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第4話 レティアの努力

『やっ!。はっ!。やっ!。』


 中庭に木剣同士がぶつかり合う音が響く。

 何度か打ち合い、何度目かも分からない突進を行う。体重を乗せた一突き。狙いは左胸。


『これは。これは。今までで一番、お速い。ですが、剣先が僅かにブレておりますよ。それでは速さが出ても体重が乗り切らない。ですので、軽い。』

『あっ!?。うぐぅぅぅぅぅ!?。』


 私の渾身の突きによる一撃がいなされ、勢いを殺しきれずにそのまま倒れ込んだ。

 地面を2回くらい転がって仰向けに倒れる。

 視界に広がる青空。流れる雲。そよぐ風。

 目の前のゼルドに向けていた集中が霧散し、広くなった視野と意識が自然の全てに移る。


『レティア様。御無事ですか?。』

『うん。ゼルド。もう一度、お願い。』

『レティア様。少々、オーバートレーニング気味です。少し休まれた方が宜しいかと?。』

『ううん。まだ大丈夫!。心配してくれてありがとう!。』

『ふむ。そうですか…では、続けましょう。』

『うん!。』


 深夜に謎の男に襲われてから一年が経過した。

 あの夜以降、謎の人達が屋敷に侵入することはなかった。

 あの日、屋敷で何があったのかをお父様に聞いても、詳しく教えてくれなかった。

 ただ、屋敷に金品目当ての泥棒が入ったとしか…絶対に目的は私だったのに、それを隠したんだ。

 心配させたくなかったのか…それとも…。


 冷静になって思い返すと、私は彼等のことを知っていた。

 ゲーム【エンパシス・ガーデン】で、レティアルート及びレティアが物語に関わっていたルートで登場した敵対組織。

 レティアルートでは、主人公達が力を合わせて組織の幹部達を倒してからルートに入る流れだった。

 この時、ピンチに陥ったレティアを主人公が助けたことでレティアは主人公に惚れ、レティアルートのスタートになる。


 組織の名前は…確か…そう。

 【ベルシャルス】

 確か表向きは【エルドリオン】って名前の魔法研究機関だったっけ?。

 稀な属性である光属性の人を洗脳し教祖に仕立て上げ、裏社会に君臨する大組織。巨大宗教組織。

 ゲーム内のレティアは幼少時からずっと狙われていると語っていた。

 まさか、直接屋敷にまで忍び込んで来ていたなんて…ゲームのレティア…もっと詳しく教えてよ…。

 けど、私も迂闊だった。何で忘れてたのか。

 それに、ゼルド達もあんなに強かったなんて知らなかった…。皆、隠してるみたいだけど、おそらく、この屋敷にいる人間全てが私を守るために集められたのかもしれない。

 つまりは…お父様達はベルシャルスの存在を知っていることになる。彼等の目的も…。


『うぐっ!?。』

『考え事はいけません。レティア様。必ず、目の前の私に真剣な眼差しを…おっと、目の前の対戦相手に集中して下さい。』

『う、うん!。』


 また、転んでしまった。

 あの日の体験で私は思った。

 今のままじゃダメだ。もっと、もっと努力しないと。守られる存在じゃダメ。皆を守る存在になるんだ!。

 あの人に、あの人の横に立って一緒に歩ける未来を手にするために!。

 幸せな未来を勝ち取る為に!。


 だから、休んでる暇なんてないのっ!。


『も、もう一度、お願い!。』


ーーー


 中庭でゼルドの指南を受けているレティアの様子を書斎の窓から眺めている男。

 レティアの父親。レティアの住む屋敷の主である【ロノス・ヘイル・フォル・シルシャイン】は深い溜め息をした。


『なぁ。最近のレティアは少し頑張りすぎではないか?。』


 ロイスは同じく窓からレティアのことを眺めている女性。

 レティアの母親。【アーリナ・シル・フィーナ・シルシャイン】に声を掛けた。


『そうね…。あの日を境にレティアちゃんの頑張りに拍車が掛かってしまったみたいね。メルティの話だと、あの日の夜は…部屋で独りで泣いていたって言うし…。』

『レティア…恐かったんだね…。くっ…賊の潜入を許してしまったばっかりに…。』

『んんー。恐かったのは事実だと思うけど…今まで以上にレティアちゃんの中で強くなった。覚悟が決まった。…と考える方が、今のレティアちゃんの行動に合致するのよね。』

『覚悟?。レティアには彼等がレティアを狙って潜入したことは伏せた筈だが?。』

『聡い娘ですもの。薄々、勘づいているのかもしれないわね。自分が狙われている立場ということ…それに、ゼルド達の強さ…何故集められたのかを。』

『レティアには平凡で平和な日常を送って欲しいのだが…。』

『それは、この屋敷にいる全ての人間の総意よ。皆、レティアちゃんが大好きだもの。』

『むぅ…。レティアに才能が無いのであれば、少々酷だがそれを理由に辞めさせることも出来るのだが…。皆の意見を聞きたい。レティアはどうだ?。』


 ロイスが後ろに控えていた面々に声を掛けた。


『ロイス様の気持ちも理解できます。しかし、残念ながらレティア様は天才と呼ぶべき才をお持ちのようです。』

『そうなのよ…教えたことを、すぐに吸収してしまうし…その分野のエキスパートである私達ですら知らない、気付かないような知識を披露するのよ?。近くない将来、すぐに抜かされてしまうわ…。』

『料理の腕前は既に俺と並んでいると言えるぜ。お嬢の料理は皆にも好評だしな。お菓子作りに関しては既に俺よりも上手い。』

『植物の…知識も…凄い。俺の天使は。しかも。植物を使って様々な薬。作ってる。ファルナの教えたこと。と。合わせて。』

『レティア様はメイドの誰よりも家事がお上手です。何処でその様な知識を身に付けたのか分かりませんが、メイド達に掃除のやり方をお教えしている場面も目撃しています。それが的確で効率も良く…何処であの様な知識を?。』


 シルヴァ、リオウ、ガドウ、アリシア、ファルナが口を揃える。

 加えて、レティアは努力家だ。分からないことがあれば意欲的に調べ、新しいことには率先して取り組む。

 自分を高めることに何処までも貪欲なのだ。


『天才か…。くっ。私の子供だったばかりに優秀に…。』

『私 達 の子供です。』

『あ、はい。その通りです。』


 再び全員がレティアを見つめる。

 そこには先程までゼルドに軽くあしらわれていた筈のレティアが、ゼルドに一撃を打ち込む姿があった。


『ゼルドは手加減しているよね?。』

『手加減はしているでしょう。ですが、実戦に近い実力は出していると思われます。まぁ、彼の場合はレティア様に本気など出せないでしょうが。』

『ふふ。ゼルドだけではないでしょ?。』

『………。』


 レティアの成長速度は彼等の常識を上回っている。常識外れの適応能力と学習能力がそれを可能にしていると結論付けた。


『学園での様子はどうだ?。レティアは友達が出来ているのか?。』


 去年、魔法学園の初等部へと入学したレティア。現在2年生となった。

 美しい金髪の目立つ外見のレティア。

 現国王の弟にして、世界に5人しかいない【魔法騎士】に任命された1人で、国を代表する【魔法研究】の最高責任者であるロイスの一人娘という立場。

 ロイスの親心として学園で浮いていないかを心配するのは当然だった。


『メルティからの報告では、生徒の皆さんの憧れの的となっているそうです。成績優秀、運動能力も同世代では飛び抜けており、また、どんな事柄にも意欲的に取り組む姿は他の生徒から羨望の眼差しで見られているようです。』

『そ、そうか。と、友達は出来たか?。』

『誰とでも分け隔てなく接し、クラスの中心であることは間違いありません。ですが、特定の誰かと親しくしている姿も見せてはおりません。』

『そうか…親友のような関係の友達はいない。そういうことか?。』

『はい。ですが、それは家柄の関係も深く関わってくることです。仕方がないこと…なのかもしれません。レティア様のことです。きっと特定の誰かと仲良くされることで、その者が他の者達から孤立してしまうことも理解しているのでしょう。』

『そうか…。そうだな。私としては普通の女の子のように日々の生活を送って欲しいのだが…難しいな。』

『ああ~。ロイス様。レティア様のことで、1つ報告が。』


 ファルナが小さく手を上げる。


『ん?。何だ?。ファルナ。』

『レティア様ったら今月に入って、もう5人の男の子に告白されているみたいよ?。』

『……………。』

『『『『………。』』』』』


 その場にいたアーリナとファルナ以外から殺気が漏れ出した。周囲が5つの魔力で満たされる。


『レティアちゃん…モテモテね。でも分かるわ~。レティアちゃん可愛いもの。頑張り屋さんだし。一途だし。』

『何処の馬の骨かな?。その命知らずな者達は?。』

『ファルナ。名前と住所を一覧にして用意するように。いや、今月で5人ということは今までもされている。可能性もありますな。学園に入学した時まで遡り、リストの作成を!。』

『俺のお嬢を誑かした馬鹿は何処のどいつだ!?。調理して犬どもの餌にしてやる!。』

『殺す。埋める。殺す。埋める。』

『あらあら。メイド部隊を動かそうかしら。全員戦闘配備!。』


 殺気立つ面々の中、ファルナは溜め息をしてから言葉を紡いだ。


『慌てなくても大丈夫よ。全員玉砕しているから。第一、レティア様が靡くわけないでしょ?。』


 その言葉に一気に空気が和んだ。


『そうよね。レティアちゃんには 運命の人 がいるもの。』

『レティア様。信じておりました。』ホッ。

『それを先に言わないか。』ホッ。

『お嬢。流石だぜ!。』ホッ。

『俺の天使。何処にも。行かせない。』ホッ。

『メイド部隊。仕事に戻りなさい。』ホッ。


 安堵する面々。


『ねぇ。運命の人は現れたのかしら?。』

『『『『『『!?。』』』』』』


 アーリナの一言に緊張が走る。


『い、いえ。その様な報告は受けていないわ。けど、告白を断る理由が「私は既に将来を共に歩むと決めた殿方がいるのでお断りさせて頂きます。お気持ちは嬉しく思いますが申し訳御座いません。」だそうよ。凄いわよね。8歳の女の子が告白を断る時の台詞よ?。大人でもこんなハッキリ言えないわ。』

『くっ。いったい誰なんだ。運命の人というのは!?。』

『まだ、分からないわね。同じ学園ではないのかしら?。』

『しかし、それなら当分の間は安心だな。お嬢の意思は固ぇ。』

『そうだな。引き続き情報は報告してくれ。』

『了解。』

『ふふふ。レティアちゃんの将来が楽しみね。』

『私としては不安だよ。』


 中庭のレティアは色々な意味でキラキラと輝いていた。


ーーー


 本日の午後はアリティオお兄様に魔法を教わっています。

 お兄様はお父様の魔法研究の手伝いに来ている傍らで私に魔法を教えてくれます。かれこれ2年にくらいになりますね。

 最初は光属性の初級魔法である【ライト】という光の小さな玉を出現させる魔法ですら上手く出せませんでしたが、今では20個までなら余裕で出せます。

 そして、現在最高記録である23個目のライトを出現させ空間に維持しているところです。


『こう、ですか?。お兄様?。』

『そうだね。上手い上手い。さて、もう1つ増やせるかい?。』

『や、やって、みます。』


 意識を集中。

 既に出現させているライトを維持する魔力と新しく出現させる為の魔力に分けて…。

 1からライトの魔法を構築す…構築…構築…こっ…。


『きゃっ!?。』


 制御を誤り魔法が弾けた。


『今は23個が限界のようだね。凄い上達振りだよ。2年でここまで出来るようになるなんて。数年したら私など簡単に追い越されてしまうかもね。』

『そ、そんな…私なんて、まだまだです…。』

『そのひた向きさと謙虚さもレティアの魅力だよ。』


 そう言って、お兄様は私の頭を撫でてくれる。優しいお兄様が大好きです。


『さて、そろそろ外も暗くなってくる頃だ。下まで送るよ。メルティは来ているんだろ?。』

『うん。下で待ってくれています。』

『そうか。じゃあ、行こうか。』

『はい!。』


 お兄様と一緒に研究所の階段へ続く通路を歩いていると知らない男の子に声を掛けられた。


『ん?。アリティオ。その小さいのは誰だ?。』


 だ、誰?。

 私を食い入るように覗き込む褐色の男の子。

 年齢的には同じくらいだけど。それに、この子の面影…何処かで…。


『ルクジオか。此方は前に話したレティアだ。私が魔法を教えている。』

『へえ。この小さいが噂の。お嬢様か。へぇ。どれどれ。なるほどねぇ。』


 ルクジオ。

 ああ。思い出したわ。

 ゲーム本編が終了した後の外伝。

 本編でレティアと主人公が結ばれなかった未来を題材にしたゲーム。

 レティアが主人公の乙女ゲームの攻略対象だ。

 登場時期は高等部。つまり17歳以降での登場だったから、こんな幼い姿は記憶に無かったわ。

 確か、アリティオお兄様と同い年で、2人は特に仲が良かった筈。この研究所に居るのも魔法関連の研究を2人でしていたのかも?。

 それにしても、ゲームだとオレオレ系のイケメンだったのに子供の姿は可愛らしいわ。

 まぁ、この国と同じく魔法の研究に力を入れている隣国の王子だから間違ってもそんなこと言えないけど。


『初めまして。ルクジオ様。レティアと申します。以後、お見知り置きを。』


 この一年で更に磨きが掛かった令嬢の所作と立ち振舞いをお披露目するわ!。

 ドレスの裾を掴んで丁寧にお辞儀をする。


『……………。』


 どうよ。余りの優雅さに言葉を失っているわ!。


『良いなぁ。お前。』

『え?。』


 頭を上げる。瞑っていた目を開けると何故か私の顔よりも低い位置にルクジオ様の頭があった。私の顔をじっと見つめている。


『あ…あの…。』

『よしっ!。決めた!。』


 ルクジオ様は私の手を取って手の甲にキスをしてきた。


『えっ!?。な、なななな何をっ!?。』

『お前。俺の妃にしてやろう!。』

『なっ!?。ルクジオ!。何を言っている!?。』


 え?。何を言っているの?。

 アリティオお兄様も驚いているわ。突拍子もない破天荒っぷり、姿は幼くてもゲームの時と性格は変わっていないみたい。

 折角の申し出だけど、私は私が決めたルートを行くわ!。

 脱レティアルート!。脱正規ルート!。

 目指せ!。友人キャラとのハッピーエンドよ!。


『早速、お父上に知らせねば!。』

『お断りします。』

『何?。俺の聞き間違いか?。今、断ると聞こえたが?。』

『はい。そう言いましたから。』

『王子である。俺の誘いを断るだと?。』

『はい。私には既に心に決めた殿方がおりますので。その様なお誘いはお断りするようにしています。』

『ほぉ。誰なんだ?。その男は?。アリティオ。お前か?。』

『残念ながら違うよ。私も知らないんだ。』

『へぇ。アリティオ。お前も知らんのか?。何処の誰だ?。お前のような女の心を奪ったのは?。』

『それは知らないんだ。けど、彼女の気持ちを尊重したい。彼女の努力を近くでみていたけど。私達が入り込めるような隙間はないようだよ。』

『はっ!。そこは退くところじゃねぇだろ?。ますます燃えてくるだろうが!。おい。レティアだったな。』

『はい。ルクジオ様。』

『気に入ったぜ。お前。いつの日か、必ず俺に振り向かせてやるよ。』

『そんな日は一生来ません。私は私の運命の人と添い遂げると決めていますから。』

『ははは。俺にこれだけハッキリ言えてりゃ大したもんだ。ますます気に入った。よし、何か困ったことがあれば何でも言え。力になってやる。』


 そう言って私の頭をポンポンと撫でてくるルクジオ様。アリティオお兄様とは違い、言動は荒っぽいけど撫でてくる手は優しさを含んでいた。


『また、今度会いに来るぜ。はは。ここに来る楽しみが増えたな。じゃあな。レティア。絶対俺に惚れさせてやるぜ。』


 ええ…困るよぉ。

 断ったのに…諦めの悪い王子なんだから…。


 ルクジオは、それだけを言い残し、元来た通路を戻って行った。


『やれやれ。帰る為にこの通路を歩いて来たんじゃないのかな?。まぁ、大方、気分が乗ったから研究の続きでもしに行ったんだろうけど。ごめんね。レティア。ルクジオは気分屋で何を仕出かすか私にも分からないんだ。』

『お兄様が気にすることではありません。それに、色々荒っぽいですが、良い人だと思います。』

『ああ、そうだね。レティアのこと凄く気に入ったんだと思うよ。あんなに嬉しそうなルクジオは初めて見たから。』

『そうですか。ですが。私に求婚しても無駄だと改めてお兄様からも伝えて欲しいです。』

『…そうするよ。それにしても、まだ、出会えないのかい?。その運命の人には?。』

『はい。私が16歳になる頃には出会える筈です。』

『っ!。そうなのかい?。』

『はい。それまでに、いっぱい頑張って立派な女性になってみせます!。』

『もう十分立派だと思うけど。レティアの目標はいつも高いね。』

『はい!。あの人…一緒に並んで歩いて行けるように…。』


 未来を想像すると胸が高鳴るわ。


『っ!?。やれやれ。本当に…魅力的だよ…君は…。』

『?。何か仰いましたか?。』

『いや。何でもないよ。』

『そうですか。では、そろそろ行きましょうか。メルティも待ってます。』

『ああ。そうだね。』


ーーー


 その日の夜。

 私は一人。バルコニーに出て夜空を眺めていた。元の世界の天の川のような星の帯が夜の海に輝いている。


 レティアに転生したことを思い出して2年。

 自分なりの努力を繰り返した。

 自分が成長している自覚はある。けど…心の何処かで不安を感じている。

 目一杯自分を磨き、彼の前に立った時。彼は何と言ってくれるのか。

 私の告白を受け入れてくれるだろうか。

 嫌われたらどうしよう。

 様々な負の考えが努力をすればする程強くなっていく。不安を払う為に身体を動かした。


『はぁ。馬鹿ね。私は。そんなの考えたって答えなんか出ないじゃない。未来の幸せを手に入れる為に今を頑張っているのに。』


 ゲームの時の彼に惹かれた想いは本物。

 なら、もっと、もっと頑張って立派な女性になるんだ。

 それに、私を拐おうとした組織なんかに負けるもんか。


『私は単純だなぁ…。』


 改めて、自分の行動に笑ってしまう。

 本物のレティアが今の姿を見たら笑ってしまうかな?。呆れられちゃうかな?。悲しまれるのは嫌だなぁ。


『そうだよ。折角、レティアに転生出来たんだもん。悔いの残らないように頑張るだけだよね。』


 家族にも、環境にも恵まれた。

 それに甘えることなく自分を高めれば、視野が広がって出来ることも多くなる。

 

『うん!。うん!。私…頑張るからね。◼️◼️◼️君。会えるのを楽しみにしてるから。』


 学園では別け隔てなく友人達と過ごしている。レティアというお嬢様の立場上、特定の誰かと仲良くしてしまえば、相手に迷惑を掛けてしまうかもしれないから。

 

 私は、懐に大切に入れてあるケースを取り出す。パカッと開き、中からハンカチを取り両手で優しく握って胸元で抱き締める。

 私の大切な宝物。どんな時も肌身離さず持ち歩いている大切な思い出。


『私の唯一の親友…今、何してるかな。元気だと良いなぁ。また、会いたいなぁ。』


 あの日。出会った男の子。

 1日だけの思い出。だけど、大切な1日。

 レティアの運命が変わった日。


『私。頑張るね。だから、応援しててね!。』


 私は空に浮かぶ満月に叫ぶ。


『がんばるよぉぉぉぉぉおおおおお!!!。』


ーーーそして、月日は流れていく。


 私、レティアは15歳となった。


 魔法学園の初等部、中等部を卒業した私は遂にゲームだった頃の主なストーリーの舞台。

 【エンパシス・ガーデン】。

 巨大大陸【エンパシア】の最大の都市、魔法都市【エンパルメア】。

 【エンパシス魔法学園】高等部へと入学する。

 学園は高等部から全寮制となり、魔法について様々な学課で学ぶこととなる。


 この学園で2年生になった時。

 つまり、あと1年が経過すると。

 ゲーム【エンパシス・ガーデン】の時間が動き出すことになる。運命の輪が動き出すんだ。

投稿は不定期です。

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