45話 ウルマ王国
ゲルマニアを出て1年と6ヵ月と3週間。
ウェンディ達はウルマ王国の目前へと迫っていた。
少しあれる海の上を帆走する中規模の漁船の上で、漁師たちの邪魔にならない様に操舵室の端っこで海の方を眺めていた。
フォルモサの漁師たちは一度海に出ると数日漁をしてから戻るらしく、その途中でウルマの近くを通るとのことで、途中で降ろしてもらうことになった。
漁船の上では特に何かが起こることもなく、そのままウルマ王国の港に入港した。
港に降り立つと、今までの国の雰囲気とはまるで違う雰囲気の町が広がっていた。赤い屋根に低い街並みが広がりながら、奥には赤い柱の門なども見える。
土や石造りの建物が多かったライアンや、木でできた家がほとんどだったホクレア。細い道に小さな2階建ての家が多く並んだフォルモサの街並みとも違い、1階建ての広々とした家が生垣や石垣で囲われ、真ん中に大きな道が通りその周りは細い路地が並んでいた。
「へ~こんな感じの街なんだね。なんか昨日までいたフォルモサとも全然違う文化って感じだね。」
「そうだね。じゃぁとりあえずここから瑞穂ノ国の方まで行ける船か何かが無いか探そう。」
「それよりも先にご飯にしない?おなかすいちゃった。」
「そうね。じゃぁご飯屋さんを探そうか。」
漁船の船長に別れを告げて出航を見送ってから、町の中を散策した。
港町からしばらく歩くと、おそらくこのウルマ王国の城である赤い見た目の城が見えてきた。
周りには帯刀している武官のような人物や、入口には鎧を身に着け槍を持った兵士が立っている。
「ここがこの国の王城なのかな。兵士がいっぱいいるし。」
「武官だね。前になんかの本で読んだことがある。東洋の大陸国家やそこと貿易をしている小さな島国の軍人は皆武官と呼ばれるらしい。」
本当はウソだ。
この知識は前世の記憶だ。
「この国は情報では瑞穂ノ国と貿易をしているはず。とりあえず暇そうな武官とか文官に聞いてみよう。」
「その前に、この国の言葉を覚えようよ。フォルモサは統一語話せる人が結構居たけど、この国の言語さっきから全然わかんないし。」
「それもそうだね。」
2人は近くにあった古本屋に入ると、この国の本を何冊か購入しその店の店主に読み方を教わろうと、どうにか伝えた。老人の店主は、貿易国家の古本屋名だけあり統一語も少し話せたため、話が通じていろいろな言葉を教えてもらった。
教わった言葉でどうにかこうにか宿をとると、部屋の中で古本をいろいろ読んでウルマの言葉を頑張って理解した。
「ねぇウェンディどう?理解できそう?」
「私は結構理解できてきたかも。」
「お、じゃぁここからはウルマ語で行こうか。」
「いいよ。」
ウェンディたちは、そこからウルマの言葉で話し始めた。
数日間宿にこもって本を読んだりお互いに話したり、宿の人に練習に付き合ってもらったりして、ようやくある程度は話せるようになった。
1週間近く部屋にこもって覚えた言葉を使い、茶屋に入って茶や茶菓子を頼んだ。
茶色いお茶を飲みながら、花ぼうるとくんぺんと呼んでいた菓子を食べる。
すると隣のテーブルに偶然文官らしき格好の音たちと女官たちが座った。
少し様子を見てから、意を決して話しかける。
「少しいいかな。」
「ん?なんだ?あんたら。」
「子供かしら。でも2人ともこの国の人っぽくないわね。」
「私たちは欧州、つまり大海を超えた大陸のさらに向こうの海を越えた先にある国から旅をしてきた。この国から北にある瑞穂ノ国に行きたい。交易船か何かないかな。」
少し片言のウルマ語で、官たちを相手に話しかける。
文官や女官たちは暗いブルネットのウェンディと明るいブロンドのロッティを見てから、すぐに教えてくれた。
「瑞穂ノ国は、現在他国との貿易を一切絶っている。向こうの言葉で、鎖国というらしい。下手な手段で入ることは不可能だろう。しかし、この国からはよく交易船がサツマ藩と貿易を行っている。その船に乗ることが出来れば、おそらくは入れるはずだ。」
「交渉するなら直接船員に言うのではなく、護衛として乗り込むのがいいだろう。片道のみの契約にでもしていれば、現地で降りることも可能だろう。以前それで入国をした人間が居たと聞いたが、その後の事は知らない。港にある交易品交換所に行ってみるといい。」
「そこまで知れれば、大丈夫だ。どうにかしてみる。」
茶屋を出た後は、助言に従い港町の交易品交換所の扉をたたいた。
数日後、ウェンディ達は独特な形の船の上に立っていた。護衛として船に乗り込むことに成功したのだ。
交換所の職員に護衛として瑞穂ノ国に渡りたいといったところ、腕試しとして2人ともウルマの武官と戦い、2人とも勝利したことで腕を認められたという流れだ。剣だけの武官に対しウェンディは刀一振りで戦ったのに対し、ロッティは魔術で勝利した。何か卑怯に見えるが、ロッティは剣術も体術も使えないため仕方がない。
「ウェンディ、ようやくだね。ウェンディの目指していた国。」
「うん。母さんのこの刀を創った国。銃を創った国は、とても広くてとても面白い国だった。いい人もいればとことん卑怯な人もいた。優しい魔族もいれば悪い人間もいた。じゃぁこの刀を創った国は、どんな国なんだろう。」




