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パートナーは誰ですか??  作者: 海歌月
迷い込んだのはアイドルの世界
19/20

19.あなたがいいから

面談室がすぐに使えるようになり、わたしたちは向き合うように席に座った。

佐倉先生はどんな結果でも受け入れると決めているからなのか、普段より優しい顔をしていた。


「……さて、じゃあ聞かせてもらおうかな。」

「その前に、先生。」

「ん?」

「一つだけお願いがあります。」


わたしは先生だってUsagiだって関係ない。そう伝えるつもりでいた。

……でも、まずはこれだけは確認したかった。


「……ワンフレーズだけ、歌ってくれませんか?Usagiの声で。」

「……は?」

「伝える前にこれだけ気になったんです。Usagiの歌声は、キー調整をしていない気がしました。」

「……よく気づいたね。河内の言う通り、何も調整したり、頼ったらしてないよ。俺は、俺の低い声が嫌い。だから、高い声も出せるようにしたんだ。」

「……嫌いなんですか?」

「自分の嫌いな部分って誰だってあるだろう?」


困った顔をしながら、先生は笑った。

そして、「ワンフレーズだけだからな。」と言ってから、深呼吸をした後に歌ってくれた。


「ー♪」


それは、わたしが大好きなUsagiの声だった。


「……本当にUsagiなんだ。」

「ははっ、ずっとそう言ってるじゃん。嫌だった?」

「……い、嫌なわけないです。だって、わたしは……Usagiの歌が大好きで……だから……ずっとUsagiと……普段の姿で、会いたかった……」

「うん。」

「全く知らない誰かよりも……先生で安心したんです。だから、わたしは先生と……Usagiとこれからも歌いたい。」


はっきりとは言えなかった。……でも、今のわたしの気持ちはちゃんと伝えられた。

先生は驚いた顔をしていたが、少しだけ涙ぐみながら話してくれた。


「……俺も、これからもRiaと歌いたいって思ってた。河内の気持ちがすごい嬉しい。こんな俺がUsagiの正体だけど、これからも『Wonder☆Land』を続けてくれるか?」

「……!はい!わたしのパートナーはUsagiがいいです!」






1ヶ月後……


「「みんな、ただいま!」」


わたしたちはもう一度、ステージに立てた。観客席にはわたしたちの色のペンライトが光り、「おかえり!」という声も歓声から聞こえた。


「……この景色、好きだなぁ。」

「いいよね、この景色。……また見れてよかった。」


初めてステージに立った時よりも息ぴったりなパフォーマンスで、この日のステージでは過去最高と言っていいくらいの拍手と歓声が聞こえた。

気持ちを伝えたことで、お互いの遠慮もなくなった気がする。……そう思えるくらい、楽しいステージだった。


「実はさ、マネージャー以外の誰か1人に男ってバレたら、アイドル辞めるつもりだったんだ。」

「え、もったいない!!」

「もったいない?」

「だって先生もUsagiも綺麗な歌声だから、もったいないなって。」

「ありがとう。……なんか、Riaと話してから昔からあったモヤモヤが取れた気がする。ていうか、Riaが河内って知ってから素が出せて、いつも以上にいいパフォーマンスができる気がする。……ありがと。」

「これからも、何かあったら一緒に乗り越えようね。わたしは大学受験とか就活とかもあるし……」

「なんとかなるよ、1人じゃないんだから。」


ステージの脇で話していると、観客席からアンコールの声が聞こえ始めた。


「さて、アンコールが聞こえてくるけど……どうする?」

「行く!」

「それじゃあ、行こう!」

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