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神曲リノベーション・地獄篇  作者: Dante_Alighieri
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第十六歌

 すでにダンテは、蜜蜂の巣から聞こえる羽音のように、水が次の圏に落ちては響く場所にいた。

 そのとき、三つの魂が、進む一群から離れ、劫罰の雨の中を駆けてきた。

 ダンテたちに向かってくると、揃って声を張り上げる。

「待ってくれないか。その服装からして、あなたは邪悪な都市フィレンツェの出身ではありませんか」

 彼らの全身には、炎に焼かれ肉が剥き出しになった新しい傷や、古い火傷の跡が見える。

 思い出すだけでも、心は痛む。


 ウェルギリウスは、彼らの叫び声に耳を傾ける。

 そして、ダンテの方に顔を向けて言った。

「待ちなさい。あの方たちには、礼を尽くし接するべきです。炎が射られるこの場所でなければ、あの方たちよりも先に、あなたが出迎えるのが相応しいのです」

 ダンテたちが立ち止まると、彼らは昔からの嘆き悲しみを歌い始め、追いつくと、三人で一つの輪となった。

 油を塗った裸の格闘技選手が殴り合って傷つく前に、有利に組み合おうと隙を狙うように、回りながらダンテを見ている。彼らの首は、進む足とは逆方向に動き続けていた。

 一人が話し始める。

「軟弱な土地の悲惨さと、黒く焼け爛れた姿のせいで、私たちと私たちの頼みも侮辱にさらされているとしても、私たちの名を聞けば、あなたも心を変えて、生きた足で平気で地獄を歩いていくあなたが何者か教える気になるでしょう。見ての通り、私が足跡を踏んでついていくこの方は、今は裸で皮膚も髪も焼け落ちていますが、あなたの思いも寄らないほど身分の高い方でした。誉れ高いグアルドラーダ婦人の孫であるグイード・グエッラは、その生涯において深い知恵と剣によって、数々の大事を成し遂げました。また、私の後ろから砂を踏みしめ続く方は、その声が現世で賞賛を持って受け入れられるべきであったテッギアーヨ・アルドブランディです。彼らとともに十字架に架けられた私は、残虐な妻によって傷だらけになったヤーコポ・ルスティクッチでした」

 もし、炎の雨が降りかかっていなければ、ダンテは、堤の下にいる彼らの許に身を投じていただろう。博学なウェルギリウスも、それを許したに違いない。

 しかし、彼らを抱いて祝福したいというダンテの思いは、焼け焦げてしまう恐怖には勝てなかった。


 今度は、ダンテが話し始めた。

「あなた方の様子を目にして、私に侮辱する気持ちはありません。いつまでも消えることのない悲しみがあるだけです。私の師が告げられた言葉から、あなた方のような立派な人々がいらっしゃると察していました。私も同郷の者です。常々、あなた方の功績と名誉ある名を感謝を持って語り、聴いていました。私は苦々しい場所を離れ、真の導き手が約束してくださった甘美な果実を目指しています。しかし、その前に世界の中心である地獄の底に降りていかなければなりません」

 先ほどの一人が、再び答える。

「末永く、魂があなたの身体を司るように。あなたの名声が、あなたの亡き後も輝き続けるように。教えてほしい、私たちの都フィレンツェには、かつてと同じように礼節と高潔は宿っているのでしょうか。それとも、完全に消え去ってしまったのでしょうか。というのも、向こうで仲間と歩く、辛苦を共にし日も浅いグリエルモ・ボルスィエーレの言葉に、私たちは悩まされているのです」

「新参者と突然の儲け話が、フィオレンツァの中に傲慢さと無節操さを生み、そのために涙を流しています」

 ダンテは、顔を上げて叫んだ。


 この言葉を答えとした三人は、真実を知った者のようにお互いの顔を見合わせ言った。

「これからも、あなたが迷うことなく自分の心のまま、質問に答えられるよう祈りましょう。だから、あなたがこの常世の地を脱け出し、地上に戻り美しい星々を再び仰ぎ見て『私は地獄に行った』と喜んで話せるようになったときに、私たちのことを地上の人々に語ってもらいたい」

 三人は、そう言うと輪を解き、足に羽が生えたかのように素早く走り去っていった。

「アーメン」の一言も唱える間もなく、三人は姿を消した。


 ウェルギリウスは、ここを離れる頃合いだと捉えたようである。

 ダンテは、後についていく。

 進んでまもなく滝の音が聞こえ、お互いの話し声も聞こえないほどにダンテたちは近づいた。

 アペニン山脈の左裾のヴェーゾ山から東に向かう独立した初めての川は、谷を下り平地に流れ込むまで、上流ではアックワケータと呼ばれ、下流ではフォルリーと呼ばれ、そして消えていく。それは、聖ベネディクト・デ・ラルペ修道院の上あたりで、千条に分かれてもよいところを、一条の滝となって落ちるため、轟音を立てている。

 それと同じように、血の色に染まった水は、切り立つ崖を流れ落ち、耳を傷めてしまうほどの轟音を発していた。


 ダンテは、腰に縄帯を巻き、それを使って班目の雌豹を捕えようと考えたことがある。今、ダンテは、ウェルギリウスが命じるがままに縄帯を解き、丸く巻き束ねて手渡した。

 すると、ウェルギリウスは右側を向き、崖からいくらか離れた場所から深い谷底めがけて投げ入れた。

「ウェルギリウスが、熱心に目で追うこの不思議な合図に、きっと何かが起こるに違いない」ダンテは、心の中でそう呟いた。

 行動だけではなく、思考をも見抜く力を持つ人の傍にいるときは、用心しなければならない。

 ウェルギリウスは、ダンテに言った。

「私が待ち、あなたが考えているものが、じきに浮かび上がり、目の前に現れるはずです」


 偽りの顔を持つ真実に対しては、人はいつも、できる限り口を閉ざしておいた方がよい。口にすれば、いわれない恥をかいてしまうから。

 しかし、ダンテは黙っていられなかった。

 この喜劇の詩曲にかけて、この詩曲が末永く愛されることを願いつつ、あなたに誓う。

 ダンテは、見たのです。濃い闇の中を浮かび上がってくる、どんな強い心を持つ者でも驚きを隠せない、その姿を。

 まるでそれは、海底の岩礁に引っ掛かった錨を解くために、海中に潜った水夫が上半身を伸ばし足を縮めて浮き上がるように、泳いでやってきた。

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