16.絆を深めたいから
ユニットを組んで、『ワンダーランド』としてもアイドルとしても成長できている気がした。
実際にファンは増えたし、観客は満員になるくらいの盛況ぶりだった。
「今日は来てくれて、ありがとう!」
「ありがとう!!」
あれから、わたしはUsagiの本当の姿について聞いていない。見せない理由が、わたしではなくUsagi自身の問題だと聞いて、気にしないように頑張っている。
わたしが今できるのは、Usagiにもっと信じてもらえるように実力をつけて、ついでに勉強や友人との関係も大事にすることだって思った。
「ふう……今日も楽しかった!」
「お客さん、なんだか増えた気がする。」
「うん!」
ライブの後も、今まで通り。
今日もいつものように「おつかれさま」と言って、帰る予定だった。
「……じゃあ、おつかれさまでした!」
「あ。」
「……ん?どうしたのUsagi?」
「あのさ、私まだRiaに本当の姿……というか、普段の姿見せてないよね?ごめん。」
「え?……まぁ、はい。」
「あのね。もし、想像と違ったら……」
「Usagi。」
「へ?」
「わたしは、Usagiがいいです。」
「で、でも……」
「わたしは、Usagiがお兄さんでも、おじいちゃんでも、おばあちゃんでも……Usagiがいい。」
「……そっか。」
気づいたらUsagiは、少しだけ安心したように笑っていた。
「……実は私ね、普段の姿があまり好きじゃないっていうか。身長低めだし、歌う声も……周りと何か違ってて。だから、今まで本当の姿見せるのが怖かった。」
「そうだったんだ。」
「……でも、やっぱりちゃんと見せないとダメだって思った。私たちがもっと息ぴったりで、感動させるパフォーマンス見せるためには、ちゃんと見せないとって思った。」
「え、いいの?」
「……失望しない?」
「しません!!」
「そっか。なら、一緒に帰ろ。」
普段はおつかれさまを言い合って1人で帰る道。……今日は2人で歩いていた。
ちゃんと見せないと……ということは、今日見せてくれるということなんだ。なら、もう一度挨拶しよう。たとえ想像と違ったとしても、それがUsagiなのは変わらないのだから。
システムと現実の境目となる道を通って、システムからログアウトする。通路はいくつかあるので、Usagiは隣の通路からログアウトしていた。
現実の姿……河内藍梨に戻って、Usagiが通ったであろう道の方を向いた。
わたしが話し始めたのと同時に、低い声が聞こえる。
「改めまして、わたしがRia……」
「はじめまして、僕がUsagiの……」
姿を見た瞬間、目が合った瞬間、わたしたちは固まってしまった。