上がりながらそんなことをいうティアは、普段の佇まいと異なり、少しだけ可愛らしかった。


「はは、頼りにしてるよ。」


「おや、心外ですね。私が守って差し上げましょうか?逆に。いえ、お代はいりませんよ。そもそもこの女では私に勝てません。オクタル、この女に頼るくらいなら私を頼ってください。」


ティアとイヴェンのにらみ合いが始まる。

ティアが一方的にイヴェンをにらみ、イヴェンはニヤニヤと見下しているだけだが。

間に俺が挟まっているのですごくいたたまれない。


「イヴェンに頼るかどうかは今後の行動次第だけどな、とりあえず周りに魔人だということを簡単にばらすのはやめてくれないか?」


「はは!大丈夫ですよ。私だって正体を明かす人間くらいは見極めています。この女にはいつか話すことになっていたので、今話しました。それだけです。」


それならいいんだけどな。


ティアと目線を交わし、頷く。


「オクタル、イヴェン、休憩は終わりだ。教会へ今あったことを報告しよう。イヴェン、教会をあまり刺激するなよ。」


ジロリとイヴェンをにらみ、牽制するティア。

目線の先の人物は肩を竦めるだけで何かを言うことはなかった。



教会までは何事もなく向かうことができた。

ちなみにイヴェンはいつの間にかいなくなっていた。


道中、こちらに走ってくる聖騎士隊と遭遇し、フロンタイン邸周辺の住人から報告があり、現場に向かっていることを知った。

都合が良かったので現場であったことを説明し、一緒に教会へ同行してくれることとなった。


教会へついてからは聖騎士が上層へ報告をしてくれるようで、その間待合室で過ごしていた。

待合室で休んでいた数十分後、入口の扉が開く。


待合室に入室してきた人物は、俺に以前謝罪をしてくれた教会の幹部・・・名前はアックスロットとか言ったか。


「お久しぶりです、オクタル様。この度は街を救っていただいたこと、誠にありがとうございました。また、このような危機に合わせてしまったこと、謝罪させていただきたく存じます。」


お礼と謝罪、そのどちらも心のこもったものだった。

勝手に召喚されて、かつ危険な目にあっているのはそのとおりなのだが、その後の対応に誠意を感じるし、俺自身この人を嫌いになれない。

そのためどちらも受け入れ、話を続けるように促す。


「ありがとうございます。教会側のスタンスとしてはふたつございます。二度とこのようなことがないよう、教会でオクタル様を保護させていただくもの。それから今まで通り干渉はせずに、半年後の送還を急ぐこと。このふたつを考えております。」


「勇者として召喚されたわけだけど、俺はなにかしなくていいのか?魔物の討伐ができることは今回の戦いでわかったことだが・・・。」


「教会側としては魅力的な案ではございますが、そこまでのわがままはお願いできません。無理にお願いしてオクタル様の身に何かあったら・・・、そう考えると到底お願いはできません。」


よく創作で出てくる悪い教会、というものが一切感じられずに逆に疑ってしまうが、今までの対応から信じることとした。


「そこまでいうならしかたないか・・・。じゃあ後者の今まで通りで頼むよ。それで俺が勝手に動く分には問題ないだろう?」


教会としては申し訳無さからガチガチに保護か、過度な干渉はしないの二択を提示してくれている。

もしかしたら俺が危険な目にあう行為すら危惧されるかもしれないが、干渉をしない選択であればそれも問題ないだろう。


「承知いたしました。でも良いのですか?」


それでも心配してくれているのか、再度確認をしてくれるアックスロット。


「個人的にそういう約束をしててさ、気にしないでくれ。」


「であればくれぐれもお気をつけください。お気づきかもしれませんが、我々がオクタル様を召喚した理由が近年暴れておりますゆえ。魔物や魔人までの活動が活発になっております。」


先にイヴェンから聞いていた通り、やはり教会は魔物、魔人対策に異世界召喚を行っていたようだ。

異世界の人間は肉体的にも精神的にも強い者が選ばれやすく、この世界では救世主、勇者となれると言われているらしい。

聖王国の隣国である帝国の人類最強が、以前魔人と共倒れになり、この世界の住人だけではもう対処がしきれ無いと判断されたわけだ。世界を救う英雄が必要だったのだ。


「じゃあ最後に一つ、わがままを聞いてくれないか?」


「なんでしょうか。我々にできることであれば何でも。」


この教会に来た理由は、報告のこともあるが他にあった。

この要求が通るか通らないかで、今後の過ごし方がかなり変わってくる。


「個人的な約束に関係することなんだけど、各国を回って魔人を討伐していくつもりなんだよ。そこで聖王国の後ろ盾がほしい。」


干渉はするな、でも後ろ盾はくれ。あまりにも横暴だと思う。

干渉はするなは、あくまでマグノリア教のスタンスであり、干渉をする場合は安全のため外に出したくない。

そこを捻じ曲げてまで後ろ盾がほしいのは、各国に赴いたときの自分の立場の証明となる。


「魔人討伐は我々の目標です。断る理由は薄いのですが・・・。条件が一つだけ。半端な後ろ盾ではなく、勇者として送り出させてください。」


なるほど、律儀にも俺の安全を第一に考えてくれているらしい。

聖王国が出す勇者としての承認は絶大な力を持つ。あらゆる国の仲介を担う国であり、調和と平穏を軸にしているシルヴィアはその分他国への影響力も強い。

聖王国の使者くらいの権利をもらえたらと思ったが、先方は想像以上に俺の身を案じている。

これもこの宗教の特色なのだろうか・・・。


「いいのか?一度はお互いに断ったようなものだ。どうしてそこまでしてくれるんだ?」


「異世界召喚にかかる魔術師が十名も亡くなりました。こちらの勝手な都合で、召喚してしまい、元の世界に還すこともできない。忸怩たる思いです。それに暗殺を行ったのもおそらくですが魔人でしょう。すべてをお許しくださり、それらを討伐に向かう者を勇者とせずに何としましょう。ここで最大の敬意を示すことができなければマグノリア教徒失格です。」


こちらを決意のこもった目で見ながら続ける。


「あなたに勇者の証を。聖王国の上部には必ず了承させます。我々にできることはこれくらいですが、なにとぞお気をつけください。」


深く礼をするアックスロットに俺も礼を返す。

彼はティアに向き直り


「そしてティア・フロンタイン。貴女は聖騎士の推薦をうけていましたね。」


「はい。未だ修行の身ですが、現聖騎士団長のコルニ様より推薦を頂いております。」


「よろしい。今回の実績を加味し、先ほど貴女を聖騎士とすることが決定しました。」


その言葉を聞き、ティアの体に力が入る。

彼女としては長年の夢だったからだ。

推薦をもらっていたので聖騎士になることはほぼ決定していたも同義だったが正式に認められたのだ、やはり嬉しいのだろう。


「ひいては、貴女に最初の任務を授けます。オクタル様の旅に同行し、命をかけて彼を守りなさい。」


「は?えっ、ちょっとアックスロット、どういうことなんだ?」


あまりに急な出来事だったため、取り乱してしまう。

急すぎるし彼女の意思はどうなんだ。


「承知いたしました。教会に捧げる身、ご命令とあらば。」


「え、いいのか?やっと聖騎士になれたのにこんな左遷みたいな命令。」


あまりにもニコニコで命令を受けているので強くは言えない。


「良いのです。教会の命令は道徳に反しない限りは絶対なのですから。」


け、敬語・・・。

俺が勇者の立場になったからか?

やめてほしい。なんなら鳥肌が立つ。

仲の良かった友達が急に他人行儀になるあれだ。


「わかったよ・・・。ただ敬語はやめてくれ。」


「む、そうか。護衛対象かつ勇者様だからな。流石に敬語を使うべきかと思ったが。君が言うならいつも通りにさせてもらおう。」


敬語をやめてもらい、話を元に戻す。


「で、本当にいいのか?魔人と戦う以上危険もあるし、それ以上にこの国を離れることになる。」


「そこは問題ない。実のところ、君が旅に出るということを知ってから、そのたびについていこうと思っていた。魔人討伐の実績もあれば聖騎士にはなれるかもしれないという打算もある。」


それから、前置きをしながら続きを話し始める。


「また、独りになるのは、少しつらいのだ。家には祖母がいるが祖母の話は難しすぎてな、いつも気を遣わせてしまっている。任務という形で、聖騎士にもなれて、君のそばにいられるならこんなにうれしいことはないよ。」


ほほえみながらそんな事を言うティアに、少しだけドギマギした。

彼女がそこまで言ってくれるならありがたい。

半年の付き合いではあるが、お互いに他に知り合いがいなかった身だ、時間など些細な問題だよな。


「オクタル様、私からもお願いいたします。聖騎士をつけ、勇者としての立場を確立することで、各国も雑に扱うことなどできないでしょう。きっと貴方の旅の助けになるはずです。」


新任の聖騎士をつけることは本当であればしないが、今回の例は特殊事例だ。教会側の恣意が介入しづらい、新任騎士はちょうど良いらしい。


「各国への効力を持つ身分証明兼通行許可証を発行いたします。しばらくお時間をいただきますが、二日後にはお渡しできるかと。今しばらくお待ち下さい。そしてフロンタイン、聖騎士の任命の儀をその時までに行います。後ほど使者を送りますので、準備をして待っていてください。」


アックスロットが側に立っていた修道女にこれからの予定を伝え、会談を締めくくった。

いろんなことが矢継ぎ早に決定していった会談だった。

精神的に疲れていたのだろう、凝っていることに気づいた肩を回しながら帰る準備をする。


「ティア、これから世話になる。戦闘面はまだまだだから頼りにしてるからな。」


「ああ、任せてくれ。勇者直属の聖騎士として、その、ゆ、友人として!君とともにあろう!」


美人の満面の笑顔が見れたんだ。いい選択だったとしようじゃないか。

物語を書くって大変ですね…。

第3話、お読みいただきありがとうございます。


オクタルは元の世界では専門学生でした。

年齢は…まだ考えてます。(ガバガバのプロット)

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