11.味方なのかもしれません……
職員室から逃げようとした瞬間、佐倉先生に言われた。
「河内さ、最近何かあった?」
そこから数秒、わたしは固まってしまった。
「な、ぜ……なぜそのように?」
「そうだなー。最近、課題に提出時間が遅くなった。」
「期限は守ってますけどね。」
「それから放課後、最近学校にいないよな。」
「用事がありまして……」
「あと、なんか避けられている気がする。」
「それは気のせいですね。小説でも読みすぎたのでは?」
「ズバズバ言うなぁ……」
出入口付近で話していれば、職員室の中にいた他の先生に招かれ、問題の質問をしたり進路相談したりする席に座らされた。
「正直、河内の課題の途中式、丁寧だから毎回楽しみにしてたんだ。河内がすぐに解いて持ってきてくれたから、俺自身も勉強になってたんだよ。」
「それは……すみません。」
「河内が忙しいなら仕方ないけど。なんか最近、授業中も上の空というか……考え事が多いんじゃないか?」
「そ、そんなことは……」
「この前は、体育館の隅で……なんか筋トレしてたよな。」
「……!!なぜそれを?!」
「偶然、通りかかったんだよ。体育館の扉も開いてたぞ?」
ここまで見られていたなんて……
なら、少しくらい相談してもいいのかもしれない。
アイドル……とは言わずに、趣味……?よし、趣味でいこう。
「実は最近、友人たちと新しい趣味を見つけまして……」
「あ、そういうこと。」
「でも、友人の1人がその趣味を楽しめない状況になっていて……」
「ふーん……なるほど。」
「その子のために、何ができるか考えたいんですけど……そうしているうちに、わたし自身が成長の機会を逃している気がして……」
実際、わたしはUsagiよりもパフォーマンスも歌も……ファンも負けている気がした。
だからこそ、ユニットを組み始めてからもっと頑張らないとと思いながら、どうすればいいのか分からなかった。
「……実はさ、俺の知り合いも何か悩んでる気がしてさ。」
「え?」
佐倉先生は何かを思い出しながら話し始めた。
「そいつさ、少し前は目を輝かせながら努力して、それがすごくキラキラしてて……俺も頑張ろうって思えた。」
「……それで、その人は?」
「最近、眉間にしわが寄ってる。」
「あぁ……」
「変なところで躓いて、ミスもする。」
そういえば、わたしもミスするな……
変な計算ミスもするし、歌詞を間違えたりもするし……
「そいつと河内が同じというわけじゃないけどさ……河内。」
「はい。」
「そんなに頑張らなくて、いいと思うよ。」
「へ……?」
「俺は頑張れ、頑張れっていうけれど、河内は頑張りすぎだと思う。締め切りの課題はもう提出されているし、今日は何もしないで一回休んでみなよ。」
「え、でも。」
「寝ると、頭の中も整理されるかもしれないだろ?」
「はい。」
「……で、休んだらまた頑張ればいい。困ったら俺にでも相談したらいい。担任じゃないけど……年齢も近いし、先生なんだから。」
「え……」
「何?」
「先生がそう言うなんて……」
「当たり前だろ?」
意外な人が味方なのかもしれません……
でも、なんだか心強い気がしました。