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パートナーは誰ですか??  作者: 海歌月
迷い込んだのはアイドルの世界
13/20

13.籠を飛び出したいお姫様

「本気で言っているのか?茉姫。」

「はい、本気です。」


 ついに茉姫が父親と話し合いをする日が来た。


 茉姫こと、花井茉姫……彼女の父親は社長をしている。

 そのため、父親であっても忙しく、話がしたいときには事前にアポイントメントを取らなくては、話す時間もないのだった。


「おひいさま……いくら旦那様がおられるからとはいえ、直談判……それも突撃なんて……」

「止めないで爺や。あたしは決めたの。」

「爺やは知っているでしょう?あたしがどれだけアイドルになりたいのか……それを止めなくてはいけない理由も。」

「はい……」

「あたしはもう高校生なの。成人だって近い。箱の中の人形なんて、もう御免なの!」


 爺やは花井家の執事として茉姫のことを見守り、応援してくれる、茉姫の見方でいてくれる人だ。

 ……しかし、応援してくれる一方で、雇用主である茉姫の父親には逆らえず、事務所へ行くことを許してくれなかった。


「行ってくる。」

「……はい。爺やは止めません。爺やも実は見てみたいのですよ、おひいさまのアイドル姿。」

「……!そうなの?」

「はい、おひいさまの今までの努力、合格した時の喜びを知っておりますから。」

「うん。」

「それに、旦那様もきっとお許しをしてくださると思うのです。」


 爺やの付き添いで、父親の書斎へと来た茉姫。

 部屋へ招き入れられ、そこには驚いた顔をした父親がいた。


「お父様、お話が合ってきました。」

「……アポを取らないでくるなんて珍しいな。急用か?」

「はい。」

「何だね?」

「アイドル活動への許可をいただきに来ました。」

「……本気で言っているのか?茉姫。」

「はい、本気です。」


 数秒間、沈黙が続いた後に口を開いたのは父親だった。


「……なぜそこまでアイドルにこだわる。」

「最初はアイドルになることが夢でした。……でも、夢で終わらせたくない。」

「歌なら聖歌隊でも歌っているのではないか?」

「聖歌隊に入ったのは、アイドルになりたいからです。」

「……。」

「お父様、あたしを守ってくれているのは感謝します。……でも、やりすぎです。少しでも怪我をしないと、埃まみれになってみないと……あたしは何も知らないまま大人になってしまいます。冒険、してみたいんです。」

「……。」

「バーチャルシステムは、普段のあたしとは違う姿なんです。本名も隠し続けられる。……迷惑なんて掛からないしあたしはあたしらしくいられるの!」


 夢を現実にしたい、強く訴え続けた結果……茉姫の父親は諦めたような、しかし嬉しそうに笑った。


「茉姫、成長したな。」

「え?」

「そうだよな……少し守りすぎか……」

「……わかってくれたなら。」

「可愛い子には旅をさせよと言うもんな。」

「……可愛くなくてもさせるべきだと思います。」

「茉姫は可愛いから……離したくなかったんだ。」

「そう、ですか。」

「わかった。でも、何かあればすぐに禁止するからな。」

「……!はい。」

「学業、続けるのであれば聖歌隊も、疎かにするな。完璧にやれとは言わないが、疎かにしたらその時は活動を認めない。」

「はい。」


 書斎から出ると、爺やが待っていてくれた。


「おひいさま……」

「爺や!お許し、もらえました!」

「……!やりましたね!」

「うん!」

「あ、そうそう。お客様がお見えですよ。」

「お客様?」

「茉姫!許してもらえたの?!」

「永遠ちゃん!!」

「おひいさま、永遠様。祝杯に、紅茶でもいかがでしょう?」

「「はい!!」」


 また一人、新たなアイドルの物語が幕を開ける……

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