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Case1「運命の出会い」-4

作中に出てくるホテル名は現実にあるホテルでは無いです。

ちょっと間が空きましたが次話以降投稿テンポがあがると思います。

「じゃあ早速、ここである程度聞いておきたいことや状況をまとめていこうか」

「まず、昨晩君を狙った連中に関してだけど……フェアリテイル・テーラーという言葉に聞き覚えは?」


「ないわ。テーラーってことは何かの……服のブランド?」


 悶々と彼を本当に信頼していいのかと考えている間にサインを確認したオーナーとナイトキャップが部屋を出てから、アイ・オープナーはそう尋ねてきた。

 随分可愛らしい名前だが、彼の表情はやや険しい。どうも違うようだ。


「ブランドではないな。服飾関係者がいるのは確かみたいだけど。

 彼らに狙われてるっていうことは少なくとも何か知っているか、何らかの能力を保有してるかだと思うけど……まあ本人が気付いてないうちにってこともあるし、前にも向こうの勘違いだったってのもあるからなんとも言えないか」


 ぶつぶつとそう言っているが、なんの事やら分からないので首を傾げていればはっと気付いたように顔を上げて説明をしてくれた。


「フェアリテイル・テーラーというのは先程君が訊ねた理屈を超えるようなことや奇跡とかを起こせる人がその力を悪用して世界を滅ぼそうとしてる集まりみたいなものだね」

「何故世界を滅ぼそうと動いているのかは分からないけれど、構成している人間の中には有名な会社の重役もいるって噂もある」

「オーナーは彼らの動きを静観しているけれど、依頼人から彼らの襲撃から守って欲しいって頼まれることやエージェントの中にも個人的に彼らと敵対しているのが多いから実質的に敵対関係に近い。俺もその一人だしね」


 壮大すぎる話だ。ファンタジーみたいでにわかには信じ難い。顔に出ていたのかアイ・オープナーは苦笑する。


「信じられないかもしれないけど、世界を滅ぼす云々はともかく実害が出てるし重要なのはそちらだから今は深く考えない方がいいよ。さっきも言ったけど、勘違いで狙われてたって案件もあるから気負い過ぎない方がいい」


「そうするわ。……でも何故彼らの仕業って分かったの?」


「彼らは必ず組織の一員であることを証明するバッジを身につけてるんだ。君を襲った奴もそうだったからほぼ確定で違いないだろうと判断してる」


 これだよ、と赤と青のリボンが銀のFの字に絡み合ったデザインのバッジを出して見せてくれた。そう大きくはないしぱっと印象に残るものでもない。本当にこんなものでそう分かることだろうかと裏を捲ると何かの模様のような、……いやこれは見たことがある。クレジットカードや通行証についているようなICチップが付けられていた。


「そのICチップから情報を引き出せないか知り合いに頼んだけど、まあ解析に時間がかかる上に恐らく既に対策がされてるから期待はしない方がいい」

「でも狙われるだけの理由が君にあるならまだ諦めているとは思えないし、何かしらの痕跡や足取りは見つかるはずだ」


 オーナーもオーナーだがこの人もこの人で何をやっている人なのだろうか。組織だかなんだかと敵対していると言っていたし、探偵か何かそういう仕事なのかもしれない。


「とりあえず、誘拐の方は一旦これくらいにして君のご友人の件に関して教えて欲しいかな。確か、いつもなら身持ちが堅いのにディーラーに惚れ込んで遊びに行っちゃったんだっけ」


 色々と考え込んでいるうちに話が変わってしまった。慌てて頷き、酔いながらもナイトキャップにもした説明を改めてし直す。


「ええ。そういうこともあるかなとは思ったし直ぐに2人でどこかに行ったから止めなかったのだけど、違和感が拭えなくて」

「そもそもあの子、軽い男性恐怖症で少し体を触れられるのも嫌なのにあの時は全然そんな素振りを見せなかったのよね」

「初対面の男性相手にそうなるものかと考えると今までの付き合いからしてもおかしい気もするし、それにそのディーラーの男と話したのって私がお手洗いに行くために席を外した数分でしかないの」


 改めて説明し直してもやはり不思議だ。いくら話が上手い相手でもそこまで直ぐに男性恐怖症の女性を落とせるものなのだろうか。いやできる人は居るのだろうが正直私から見てあの男はそうは見えなかった。


「なるほど。今そのご友人とは連絡は取れる?」


「さっき確認したけど連絡は入ってなかったわ。こちらから何かを送ったり、電話をかけてはないから楽しんでいるだけならいいんだけど」


「.......一度留守電でも入れておいた方がいいんじゃないかな。その男がどういう輩でも君が別のトラブルに巻き込まれたのは確かだから、連絡はしておいた方がいい」


 それもそうだと思い、断りを入れてから電話をかけたが電源を切っているのか「おかけになった電話番号は電波の繋がらない場所に.......」という定型のアナウンスが流れる。


「.......繋がらないわ。電源が切られているのかも。電源が一日で落ちるとは思えないし」


「邪魔をされたくなくて?それなら君のいう友人なら、一言入れるとかはありそうだけど」


 実際ケイティは割とマメに連絡をしてくれる。プライベートがややずぼらな私とは違うのだ。

 

「そうなのよね.......」


 考えこもうとした私を見て、次の質問へと彼は話を変えた。


「とりあえずそのディーラーを調べる他は無さそうだね。見た目は覚えてる?」


「少なくとも私達より少し年上.......20代後半くらい?金髪で青い目だったのと、凄く顔がいいってくらいね。それ以外だと特徴という特徴があるかと言うと思い当たらないわ」


 顔は覚えているが説明するとなると難しい。アイ・オープナーも私の表情から察したのか、これ以上聞いても厳しそうだと判断したようだった。


「そう。じゃあ場所はストリップの方にあるカジノ?」


「ええ、有名なところの方が安全かなと思って。なるべくホテルに近いところだけで過ごそうとしてたから本来はこちらに来る予定はなかったの」


「うん、それは違いない。この辺.......ダウンタウンの方はあんまり治安がいいとは言えないしね。

 ホテルに近い所だけでってことは、泊まってるホテルのところで遊んでたって感じかな。それとも別?」


 誘拐されそうになったのもそうだがこの辺りに関しては来る時も治安がさほどいいとは思えなかったし実際そうなのだろう。元々来るつもりはなかったから、行くと決めた時点でもっとちゃんと調べてから来た方が良かったかもしれない。


「最初は別のところも行こうって言ってたけど初日だったからホテルに付属していたところね。ミュージアムアイランドって言うところなんだけど」


 ラスベガスには色々とテーマがあるホテルが多く、このホテルもその1つだ。美術館がテーマになっているらしく、贋作ではあるが芸術品や絵画が飾られているホテルで落ち着いた雰囲気とユニークさに惹かれたことで選んだ。


「名前は聞いたことあるな。一旦そちらに実際行ってそういうディーラーがいるか確認してみよう。治安がいいといっても紛れ込んで観光客を狙っている輩がいる可能性も否定出来ないからね」

 

「確認って言っても、店側に聞いても守秘義務とかあるんじゃないの?」


 警察ならともかく、恐らく一般人でしかないはずだ。聞いたところで門前払いをされるのではと思ったが彼は首を横に振る。


「店の人間に聞く必要は無いよ。客に聞けばいいんだ。他の目撃者だっている可能性もある。

 まあ店側もそもそも仕事中に客を連れ込むようなディーラーがいるのは問題だから上手い具合に聞き込みをすれば何かしらの噂は聞けるかもしれないけどね」


 とりあえず詳しいことは現地で聞くしかないだろう、と彼は言いつつ私の方を改めて見る。思わず少し堅い表情の端正なその顔を見つめ返すと、少し笑われた。


「な、何?何かあるなら言ってよ」


「いや、ごめん、違うんだ。改めてこの周辺に関しての話をしようと思っただけで.......さっきも言ったけどこの辺りは治安が昼でもそんなにいいわけじゃない。だからホテルの方に戻るまではなるべく近くにいてくれるとありがたいんだけど、どうかな」


「私も今は一人でいるのは危ないとは思うしむしろ有難いわ。さっきはオーナーさんが距離を離してもいいと言っていたけど状況からして離れたら何が起きるか分からないもの」


 彼の言葉にそう頷くと「そう、ならいいや」とやや穏やかな表情になる。

 その後も軽くケイティや私の職業や交友関係について聞かれたが、これまでラスベガスどころかネバダ州の方に縁はなかったので関連性は低いと判断し、二人でホテルの方に改めて向かうことになった。

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