4.わたしのうた
「あああぁぁぁぁぁ……。」
「もう、Riaが変なことに乗るからですよ。」
「だって、せっかくのチャンスだもん。」
あれから、わたしは勢いで言ってしまったことを後悔していた。
「まあ、一緒にレッスンをしていてわかりますけど、あなたの筋は良いですし、優勝できるかもしれませんよ?」
「Annette……練習付き合ってもらってありがとね。」
「別に構いませんわ。」
あれから、Annetteとは普通に友人になった。バーチャルシステム上では個人情報は明かされないし、明かさないのがルールだが、仲が良ければ明かしてもいいらしい。Annetteは、わたしと同じ高校生。学年も年齢も一緒で、通う学校は少し離れていたが、事務所へのルートは同じ道も多かった。
「弱気になっててどうするのよ……オーディションは明日だっていうのに。」
「明日……」
「レッスンの時、先生もおっしゃっていたでしょう。大丈夫と。」
「……そうだけど。」
「この、ケドケド星人……」
「ケドケド星人?」
「肯定しても、けどけどと……もっと自信を持ちなさいな。」
「はい……」
翌日、わたしは不安の中オーディション会場へ向かった。
「Riaさんですね。こちらに控室がありますので、待機をお願いいたします。」
「はい……」
会場には見たことのあるプロデューサーや、偉そうな人がたくさんいた。ますます緊張してくる。……でも!
「Usagiさんと、約束しちゃったもん。わたしのUsagiさんと歌いたいっていう気持ち、わかってもらわないと!!」
「Riaさん、スタンバイをお願いします。」
「はいっ!」
バーチャルシステムで衣装、歌唱曲を選び、エントリーする。
……すると、浮遊感を感じ、光の道筋が現れた。
「……!所属オーディションの時と同じ!」
光の道筋に合わせて走った。
道筋の向こう側には、ステージが広がっていた。
「また来れた……」
緊張する、でもそれ以上にワクワクしていた。
―・―・―
気が付いた時には、曲が終わっていた。
ほど良い息切れ……聞いていた人たちからの拍手と歓声。
「あ、ありがとうございましたっ!!」
わたしが挨拶と同時に頭を下げると、歓声がさらに大きくなった。
その後、結果発表のために参加者が全員ステージの上に呼ばれた。……正直、結果はいいと思っていた。
楽しかった。わたしのアイドルとしての活動が、これからもっと楽しくなる気がして……それだけで十分だと思った。
「それでは、最優秀賞の発表です!」
誰が選ばれるんだろう……きっと未来のトップアイドルになるような人が選ばれるよね。
選ばれた人の情報、これからチェックしないと。
……なんてことを考えていると、何だか頭上が温かいような気がした。
「最優秀賞は、Riaさんです!!」
歓声が一気に上がった。
「……え?」
「おめでとう!」
「すごくよかった!」
「最高だったよ!」
周囲から祝福の声が上がり、そこでわたしは何が起こっているのか理解した。
「えええええっっ?!?!」