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プロローグ

以前に書いた試し読み用の本編です。

試し読み用とは若干、設定やキャラクターの名前を変更しています。

 …思うと、あの日の出会いは私にとって運命の転換期だったのかもしれません。

 あの日がなければ私は決められた運命の流れのまま、とある人物の思い通りのエンディングを向かえることになっていたでしょう。


 あの日は朝からお屋敷の中が騒がしかったのを覚えています。

 慌ただしく動き回る使用人達。普段は私と一緒にいる筈の同い年の付き人ですら朝食を食べ終えた後から姿を見ていませんでした。

 元々、身体が弱くあまり部屋から出なかった私は、ここ最近の身体の好調具合も相まって憧れていた屋敷の外への探索に出ることを決意しました。

 屋敷の誰かに見つかれば止められるのが目に見えていました。なので、私は誰にも気付かれないように調理場の裏口からそっと外に出たのです。

 目的地は私の部屋から見えていた公園です。

 身体の弱かった私はずっとあの公園で遊びたいと思っていたのです。だから、慣れない足取りで公園を目指しました。

 大人の足なら徒歩5分ほどの距離でしょうか?。

 けど、ずっと部屋に閉じ籠っていた私の体力だと物凄く遠くに感じました。


『はぁ…。はぁ…。つ、着きました…。』


 30分以上の時間を費やし、息も絶え絶えで目的の公園に到着です。


『わぁぁあああ。』


 感動でした。

 いつも部屋の中から眺めることしか出来なかった公園が目の前に広がっているんですから!。

 見たこともない遊具が沢山あって小さな私の胸は高鳴ってドキドキです!。

 私はフラフラな足取りで遊具へと向かいました。

 けれど、感情の高まりで気付かなかった…いえ、忘れていたのです。

 ここまでの道のりで体力を使い果たしていたことを。


『はぅっ!?。』


 縺れた足でそのまま転んでしまいました。

 

『痛い…。』


 起き上がり痛みの感じる箇所を見ると膝を擦りむいてしまったようでした。僅かに血が滲んで赤くなっています。

 ふと、擦りむいた傷を見て急に冷静になった私は心細くなってしまったのです。


『ひっく…。ひっく…。ひっく…。』


 誰もいない公園で独り泣き出してしまった。

 いつも一緒にいるお付きもいない。

 心細さと不安と足の痛みに訳も分からず、ただ泣いていました。


『大丈夫?。足…痛い?。』


 そんな私に声を掛けてくれた存在。

 いつの間にか目の前には同い年くらいの男の子が心配そうな眼差しで立っていました。


『ぅん…。』

『血…出てる。ちょっと待っててね。』


 男の子は小走りで何処かに向かうと1分くらいで戻って来ました。


『ちょっと。しみるかも。我慢しててね。』

『っん!。』


 男の子は水で濡らした綺麗な刺繍が施されたハンカチで私の傷口を丁寧に拭いてくれました。

 濡れたことで、じわっとした痛みが広がり私は無意識に男の子の服を掴んでいました。


『綺麗になった。後はこれで。』


 もう一枚のハンカチを取り出した男の子。

 一瞬ですが、その表情に影が射しました。


『どうしたの?。顔…暗いよ?。』


 純粋に思ったことが口から出てしまいました。


『あのね。このハンカチね。僕のパパとママから貰ったモノなんだ。とても大切な僕の宝物…。パパとママ…すっごく仲が良かったのに…ちょっと前に事故で死んじゃったの…。』

『………。』


 泣いていた私よりも辛そうな顔の男の子を見て…居ても立っても居られなくなった私は男の子の頭を抱きしめていました。


『っ!?。ど、どうしたの?。』

『分からないの。けど、こうしないと貴方が消えてしまいそうに思ったの。』


 足の痛みを忘れて私は男の子の頭を撫でていました。


『もう…大丈夫だよ。えへへ。』


 男の子はゆっくりと離れると恥ずかしそうに笑ってハンカチを私の傷口に巻いてくれました。


『良いの?。それ…宝物?。』

『うん。君になら…君なら大事にしてくれるって思ったの。だから、あげる。』

『…うん。うん!。大切にするね!。』

『あとね…お願いを聞いて欲しいんだ。』

『なぁに?。』


 照れたように笑う男の子。


『僕の…【お友達】になって欲しいんだ。』

『【お友達】…。』


 私にとって、その言葉は不思議な響きだった。私の中で曇っていた心が晴れ渡るような感覚。今まで友達と呼べる存在の居なかった私にとって特別な言葉。


『私で…良いの?。』

『うん!。君とお友達になりたい!。』

『うん!。うん!。』


 跳び跳ねたくなるくらい嬉しい男の子の言葉。

 手を繋いでくれた男の子の温もりは決して忘れない。

 私にできた。初めてのお友達。


 彼は私が遊具で遊んだことがないと知ると1つ1つ説明しながら一緒に遊んでくれた。

 彼は体力のない私に合わせて、ゆっくり1つ1つ遊具で遊んでいく。

 初めての体験ばかりで色んな遊具で遊んだ。

 凄く楽しかった。けど、それは…遊具が楽しかっただけじゃない。きっと、初めてのお友達である彼が一緒だったから…。


 日が暮れるまで私達は遊んだ。


『お嬢様!。』

『こんな所に!。探しましたよ!。』


 夕暮れの赤い空に照らされた2人の人物が公園の入り口から走ってくる。

 メイド服姿の少女【メルティ】が私に抱き付いて来た。


『わぁぁぁあああん!!!。急に居なくなったから探しましたぁぁぁあああ!。ご無事で良かったぁぁぁあああ!!!。』


 私の胸に顔を押し付けて大泣きするメルティ。

 そうでした…私…黙って出てきたんでした…。


『レティア様。この様な場所で何をなさっているのでしょうか?。』

『し…シルヴァ…。あの…その…。』


 執事服の初老の男性。私の専属執事。

 顔に深く刻まれたシワと厳しく鋭い眼光。

 うぅ…こ、怖いよぉ…。


『其方の少年が貴女様を連れ出した。そうですかな?。』

『ひっ…。』


 ギロリッ!。と男の子を睨むシルヴァ。

 そのあまりの迫力に男の子が怯えてる。


『違う!。彼は悪くないわ!。私を助けてくれたの!。この傷の手当ても彼がしてくれたんだから!。もし、彼に何かしたらシルヴァでも許さないわ!。』


 男の子前に出て、両手を広げる。

 私の初めてのお友達に失礼なことは許さないわ!。


『…少年。今の話し本当ですかな?。』

『ぅ…うん。』

『そうですか。失礼致しました。この度はお嬢様が大変お世話になりましたね。近い内に必ずお礼を致しますので、この場は御帰宅願います。』

『う…うん。あの…またね。』

『うん。また会おうね!。』


 これが、私と彼との出会いだった。


『さて、お嬢様?。』


 凄味のあるシルヴァの声。

 

『ん?。』

『勝手な外出に屋敷中がパニックです。旦那様からキツいお仕置きがありますので心の準備をしておいて下さい。』

『っ!?。』


 お仕置き…いや…。


『め…メルティ…。』

『私も怒ってます。』


 そっぽを向いてしまうメルティ。


『そ…そんなぁ…。ごめんなさい…。』

『それは、屋敷の方々全員に言って下さい。』


 こうして楽しかった1日は終わりを向かえました。

 子供だったからか、偶然の出会いだったからか…ただ、私が抜けていただけだったのか。彼の名前を聞き忘れるなんて…。一生の不覚です。


 そして、その日の夜。

 私はお父様にこっぴどく怒られました。

 そこで知らされたこと。

 私達は明日、お父様の仕事の都合で外国に引っ越すことになっていたみたいなのです。こういうのは今までも何度もあり、普段から部屋にいた私には夜になったら話そうとしていたらしいのです。

 朝方から屋敷の皆さんが忙しそうにしていたのはそのためだったのですね。

 知らされていなかったとはいえ、何も告げずに家を飛び出してしまった私。

 それに気付いた使用人達。屋敷中が大変なことになってしまったそうで…誘拐だと思われたらしく…もう少しシルヴァ達が私を見付けるのが遅ければ国が動いていたと聞かされました。本当に皆さんには申し訳ないことをしてしまったようです…。


 結局、次の日。私は外国に移り住むこととなりました。

 初めてのお友達にお別れの挨拶も告げらず…名前も聞けなかった…私の後悔です。

 


ーー今、思えば。

 彼がハンカチをくれたあの日が運命のターニングポイントだったのでしょう。

 それを考えれば外出したことに後悔はありません。

 だって…私は…彼にハンカチを貰うずっと前から…ううん。【前世】の時から私は彼の事が大好きだったのです。



ーーー月日は流れて私は6歳の誕生日を迎えました。


 私は使用人数人とお父様とお母様と共に教会へ足を踏み入れました。

 初めて入るその場所は神々しくも美しい絵画が並び、様々な色の硝子を透して入り込む太陽の輝きが、教会内にある全てを優しく包み込んでいるようでした。


『レティア様。6歳の御誕生日おめでとうございます。』


 優しい笑顔の神父様が私に頭を下げる。


『ありがとうございます。今日は宜しくお願いします。』


 そう。今日は特別な日。

 私の今後の未来に直接関係する運命の日なのですから。

 緊張し震える手で宝物のハンカチを握りしめる。

 あの日の彼から貰った私の大切な宝物。これがあれば安心できる。生まれて初めて出来たお友達が守ってくれているような感じがするから。


『貴女様の 魔法 の才覚は聞き及んでおります。既に発現に成功されていると。大変素晴らしい才能です。』


 【魔法】

 この世界には魔法という技術が存在する。

 今から200年くらい前に発見された技術であり、それより前の時代には【超能力】や【異能】と呼ばれていたモノが科学の発展と共に徐々に解明されたことで明らかになった。全ての生物に生まれながらに備わっている【生命エネルギー】を利用した【特殊なエネルギー】又は、それを利用して起こる【現象】のことを総称して【魔法】と呼ぶようになりました。

 【魔法】とは体内を巡る特殊なエネルギーを利用して発現させた【能力】や【現象】として具現化する技術です。人各々に該当する性質が異なり、大きく分けて【火・水・風・雷・土・光・闇・無】の8系統に分類されます。

 各々に得意不得意、出来ること出来ないことがあり、その研究が日々行われています。


『レティア様。こちらに。』


 神父様が取り出した水晶。

 この国では6歳の誕生日を迎えると、自分の魔力の系統、量を計測するための儀式を行うことが国民に義務付けられています。

 儀式といっても簡単なモノで神父様が用意した水晶に今の力で全力の魔力を水晶に注ぎ込むだけです。そうすることで水晶の輝きの強さと色で系統と魔力の量を知ることが出来るのです。


 魔法の8つの系統には得手不得手がある。


 この国では…いえ、世界では魔法が生活の一部を担っている。

 この先の人生では魔法無しでは成功しないと言っても過言では無い程人々の生活と魔法とは密接な関係にあります。

 つまり、系統によって今後の人生、将来の方向性がある程度決定しまうということです。

 まぁ…全て、ということはありませんが…例えば、極端な例ですが。

 水の系統が魔力に現れた人は、当然水を使うと仕事をした方が有利になります。火災等が起きた際、火の系統の方よりも圧倒的に水の系統を持っている方の方が重宝されるといった感じです。


 魔法社会の中では、自分の魔法の理解を深め使い方から、応用までの習得が義務化されているのです。


 私のお父様は、この国の国王の弟です。

 国を代表とする魔法研究の第一人者、及び、魔法開発機関の最高責任者でもあります。

 更に、世界に5人存在する各系統の最高戦力【魔法使い】で【魔法騎士】の称号を国から与えられた人物でもあります。

 【魔法使い】とは、魔法を使用した戦闘を行う人達の総称です。その中でも最強と言われる人達のことを【魔法騎士】と呼び、同時に国が認めた各系統を極めた人物に与えられる最高の称号でもあります。

 8系統あるのに5人しかいないのは、【火・水・風・雷・土】の5系統しか使い手が現れていないからです。

 【光・闇・無】の3系統は、そもそも扱える人物が少なく、しかもそれを使いこなせる人物が現れていないのです。


 そんな偉大なお父様の娘に生まれたんですもの恥ずかしいところは見せられません!。

 必ず、大きな成果を出して見せます!。


 そう決意を固め水晶を目の前にした時…。

 期待に満ちた周囲から感じる人々の眼差し。

 失敗したらと…良い結果が出なかったと時のことを考えてしまい緊張が少しずつ大きくなっていく…。


『さあ、手を前に。』

『はい。』


 私は緊張する胸の高鳴りを、深呼吸で無理矢理落ち着かせます。

 これで、私の将来が決まるのです。緊張しない筈がありません。


『さあ。目を閉じて、思い切り魔力を水晶に注ぎ込んで下さい。』


 大丈夫。

 彼のハンカチはポケットの中にある。

 彼が守ってくれている。

 そう自分に言い聞かせて神父様に言われた通り目を閉じる。

 体内を巡る魔力を感じる。全身の魔力を手の中に集める。


 思いっきり…思いっきり…思いっきり…。


 お願い。私の中にある魔力達。私の未来を導いて…。


 私は全力全開で魔力を水晶に送り込んだ。


『こ、これは!?。』

『えっ!?。』


 神父様の驚いた声に目を開けた。


『わっ!?。』


 視界には、周囲を一瞬で真っ白な…純白で包む輝きが広がった。

 魔力に耐えられなくなった水晶が割れ、教会内を眩い輝きが埋め尽くした。


『この輝きはっ!?。まさかっ!。【光】系統!?。』


 それは 知ってる わ。

 しかも、歴代…いえ、歴史上で見ても類を見ない魔力量の持ち主ということも…。


 私?。は…知っている。


『え!?。』


 その時、頭の中に 私 ではない誰かの記憶が滝のように流れ込んできた。


『きゃぁぁぁぁぁああああああああああ……………。』

『レティア様!?。』

『レティア!?。』


 頭の中に流れ込んできたあまりの情報量に私は意識を失った。


~~~~~


 私は◼️◼️ ◼️◼️◼️。

 違う。

 私は【レティア・シル・フィーナ・シルシャイン】。


 17歳の女子高生。

 違う。

 6歳。


 家族はパパとママと弟が1人。

 違う。

 お父様とお母様、私は独りっ子。ううん。使用人達も皆が私の家族。


 ゲームが大好き。

 特に…【          】が最近のお気に入り。メインヒロイン可愛すぎる。

 ゲーム?。ヒロイン?。

 金髪…碧眼…の美少女?。

 レティア・シル・フィーナ・シルシャイン。


~~~


『ん…ん?。あれ?。私?。』


 目が覚めると見慣れた天井が視界に広がった。

 ここ…私の部屋だ…。

 【ゲーム】の時じゃ遠近法の一枚絵の背景だったからなぁ。実際のは、綺麗なお姫様の部屋みたい…。

 

『レティア様!?。』


 銀髪と金色の瞳。

 メイド服の少女。私の家族…相変わらず可愛いなぁ。

 【ゲーム】の時のまんまだぁ。


『メルティ…。』

『お待ちください!。すぐに旦那様と奥様をお呼びしますので!。』


 慌てた様子で部屋を出ていくメルティ。

 その後、1分も経たない内にお父様とお母様が血相を変えた様子で部屋に飛び込んできた。


『レティア!。ああ…良かった心配したんだぞ?。急に気を失ってしまって…。』

『ええ。お医者様に診せても異常はないって言うし…。身体は?。何ともない?。』

『はい…お父様、お母様。ご心配を御掛けしました。この通りもう何ともありません。』


 私は軽く腕を動かして元気なのをアピールする。


『そうか…良かったよ…。お前に何かあったと思っただけで…私は…。』

『本当に…大丈夫なの?。』


 私の顔を優しく撫でるお母様。


『はい。問題ありません。あの…。私の魔力測定はどうなってしまったのですか?。』

『ん?。ああ…そのことなんだが…。』


 お父様が言い淀む。

 ああ。そうだよね。言いづらいよね。

 これは私にとっての【確認】。

 私の【記憶】と同じモノかを知るための。


『お前は【光】系統の魔力を授かっていたようだ。』

『【光】ですか。』


 うん。知っている。


『それも…過去、教会の記録に残っているデータと照らし合わせても類を見ない程の魔力量の持ち主だそうだ。』

『そうですか。ふふ。では、私は【特別】な…お父様とお母様に喜んで貰えるような結果を残せたのですね。』

『…ああ。最高な結果だよ。』

『ええ。けど、私達は貴女が無事でいてくれたことの方が嬉しいわ。』

『ああ。そうだな。今後の話しは明日しよう。今日は疲れただろう?。もう、お休み。』

『はい。そうさせて貰います。お父様、お母様。お休みなさい。』

『ええ。お休み。レティア。』

『お休み。レティア。』


 各々が私の頬にキスをしてくれた。

 ゲームでは無かったシーンだけど。心が温まる優しい感じがするわ。

 レティアが本当に愛されていることが分かるもの。


『それでは旦那様、奥様。こちらへ。』


 メルティに連れられて部屋から退室していく両親。

 1人になったことを確認しベッドから飛び出し部屋の角に置いてある姿見の前へ飛び付いた。


『あ…ああ。これが…私?。』


 鏡に写る自分の姿。

 うん。当たり前のことを言ったわ。

 この世界の生まれてから6年間ずっと付き合っていた身体だもん。

 けど、もう一人の私の記憶が言ってる。

 この顔…見たことあるって…。


 金髪の長い髪は部屋の明かりでさえ反射し輝くほど美しくきらびやか。

 大きな瞳は碧眼。吸い込まれるような深い色合いは鏡に写った自分でさえ虜にしてしまうような不思議な力を宿しているよう。

 6歳という幼い外見からでも分かる可愛さと美しさのバランスの良さ。お人形のような容姿は現代【日本】にいれば、真っ先に誘拐されてしまいそう。

 何よりも私は知っている。


『成長したら…マジで美人なんだよね…。』


 そう。私は、自分が成長した姿を知っている。

 今はまだ幼児体型だけど、やがて誰もが目を止める抜群のスタイルを持つ絶世の美少女に成長するんだから。


『うぅ~ん。やっぱりレティアだ。私…あの【ゲーム】のキャラに生まれ変わっちゃたんだ…。』


 【転生】しかも超絶美人キャラに。

 こんなの嬉しいに決まってるよね!。


『ん?。待って…レティアって…【あのゲーム】のメインヒロインじゃなかったっけ?。』


 あのゲームって…確か…。


『あ…ああ…ああああああああああ!?。』


 あれは私が弟の部屋から、ちゃっかり借りてプレイしたゲーム。

 しかも、レティアって超人気キャラで…。

 18禁…R18…アダルトゲーム…。


『って…エロゲのキャラじゃないぃぃぃいいいいいいいいいい!?!?!?。』

『レティア様!?。どうなさいましたか!?。突然叫びだして、まだお身体の具合が?。』


 ああ。メルティ…。

 

『メ、メルティ…。』

『は、はい。如何なされましたか?。』

『メルティ。私の顔どう?。』


 って…私、混乱して意味わからないことをメルティに聞いてるんですけどぉ?。


『え!?。レティア様の顔ですか!?。』


 ああ。困ってるメルティも可愛いわ。

 綺麗な銀髪は輝いていて。

 はぁ…困ってる顔も少し照れている顔も…てか、睫毛長っ!。つけまつ毛じゃないよね?。肌も綺麗…銀髪と真っ白な肌がマッチして鏡の国のお姫様みたい…。


 そう言えばメルティもあのゲームの攻略キャラだったよね。

 【アイツ】に惚れたメルティも可愛かったなぁ。

 あっ、そう言えばメルティとレティアとのハーレムエンドとかあったよね?。

 同じ人を好きになっちゃったとか…でも、メルティとならアリかも…。


『レ、レティア様のお顔は…とても綺麗で…太陽のように輝いている髪も…海のような瞳の色も、白く輝く雪の結晶のような肌も…全てが芸術と言って差し支えない美しさです…。』

『メルティ~。』

『レティア様!?。』


 凄く恥ずかしいんですけどぉ?。

 ついメルティに抱き付いちゃった。

 これ私じゃなくてレティアに言ったんだよね?。あっ…私がレティアか?。じゃあ、私に言った?。美しい?。綺麗?。うん。レティアは美しい。


『メルティも可愛いよぉ~。』

『ひぇぇぇぇぇえええええ!?。あぅ…嬉しいです…。』


 暫く無言のまま抱き合う。

 少し顔をずらすとメルティの顔。

 見つめ合っている内にお互いに恥ずかしくなって…。


『『えへへへ…。』』


 照れ笑い。


 うん。難しいことは明日考えよっと。

 その日はメルティと一緒に寝ることにした。

 

 まさか自分がエロゲの世界に転生するなんて…しかも、メインヒロイン。

 あれ?。じゃあ、もしかして…【あの人】も、この世界にいるのかな?。

 

 不安と期待が入り混じったような心境のまま。

 私は、眠りについた。

投稿は不定期です。

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