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第四章 禁断の夜

それからしばらくの間、ジロデによるマリテーヌの身体の診察が行われていた。ある日は両腕、そしてある日は両足と診察が7日間続いた。


「マリテーヌ様、私の診察は本日で最後となります」


「ジロデ、今までご苦労様でした」


「私にはもったいないお言葉。 誠にありがとうございます」


ジロデは胸に手を当てながら膝を折った。ふと部屋の周りを見渡すと、あのキメラの姿がないことに気が付いた。


「マリテーヌ様、今日はキメラ様がいらっしゃいませんが?」


「キメラは私の使いに出していますので、最終日はそなたと2人きりですよ」


その言葉を聞いたジロデは急に胸の鼓動が高鳴り、まるで夕陽のように顔が赤く染まっていった。

マリテーヌはジロデのその表情に気がつき、冷ややかな目をして微笑みながら、


「フフフ。 ジロデは真夜中になると、いつも中庭にある月の時計台に行っていますね?」


「え?」


「私は前からそなたたちのことを、宮殿の遠い窓から見ていたのですよ」


そしてマリテーヌは長い爪をした白い手で、ジロデの頬を優しく触りながら、


「あの踊り子といつも2人で・・・フフフ」


それを聞いたジロデの顔はさらに赤くなり、慌てて女王の間から出ようした。

しかし、すかさずマリテーヌはその場から逃げるジロデの腕を掴みながら、


「ジロデ、今宵私とあの月の時計台で会いましょう」


「し、失礼いたします」


ジロデは膝を折って挨拶をすると、駆け足で女王の間から出て行った。


ジロデは慌てて自分の部屋に戻り、震えながら扉の鍵を閉める。身体からにじみ出た汗は首元を濡らし、激しく息を荒くしていた。そして鏡に映る自分の姿に向かって手を伸ばしながら呟いた。


「マリテーヌ様は、私に何を話されたの?」


次第に呼吸が整うと、ジロデはベッドの上に座り胸に手を当てながら気持ちを整理しようとしていた。



ジロデが出て行った女王の間では、マリテーヌが窓の外を見ながら静かに呟いていた。


「ジロデ、あなたはきっと時計台に来ますよ」


すると宮殿の窓から優しい風が吹き込み、柔らかいレースのカーテンがマリテーヌの身体を包みこんでいった。



その夜、宮殿の中庭にある月の時計台の下でいつまでも抱き合う女王マリテーヌと侍女ジロデがいた。


「ジロデ、そなたは若くて美しい」


「マリテーヌ様! 私の愛しのマリテーヌ様!」


「ジロデ。 このことは、わかっていますね」


「もちろんでございます。 私はあなた様とこのようになることをずっと前から夢見てきました」


「あぁ、ジロデ」


ガラスのように光る時計台には、抱き合う2人の姿がいつまでも映っていた。そしてシュプーラの夜空には満天の星が光り輝き、愛し合う2人の頭上には多くの流れ星が降り注いでいた。



マリテーヌの使いから宮殿に帰ってきたキメラは、女王の間の重い扉を不安そうにゆっくりと開ける。しかしその部屋のベッドには、キメラが愛するマリテーヌの姿はなかった。


「マリテーヌ様、まさか・・・」


眉をひそめたキメラは黒い仮面をそっと顔にあて、静かに女王の間から出て行った。

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