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第7話 レティアのクリスマス①

 時間は少し遡る。


『えへへ。完璧~。』


 自室の姿見の前で一回転。

 ふわりっ。と、短めのスカートが靡いた。その拍子に下着が僅かに見える。

 先端に白のもふもふが付いた赤い帽子。

 ちょっと露出が多いけど、可愛い装飾の付いた赤い服。袖の先や、裾の先に白のもふもふ。

 短いスカートも赤と白。手袋も靴下も赤と白で統一。

 ベルトだけアクセントの為に黒にしたのは正解かも。

 フリルから除く長くて細い足は白のストッキングで明るい雰囲気を演出。


 はぁ~。やばっ!。我ながら凄い出来映えね!。

 

『ちょっとセクシー過ぎたかも。レティアの姿だとエッチな感じが強調されちゃうなぁ。』


 胸が大きいから谷間が強調されて、服が引っ張られてお腹とおへそが丸見えだし、お尻も肉付きが良いせいで動いたらスカートが持ち上がっちゃう。

 まぁ、家族にしか見せないから良いけどね。


『それにしても、破壊力が強過ぎるよ。』


 改めて確認するレティアのお姿…恐るべし。

 流石大人気ヒロインだよね。

 何を着ても似合ってしまう。


 もう一回、一回転。


『ふふ。どっからどう見てもミニスカサンタさんだね!。』


 そう。私は今、自分で製作したサンタクロースの格好をしている。

 転生した、このゲームの世界は、転生前と同じで一年は365日ある。一日の長さも同じだ。

 そして、暦では、今日は12月24日の夜!。

 そうなの!。今日はクリスマスイブ!。

 サンタさんが皆にプレゼントを配る日なのです!。

 けど、残念ながらこの世界にはクリスマスなんて概念は存在しない。

 今日も普通の一日が過ぎてしまった。

 だけど、私にはそんなこと関係ない!。

 日頃の皆に対する感謝の気持ちがあれば、例え、この世界にはない行事だとしても達成する意味があるのです!。


 つまり、【勝手にクリスマスプレゼントを用意して勝手に皆にプレゼントしちゃうぞ作戦!。】なのです!。


 来年の春には学園に通うようになる。

 寮生活である以上、そう簡単には帰ってこれない。

 学園への入学前に実家で過ごせる最後のクリスマスなのだ。

 出来れば目一杯皆に感謝を伝えたい。

 そんな思いからの行動だった。


『よいしょっ!。』


 用意した大きな白い包みを持ち上げる。

 私がこの日の為に用意した皆へのプレゼント。

 けど、突然枕元にプレゼントを置いたら皆驚いちゃうから、今から皆の寝室に行って直接渡しちゃうよ!。

 この時間なら皆まだギリギリだけど起きているだろうしね。

 えへへ。皆の喜ぶ顔が楽しみだなぁ~。


 さぁ。行くよ。レティアサンタさん!。出撃!。

 

『最初は~。お隣~。』


 コンコン。


『はい。』

『メルティ~。私だよ~。』

『っ!?。レティア様!?。少々お待ち下さい!。』


 ガラガラ。ゴトンッ!。ズジャー!?。ゴロゴロ。ガンガンガンガン。ドドドドド…。バチコーーーン!。


 しーーーーーーーーーーーーーーーん。


『………いったい。中で何が?。』

『はぁ…はぁ…はぁ…。お、お待たせ…致しました。』


 息を荒げたメルティがドアを開けてくれた。


『こんばんは。メルティ。さっきぶり。』

『っ!?。レティア様!?。その愛らしいお姿は!?。』

『えへへ。どう?。可愛いでしょ?。サンタさんコス…って、分からないか。この時期に現れる妖精さん?の格好だよぉ!。』


 メルティの前で一回転。

 ふわりとスカートが持ち上がる。


『っ!?。はぁ…はぁ…はぁ…。レティア…そのお姿は犯罪です。はぁ…はぁ…。今すぐにでも私と共に寝ましょう!。』

『何で!?。まだ寝るにはちょっと早いし、この服がシワシワになっちゃうよ!?。』

『くっ…はぁ…隅々まで堪能したい…。』


 さっきとは別の方向で息を荒げるメルティ。

 視線が嫌らしいよぉ…。まぁ、メルティになら全然見せちゃうけどね。

 もう一回、くるんっ。と一回転。


『ぐはっ!?。』

『メルティ!?。』


 吐血…じゃない。鼻血を出して倒れるメルティ。


『レティア様…犯罪です…。カクッ…。』

『メルティ~~~~~~~~~~!?。』


 クリスマスなのにメルティが死んじゃった。


『駄目だよ。まだ死んじゃ!。プレゼント渡してないんだから!。はい!。これ私からメルティへのプレゼントだよ!。』


 プレゼントとして有りがちな赤い箱に黄色のリボン。それを大きな手編みの靴下に入れて渡す。


『レティア様が私に?。プレゼント?。えっと…?。どうしてプレゼントを?。何かの記念日でしたか?。申し訳ありません!。気付きませんで…あの、私は何も用意してなくて…。ごめんなさい…レティア様…。』

『もうっ!。違うよ!。私が勝手に決めてやったことだよ。これは日頃の感謝を込めた私からの想い。だから、メルティはただ受け取ってくれるだけで良いの!。』

『そうなのですか?。………。はい。ありがとうございます。』


 私とプレゼントを交互に眺め納得したように笑うメルティ。

 か、可愛い…年頃になってますますヒロイン力が高まったわね!。


『あの…開けてみても良いでしょうか?。』

『勿論だよ!。開けてみて。』

『はい。』


 恐る恐るといった感じでプレゼントの包装を外していくメルティ。

 メルティへのプレゼント…気に入ってくれると良いけど…。

 ドキドキしながらメルティの様子を窺っていると。


『うわぁ…これ…可愛いですね…。』

『えへへ。でしょう?。私とメルティの人形付きオルゴールだよ。職人さんと協力して作ったんだぁ~。』


 メルティへのプレゼントは私とメルティが手を繋いで笑っている小さな人形を中心に雪の積もった街並みを表現したオルゴール。

 土台を回転させると音がなる仕組み。

 オルゴールの曲はジングル・ベル。

 この世界にその曲は無かったから職人の前で何回も口ずさんで完成させたのです!。


『綺麗な…音…本当にこんなに素晴らしいものを頂いても良いのでしょうか?。』

『勿論だよ!。メルティの為に作ったんだからね!。大切にして欲しいなぁ。』

『レティア様…ぅ…うあああああん!。』

『ちょっ!?。どうして泣くの!?。』

『ごめんなさい。けど、嬉しくて、レティア様!。どこまでもお慕いしていますぅ~。うあああああぁぁぁぁぁん!。』


 泣きながらもオルゴールを両手で抱き締めているメルティを見て嬉しくなっちゃう。

 

『メルティ。これかも宜しくね。』

『はい!。レティア様!。うあああああぁぁぁぁぁん!。』


 メルティを抱きながら頭を撫でた。

 メルティを見てると妹みたいな感じかな。

 何か全部が可愛いや。


~~~~~


 次は~。次は~。ファルナのお部屋~。

 良かったぁ~。まだ灯りがついてるよ。


 コンコン。

 しーーーーーん。

 コンコン。

 しーーーーーん。


『あれ?。』


 コンコン。

 しーーーーーん。

 コンコン。

 しーーーーーん。


 反応無し。

 何かデジャブだ。

 けど、これも想定通り。


『お邪魔しま~す。』


 ファルナの部屋はいつも通り鍵が掛かってない。

 床に落ちて散乱しているファイルやら書類やらを掻い潜り目的地のソファーに到着。

 何か…ソファーの上がもっこりしてる…。

 そうだよね。もう冬だし、流石のファルナでも下着姿でうたた寝はしないよね。風邪引いちゃうし。

 けど、わざわざソファーの上に毛布だけ持ってくるなんて。


『ファルナ~。起きて~。ちゃんとベッドで寝ないと駄目だよ~。』


 何度か揺すってみる。

 反応無し。…と、思った瞬間。


『がおっ!。』

『きゃわ!?。』


 毛布が勢い良く捲れ、中にいたファルナに一瞬で毛布の中に引きずり込まれた。

 毛布の中はファルナの甘い匂いでいっぱいだ。

 そして私は下着姿のファルナに抱き枕にされてしまった。

 って、結局、下着だけじゃん!。

 色んな柔らかい部分が当たってるしぃ~。


『ふふふ。油断したわね~。レティア様~。食べちゃいました。』

『うっ…また、お酒飲んだの?。飲み過ぎは駄目だよ。身体に悪いよ。』

『は~い。んん~。それよりぃ~、レティア様は本当に大きくなられましたね。柔らかくて、良い匂い。』

『それはファルナだよ。』

『ふふ。私もですけどぉ。ほら、おっぱいもお尻もぷにぷにで~。もちもち~。』

『きゃうっ。ファルナぁ~。くすぐったいよ。』

『腰も細いし~。手も足も長くて~。お顔なんかお人形みたいに綺麗で~。可愛いし~。髪もサラサラでキラキラ~。』


 そりゃあ。大人気ヒロインのレティアだからね。

 完璧な容姿だよ。


『ところで、随分と可愛らしい服装ですね。それにレティア様にしては少し大胆な。スカート丈もこんなに短い。』

『今言うのそれ?。』

『ふふ。堪能しました。』


 何故か艶々な表情を浮かべるファルナ。

 私は乱れたサンタコスを直していく。


『あら。改めて見ると本当に可愛いですね。えっと…何の衣装ですか?。』

『ふふふ。よくぞ聞いてくれました。』


 ファルナの前で一回転。


『わ~お。』

『これはね。一年に一回。この時期に現れてプレゼントを配る妖精さんの衣装なんだよ!。』

『あら~。随分とエッチな妖精さんがいるのですね。下着もおへそも丸見えで。』

『本来なら白ひげのお爺さんだからエッチじゃないよ。服装もズボンだし。これは私用なの!。』

『あらら。そうでしたか。ふふ。殿方が見たら鼻血を出して倒れてしまいますね。』

『さっきメルティも倒れちゃったよ。』

『あらあら。性別は関係無いのねぇ~。』

『えへへ。頑張って作ったんだぁ~。』

『もうっ!。レティア様!。可愛過ぎです!。』

『きゃうっ。』


 ファルナに引き寄せられ自然な流れで股の間に座らされ背中から抱きしめられる。

 ファルナは私のお姉ちゃんみたいな感じだね。

 因みにメルティは妹。これは譲れない。


『んん~。レティア様~。このまま一緒に寝ちゃいます?。』

『それも良いけど、今は駄目だよ。ファルナにこれを私に来たんだから。はい。妖精さんからのプレゼントだよ。』


 手を伸ばして袋の中からプレゼントを取り出しファルナに渡す。

 嬉しそうに受け取ってくれたファルナが開けても良い?と聞いて来たので笑顔で頷く。


『あら?。香水?。』

『そうなの!。ファルナはいつも良い匂いがするけど、これもファルナに似合いそうな優しい甘い匂いがするの!。使ってみて。』

『ええ、早速。』


 ファルナが自分の手首に香水を吹き掛け匂いを嗅ぐ。


『あら、良い香りね。果物のような、花のような。ふふ。レティア様はこの香りで私をイメージしてくれたの?。』

『うん。ファルナは私にとって優しいお姉ちゃんだから、この匂いにぴったりだと思ったんだ。』

『ふふ。もう!。レティア様は罪づくりなんだから!。』


 ぎゅっと抱きしめられる。

 けど、やっぱりファルナは優しくて、ファルナの温かさに心が満たされる。


『有り難く使わせて貰うわね。ふふ。使うのが勿体無いくらい。特別な日に使うようにしようかしら。』

『えへへ。気に入ってくれて嬉しい。』

『レティア様は昔から変わらないわね。ふふ。皆を大切にしてくれて。』

『当たり前だよ。皆大好きな家族だからね。』

『ああん。もうっ!。身体はこんなにエッチに成長してるのに!。可愛いんだから!。』

『身体は関係あるの?。それ?。』

『関係あるの!。はぁ…レティア様が恋い焦がれる殿方が羨ましいわ。もし、レティア様を傷つける輩だったら私…。』

『大丈夫だよ!。彼は素敵な方だからね!。きっと。』

『むぅ…。レティア様。やっぱりこのまま一緒に寝ましょう?。』

『駄目だよ!。他にも行くところがあるんだから!。』

『いけず~。』


~~~~~


 ファルナの部屋から脱出?。避難?。して廊下を歩いていく。

 窓から覗く外の景色は完全に雪化粧に覆われていた。

 えへへ。本当にサンタさんになった気分。


 コンコン。


 さて、次の部屋は~。アリシアのお部屋~。

 ノックした瞬間に返事が聞こえた。


『アリシア~。こんばんは~。私だよ~。』

『レティア様!?。』


 勢い良く扉が開くとロングワンピースのルームウェアを着たアリシアが姿を現す。


『レティア様!。』

『きゃうっ!?。』


 扉が開いた瞬間。

 間髪入れずに私の身体はアリシアに抱き寄せられ部屋の中に連れ込まれる。

 そして、流れるような動きで椅子に座らされて、肩に温かいブランケットを掛けられた。

 テーブルの上。目の前には、すっと湯気を立て甘い匂いのする紅茶が用意された。

 驚いたことにアリシアはいつの間にかメイド服に着替えていて何事も無かったかのように私の前に立っていた。

 部屋に入ってから5秒間の出来事だった。


『マイエンジェル。この時間に私の部屋に来たということは添い寝のご希望で宜しいですか?。沢山、甘えてくれて良いのですよ?。ええ、そう母親に甘えるように。(レティア様。こんな夜遅くにどうされたのですか?。もし怖い夢でも見たのでしたら僭越ながら私が一緒に添い寝してあげましょうか?。)』

『アリシア…。』

『それにそのお召し物は?。はぁ…可愛いレティア様が一段と可愛く美しい…食べてしまいたいくらいね。いいえ。いっそのこと食べてしまいましょうか。(見たことの無いお召し物ですね。ですがとてもお似合いですよ。レティア様。可愛いですね。)』

『多分だけど。心の声と本音が逆になってるよ?。』

『あら?。失礼しました。』


 さて、いつものやり取りはここまで。

 早速、本題だよ!。


『今日はね。アリシアにプレゼントを持ってきたんだよ?。』

『私にですか?。プレゼント?。あの…何か行事事がありましたか?。私…失念していましたでしょうか?。』

『この格好はこの時期に現れる妖精さんの格好なの!。それでね。今日は日頃の感謝を込めてアリシアにプレゼントをお届けに来たのです!。』


 立ち上がってくるりと一回転。


『くはっ!?。』

『アリシア!?。』


 アリシアが血を吐いて倒れた!?。

 いや、吐血じゃない!。鼻血だ!。


『レティア様のプレゼント…堪能致しました…素晴らしい…プリティ~さでした…我が生涯…幸せでした…カクッ。』

『アリシア!。駄目だよ!。死なないで!。まだプレゼント渡してないからぁ!。』


 流石、レティアの容姿。

 あの完璧なアリシアまでダメージを与えるなんて。


『もうっ!。これがアリシアへのプレゼントだよ!。もう勝手に倒れちゃ駄目だよ!。びっくりするから!。』

『畏まりました。次からは事前に報告致します。』

『何の!?。』


 気を取り直してプレゼントを渡す。

 許可を出すと、中身を確認したアリシアが涙を流しながら私に抱きついてきた。


『ど、どうしたの?。あの…ハンドクリーム…気に入らなかった?。』

『そんなことはありません。とても素晴らしいプレゼントをありがとうございます。』

『そ、そう?。アリシアはいつも家事とかしてくれてるからね。この時期だと冷え込むしお肌は大切にして欲しいから。』

『レティア様が私を想ってくれているだけでも嬉しいのに、気持ちを形にしてプレゼントしてくれた。それが私にとって最高のプレゼントです。本当にありがとうございます。』

『えへへ。いつも、ありがとっ!。アリシア。それね、とっても優しい香りがしてね。肌にも優しくて保温効果もあるんだって。アリシアが私を大切にしてくれてるように私もアリシアを大切に想ってるんだからね!。自分を大事にしてね。』

『はい。レティア様の気持ち確かに受け取りました。』

『ふふ。アリシア~。』

『レティア様!?。』


 何か急に恥ずかしくなってきた。

 アリシアに抱きついて誤魔化そう。


『アリシア。今日の私は妖精さんなの。』

『ええ。とても可愛らしいです。』

『そうでしょ!。あのね!。妖精さんは今日を楽しく思い出に残したいの。だから私の言葉に続いて。』

『え?。あ、はい。』

『せっ~の。』

『『メリ~。クリスマス~。』』


~~~~~


 次の部屋は~。


『リオウ~。いる~。』


 リオウのお部屋~。


『っ!?。お嬢様!。』


 アリシアと同様、驚いた声の後に勢い良く扉が開く。

 そして、パジャマのリオウと目が合う。


『こんばんは!。リオウ!。』


 リオウは無言のまま私の顔から視線をゆっくりと足元まで動かして、またゆっくりと顔に戻ってきた。


『リオウ?。どうしたの?。』


 動かないリオウを覗き込む。

 そして…。


『女神がいた。ぐふっ!?。』


 鼻血を勢い良く噴き出してその場に倒れた。


『リオウもなの!?。』

『お嬢様は…神…。ガクッ。』

『リオオオオオオォォォォォウ!?。神じゃないよ!。妖精さんだよおおおおおぉぉぉぉぉ!?!?!?。』


 静かな廊下に私の声だけが木霊した。

投稿は不定期です。

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