15.迷い道
バーチャルアイドルは、普段とは違う姿で活動できる。
でも、ユニットを組んだり、パートナーになったりすれば……バーチャルでの姿ではなく普段の姿で会う人もいるらしい。バーチャルシステムが起動できない場所でも会ったり、ミーティングしたりするなら、普段の姿を知っておくことは、ある意味では必要なことだったりする。
……でも、ユニットを組んでからこれまで、わたしはUsagiの普段の姿を見たことがない。
「……なるほど。それでマネージャーの私に相談したのね。」
「はい……」
何故、これまでUsagiは普段の姿を見せようとしないのか。
マネージャーなら、普段の姿も知っているはず。
「……ごめんなさいね。私からはUsagiの普段の姿がどんな感じなのか、どんな人なのか、言えないわ。」
「そうですよね。」
もしかして、信用が足りないのだろうか?
それとも……何か教えたくない理由があるのかな?
「……あ、Riaが信用されていないわけじゃないのよ。」
「え?じゃあ?」
「そうね……どちらかというと、Usagiが臆病なのよ。あなたに本当の姿を見せて、嫌われないかって。」
「嫌いになんて……そんなこと、絶対にありません。おばあちゃんだったとしても、年下だったとしても。もし、お姉さんじゃなくてお兄さんだったとしても……わたしは、Usagiがいいんです。」
「うん。」
「……Ria?」
「へひゃあ?!」
「驚かせた?ごめんなさいね。」
「あ、いいえ。」
マネージャーに相談中、Usagiが来たことで話は中断した。
……結局、何もわからなかったな。わかったのは、Usagiが本当の姿を見せたくないと考えていること。
「……。」
ー・-・-
「嫌いになんて……そんなこと、絶対にありません。おばあちゃんだったとしても、年下だったとしても。もし、お姉さんじゃなくてお兄さんだったとしても……わたしは、Usagiがいいんです。」
仕事が早めに終わり、マネージャーとRiaとの打ち合わせ場所へ行くと、Riaはそう言っていた。
性別が違ってもいい。……それはUsagiにとって安心できる言葉であった。
打ち合わせが終わり、Riaは明日までに終わらせたい課題があると帰って行ってしまった。
ミーティングやレッスンを合わせるためにも、本当の姿は知っててもいい。でも、Usagiはそれが怖くてできなかった。
もしも、姿を見てRiaが離れていってしまったら?パートナー解消をしたいと言われたら?
せっかく見つけたパートナーを失うくらいなら……このままの方がいい。
「Usagi。」
「マネージャー、どうしましたか?」
「見せていいんじゃない?Riaは、きっと受け入れてくれる。」
「はい。でも怖くて……。」
「そうよね、ゆっくりでいいわ。タイミングなんて、それぞれだもの。」
Usagiは、心の中で謝りながら……近いうちに絶対に、本当の姿を見せると覚悟を決めた。
「失望しないでね……Ria。」