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55話 

 その日、ロッティは久しぶりに孤独を味わっていた。

 隣にいつも一緒にいてくれた彼女はいない。

 真っ暗な森の中、腰に提げられた重い銃を軽くなでる。ともに旅をしてきた大切な友人とその母の形見は、ロッティにさらに重くのしかかった。

 見えないが、周りには瑞穗ノ国の侍たちがいるのが感じ取れる。彼らをどこまで信用していいかはわからなかったが、少なくとも信頼できるようなメンタルではなかった。

 木にもたれかかりながら、腰のドラグーンを抜いて両手で握り締めて胸に抱きちいさくつぶやく。

「……私にも出来る。ウェンディ見てて、私、ひとりでもできるから…。」

 ソフィ初めての単独討伐任務。敵は以前にも出てきた狼の魔獣らしい。以前住吉から京に来る途中にも出会った相手だ。以前と違うのは、数が多い事とより狂暴だということ。

 魔獣が狂暴化する原因は複数あり簡単に特定はできず、出来ることといえば殲滅することだけだった。

 気が付くと、すこし離れたところから侍の怒号が飛んでいるのが聞こえ、自分の方にも何かが近づいてきているのが分かる。

 手に持ったドラグーンを腰後ろのホルスターに戻し、左右のホルスターから自分のセカンドネイビーを抜くと、ハンマーを起こして魔力を込めた。



 気が付いた瞬間、さっきまでの明るい青空から急に暗い板張りの天井が目につき、すぐに飛び起きた。心臓の鼓動が激しく妙に生々しかった。

「はぁ…はぁ…はぁ……。」

 飛び起きてすぐ見覚えのあるたたみ張りの部屋を見渡した。少し広めの部屋に外にはかがり火らしき明かりが揺らめいているのが見える。聞こえる音は焦り走り回る巫女や宮司たちの声が聞こえていた。

 枕もとを見ると、自分の刀が両方ともおかれそれと弾が装填されていないシリンダーがいくつかおいてある。だがシリンダーがあるにも関わらずドラグーン本体とホルスターが見当たらなかった。

 ぼーっとまわりを見渡していたが、ふとロッティがいないことに気が付きすぐに探知魔術を発動した。瞬時に周辺の気配が分かる久しぶりの感覚に驚いた。

 そうだ、最後のころは魔術もろくに使えず剣術しかできなかった。

 ロッティの魔力はすぐわかる。そしてそれを取り囲む魔獣の気配と魔力も。

 何も考えず気が付いた時には枕元に置いてあった打刀を手に取り立ち上がって障子を開けて庭に飛び出していた。

 周りの巫女や宮司があげる驚き声を遠くに感じながらずいぶんと久しぶりに感じながら詠唱を始めた。

「…≪無系統・筋力強化≫≪風系統・超加速≫!!」

 体は軽い。最後に体を軽く感じたのはいつだっただろう。いや、いつでも体は重かった。ソフィのところで駆けた時とは違う体の軽さを感じながらも、心の中は暗いまま。

 民家の屋根や蔵の上を走り、一直線にロッティの方に走る。遠くの方から侍たちの怒号に交って銃声が聞こえる。この国で銃を使っているのはロッティしかいない。

 森に入り木の枝を飛び移りながら進んでいると銃声と同時にウェンディの耳の近くを弾丸がとびぬけていった。弾丸が銃声のすぐ直後にウェンディまで届く。

 近い。

 ウェンディは左手に握った刀の柄へ右手を重ねた。



 狼の群れはとりあえず退けた。

「はぁ、はぁ。」

 暗い森の中で灰色の袴を着たきれいな金髪の少女が膝をついて息を上げている。

 ウェンディと2人の時は感じなかった息苦しさ。思ったところに魔術を使えない。思った方向に攻撃が出来ない。

 とりあえず左手の銃のシリンダーを交換しながらロッティは噛まれた右すねの出血具合を見る。かなりの勢いで血が流れだし痛みが強くなってくる。

 右手の銃を一度しまって懐に入れていたたすきを取り出し傷をきつく縛って血を止める。

「っつ~…。」

 痛みに声が漏れそうになりながら血を傷の応急処置をするも、白い布に真っ赤な血がにじんできている。きつく縛ったがやはり止血はしきれていない。

 周りの侍たちがどれほどの距離にいるかわからないからむやみに魔術を使えない。探知魔術を使おうにもこれだけの数に襲われていれば発動する間もない。

 顔を上げようとしたとき、狼の唸り声が聞こえとっさに右腕を勢いよく振り上げて風の刃を飛ばした。これが詠唱も媒体もなしにロッティが魔術を発動した初めての瞬間だったが、とっさのことだったせいか本人も気が付かなかった。

 放たれた風の刃は狼を真っ二つに切り裂いてそのままその向こうの木の枝を切り落としそのまま空に消えた。

 またすぐに狼の声が聞こえ左手のセカンドネイビーの引き金を引くが、弾丸が当たったのは先頭の一頭でその後ろにいた3頭の狼が襲い掛かってきた。

 牙を立てて噛みついてきた狼をとっさに左腕で防いだ。それと同時に急いで右手で腰のセカンドネイビーを抜こうとするが、リロードをしていない。

 一瞬ためらいながらも、そのさらに後ろにあるドラグーンを握ってハンマーを起こし目の前の狼に打ち込んだ。

 セカンドネイビーとは比べ物にならないリコイルをどうにか受け止めると、腕にかみついていた狼は後ろに吹き飛んでいた。こんなにも違うのかと驚きながらも、すぐに左手のセカンドネイビーのハンマーを起こして狼たちに向けて乱射した。

 牽制のつもりで撃った弾丸は一発だけ命中するがそれ以外は木々にあたるかどこかに飛んで行った。

 無理な体勢で銃を撃ったせいでッティは久しぶりに孤独を味わっていた。

 隣にいつも一緒にいてくれた彼女はいない。

 真っ暗な森の中に提げられた重い銃を軽くなでる。ともに旅をしてきた大切な友人とその母の形見は、ロッティにさらに重くのしかかった。

 見えないが、周りには瑞穗ノ国の侍たちがいるのが感じ取れる。彼らをどこまで信用していいかはわからなかったが、少なくとも信頼できるようなメンタルではなかった。

 木にもたれかかりながら、腰のドラグーンを抜いて両手で握り締めて胸に抱きちいさくつぶやく。

「……私にも出来る。ウェンディ見てて、私、ひとりでもできるから…。」

 ソフィ初めての単独討伐任務。敵は以前にも出てきた狼の魔獣らしい。以前住吉から京に来る途中にも出会った相手だ。以前と違うのは、数が多い事とより狂暴だということ。

 魔獣が狂暴化する原因は複数あり簡単に特定はできず、出来ることといえば殲滅することだけだった。

 気が付くと、すこし離れたところから侍の怒号が飛んでいるのが聞こえ、自分の方にも何かが近づいてきているのが分かる。

 手に持ったドラグーンを腰後ろのホルスターに戻し、左右のホルスターから自分のセカンドネイビーを抜くと、ハンマーを起こして魔力を込めた。



 気が付いた瞬間、さっきまでの明るい青空から急に暗い板張りの天井が目につき、すぐに飛び起きた。心臓の鼓動が激しく妙に生々しかった。

「はぁ…はぁ…はぁ……。」

 飛び起きてすぐ見覚えのあるたたみ張りの部屋を見渡した。少し広めの部屋に外にはかがり火らしき明かりが揺らめいているのが見える。聞こえる音は焦り走り回る巫女や宮司たちの声が聞こえていた。

 枕もとを見ると、自分の刀が両方ともおかれそれと弾が装填されていないシリンダーがいくつかおいてある。だがシリンダーがあるにも関わらずドラグーン本体とホルスターが見当たらなかった。

 ぼーっとまわりを見渡していたが、ふとロッティがいないことに気が付きすぐに探知魔術を発動した。瞬時に周辺の気配が分かる久しぶりの感覚に驚いた。

 そうだ、最後のころは魔術もろくに使えず剣術しかできなかった。

 ロッティの魔力はすぐわかる。そしてそれを取り囲む魔獣の気配と魔力も。

 何も考えず気が付いた時には枕元に置いてあった打刀を手に取り立ち上がって障子を開けて庭に飛び出していた。

 周りの巫女や宮司があげる驚き声を遠くに感じながらずいぶんと久しぶりに感じながら詠唱を始めた。

「…≪無系統・筋力強化≫≪風系統・超加速≫!!」

 体は軽い。最後に体を軽く感じたのはいつだっただろう。いや、いつでも体は重かった。ソフィのところで駆けた時とは違う体の軽さを感じながらも、心の中は暗いまま。

 民家の屋根や蔵の上を走り、一直線にロッティの方に走る。遠くの方から侍たちの怒号に交って銃声が聞こえる。この国で銃を使っているのはロッティしかいない。

 森に入り木の枝を飛び移りながら進んでいると銃声と同時にウェンディの耳の近くを弾丸がとびぬけていった。弾丸が銃声のすぐ直後にウェンディまで届く。

 近い。

 ウェンディは左手に握った刀の柄へ右手を重ねた。



 狼の群れはとりあえず退けた。

「はぁ、はぁ。」

 暗い森の中で灰色の袴を着たきれいな金髪の少女が膝をついて息を上げている。

 ウェンディと2人の時は感じなかった息苦しさ。思ったところに魔術を使えない。思った方向に攻撃が出来ない。

 とりあえず左手の銃のシリンダーを交換しながらロッティは噛まれた右すねの出血具合を見る。かなりの勢いで血が流れだし痛みが強くなってくる。

 右手の銃を一度しまって懐に入れていたたすきを取り出し傷をきつく縛って血を止める。

「っつ~…。」

 痛みに声が漏れそうになりながら血が流れる傷に布を当てて止血をするも、白い布に真っ赤な血がにじんできている。きつく縛ったがやはり止血はしきれていない。

 周りの侍たちがどれほどの距離にいるかわからないからむやみに魔術を使えない。探知魔術を使おうにもこれだけの数に襲われていれば発動する間もない。

 顔を上げようとしたとき、狼の唸り声が聞こえとっさに右腕を勢いよく振り上げて風の刃を飛ばした。これが詠唱も媒体もなしにロッティが魔術を発動した初めての瞬間だったが、とっさのことだったせいか本人も気が付かなかった。

 放たれた風の刃は狼を真っ二つに切り裂いてそのままその向こうの木の枝を切り落としそのまま空に消えた。

 またすぐに狼の声が聞こえ左手のセカンドネイビーの引き金を引くが、弾丸が当たったのは先頭の一頭でその後ろで3頭の狼が襲い掛かってきた。

 牙を立てて噛みついてきた狼をとっさに左腕で防いだ。それと同時に急いで右手で腰のセカンドネイビーを抜こうとするが、リロードをしていない。

 一瞬ためらいながらも、そのさらに後ろにあるドラグーンを握ってハンマーを起こし目の前の狼に打ち込んだ。

 セカンドネイビーとは比べ物にならないリコイルをどうにか受け止めると、腕にかみついていた狼は後ろに吹き飛んでいた。こんなにも違うのかと驚きながらも、すぐに左手のセカンドネイビーのハンマーを起こして狼たちに向けて乱射した。

 牽制のつもりで撃った弾丸は一発だけ命中するがそれ以外は木々にあたるかどこかに飛んで行った。

 無理な体勢で銃を撃ったせいで体勢を崩し、地面に手を突いた。

 姿勢を崩しながらも顔を上げると、さっき二頭倒したことで残り1頭のはずの狼が一気に6頭に増えていた。

 狼の唸り声だけが響く森の中、気が付けば周囲で聞こえていた侍たちの声は聞こえなくなり途端に静寂に包まれ、同時に左腕の傷の痛みが急激にリアルに頭に届き手の力が抜けて左手のセカンドネイビーが地面にあたる音が響く。

 ドラグーンを握った右手を左腕の傷に当てて傷を覆うが血は出続ける。

 魔術で殲滅するかドラグーンで行くかを考えるが、この距離で広範囲の魔術を使うと自分もまきこまれかねず範囲を狭めると全体を攻撃しきれるか怪しい。足が満足に動かない今広範囲の魔術をよけられる気もしないし魔術で自分を先に吹き飛ばしてからにしても着地ができるはずもない。

 悩んでいる間にも狼たちはじりじりと近づいてきている。

 動き出そうとする直前、一番前の狼の近くの地面の土が蹴り上げられたと同時にその狼の体が一瞬で真っ二つになる。

 切り裂かれた。

 目の前の狼が地面に倒れた瞬間、ロッティの目の前に刀をを持った少女が現れた。

 刀を逆手に持ち顔の前で構え右足を横にまっすぐ伸ばし左足をまげて姿勢を低く左手を地面に添えた人影は、真っ白い白装束に白の足袋を履き黒い髪をなびかせている。

 人影は顔を上げ狼を睨みつけた。それと同時に人影の濃い茶色の髪はじんわりと色が変わり、銀髪に変わった。

 ゆっくりと立ち上がり、両腕をだらしなく下にたらしながら閉じた瞼を開くと、中から赤と桜色のグラデーションがかった瞳がかがり火の光に照らされて現れる。

 どこか見覚えのある輪郭に感じる気配はかなり違く感じるが全体の雰囲気はロッティの知るものだった。

「……ウェンディ?」

 恐る恐る出るロッティの言葉に、少女はゆっくり後ろを振り向いた。

 髪色は違う、瞳の色も。でもその輪郭と雰囲気は間違いなく彼女だ。

「…久しぶり。どれくらいぶりかわかんないけど、無事?」

「とりあえずは無事かな…。」

 自身に回復魔術を使いながらゆっくり立ち上がるロッティの横でウェンディが探知魔術を使うと、周囲に人間の反応はなく、ゆっくりと魔獣の群れたちが向かってくるのが分かった。

「ロッティとりあえずまだ戦えそう?」

「…うん。大丈夫。」

 戸惑うロッティをよそに、ウェンディはゆっくり手に握られた刀を構えなおして前を向く。

 後ろでセカンドネイビーのシリンダーを外し装填されたシリンダーをもう一度つけている音が聞こえ、正面からは狼の群れがゆっくりと狼の群れが森から出てきた。

「さぁロッティ、背中は任せたよ。」

「任せて…!」

 刀を携え、ウェンディは狼の群れに飛びこんだ。

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