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25話 レッサードラゴン

「いたよ。あれじゃない?」

 クインシー北東部を、4人で歩いていたウェンディ達は、木陰から10数人で移動中のパーティを見つけた。

 ウェンディ達3人はヴォルフ達のパーティやシエラをはじめとする新人冒険者の顔も知らなかったが、カルノーを連れてきてよかった。町を出るパーティを簡単に見つけることが出来た。

 しばらくパーティが草原を移動するのを離れて見守りながら、ようやくギガントフロッグの群生地に到着し、連携して倒しているパーティをしり目に、4人は少し離れた木陰で休憩しながら見守っていた。

「へ~。案外強いんじゃない?あのヴォルフとかいう冒険者。」

「情報は聞けなかったけど、結局冒険者とか戦士なんかは戦ってるところを見るのが一番情報を得る方法だしね。」

「ウェンディ、この辺って魔獣とかどうなの?」

 フードをかぶったままリリーが周りを見渡し、周りに魔獣が見えないことから少し心配しているようだった。

 木に持たれながら、リリーの方に首を向けたウェンディが、探知魔術を使って周りの魔獣を探す。

「う~ん。あそこのギガントフロッグ以外にはそこまで特筆すべき魔獣は…。あいやちょっと待って。1キロくらい東の林に、強い魔獣がいる。それも複数体。まぁ魔獣はこっちに気付いてないみたいだけど、ここは草原だからね。もし1体でも気づいたら、ヴォルフ達は殺されるかもね。」

「おいおい!そいつこっちに来ないよな?」

「さぁ。魔獣の考える事なんてわからないからね。こっちに興味が出てくるかもしれないし、そもそも移動の遅いタイプの魔獣かもしれないし。最悪私たちが行くから大丈夫だよ。どちらにしろ、強い魔獣がいるんだ。あのパーティが帰り始めたら、そっちの調査に向かうよ。あ、カルノーは先に戻ってても大丈夫だからね。」

「……。」

 そこまで話し終えると、地面に座っていたロッティの隣に座ると、そのまま膝の上に頭を乗せた。

「こんなにいい天気でいい気温で、しかもこんないい木漏れ日の下にいるんだよ。眠くなっちゃうよね。」

「そうだよね~。私もお昼寝したくなっちゃう。」

「ごめんね膝借りちゃって。あ、太ももかな?」

「いいよ。身体起こしてた方が風が気持ちいし。」

 2人がイチャイチャしている間に、カルノーは少し離れたリリーに近づいた。

 フードをかぶったリリーは、木に寄りかかって風を感じていた。

「…なぁ、リリーだっけ。一つ聞いていいか?」

「……ん?なに?」

「お前たち3人って何者なんだ?リリーはなんとなく、人間じゃない感じがする。多分魔人かなんかなんだろう。でもあの2人は人間だろ?一見するとただの子供にしか見えないけど、一緒にいるとわかる。あの2人は強い。ロッティからは並外れた魔力を感じるし、ウェンディは研ぎ澄まされた剣士から感じる視線の動きを感じる。以前一緒にパーティを組んでいたやつと同じ、いやアイツよりも何倍も強い。あんな少女がなぜ…。」

「う~ん。まぁいいかな。お察しの通り、私は魔人よ。だけど戦闘向けの魔術なんて使えないし、戦闘の助けにはならないけどね。」

 そういってリリーはフードを取る。

 フードの下から現れた角を少し撫でながら、話を続ける。

「あの2人には、奴隷商から助けてもらったんだ。まぁ私は故郷に戻れるすべが見つかるまでの同行って感じ。あの2人はなんでも一緒に欧州から来たんだって。」

「なるほど、旅人なんだなあの2人は。」

 うたた寝しているウェンディとロッティを眺める。

 遠くの方で戦っているヴォルフ達は、ギガントフロッグに少し苦戦している。

 ギガントフロッグは強力な魔獣ではなく、オブシディアンランクでも数人で挑めば1体倒す分には問題なく、ブロンズランクになれば1人でも勝てるくらいの相手。

 とはいえ、発生数が多い今回の場合、ブラスランクの冒険者集団でも苦戦を強いられる。

 どうにかギガントフロッグを撃退し、ギガントフロッグ達は逃げていく。

 逃げたカエルたちを追うようにして、ヴォルフ達は駆け足で東に足を向けた。

「ん?」

 探知魔術でそれに気づいたウェンディが起き上がってヴォルフ達を見ると、東の森に向かって突っ込んでいく。

「あ~まずい。あっちに行っちゃった。あの方向は大型魔獣がいる。」

「ちょ、それまずじゃないか!」

「そうだね。私たちも移動しようか。」

 ウェンディは起き上がると、懐の煙管を出して火をつけながら走り出す。

 カエル達が森に到達した瞬間、地響きと同時に大型の魔獣が飛び出して来た。

「あ~ダメだったかぁ。引いてくれ頼む…。お前たちじゃ勝てないぞ……。」

 ウェンディの願いとは裏腹に、驚きでヴォルフは地面に尻もちをついてしまった。

 出てきた魔獣は、赤い表皮と二足歩行に小さな前足。そして翼のないドラゴン。

「…レッサードラゴンか。しかも数十体。ロッティ!炎障壁(フレイム・ウォール)!」

「おっけー!≪無系統・付与魔術≫≪火系統・炎障壁(フレイム・ウォール)≫!」

 腰から銃を抜き、弾丸に付与してハンマーを起こして引き金を引く。

 魔術の付与された弾丸は飛びながら魔法陣を発生させ、レッサードラゴンの目も前で破裂し、炎の壁を形成する。

「なんなんだよ今度はぁ!!」

 ヴォルフが叫びその場で腰を抜かし、パーティメンバーたちも固まってしまっている。

 もう歩いて行ける距離になり、少しずつスピードを落としていく。カルノーはまだ追いつけていない。

 固まっている冒険者たちの横から話しかける。

「動けるんなら逃げた方がいい。あの魔獣は君たちでは勝てないよ。」

 警告をしながら、ウェンディは左手で銃を持ち右手で刀を持つ。ロッティは右手に銃を握ったままそのあとに続く。

 リリーは一歩後ろで見守っている。

「な、なんだお前ら!ガキが来ていいところじゃねぇぞ!!」

「シエラ!!!」

 ヴォルフが叫ぶと同時に、追いついてきたカルノーがシエラの名前を呼んだ。

 叫んでいたからヴォルフはすぐにわかったが、カルノーが叫び表情が変わったことでようやくどれがシエラかわかった。もともと旅僧侶の格好をしていたのは1人しかいなかったが、いまいち確信が持てなかった。

「カルノーさん!なんでこんなところに…。」

「……。」

 よく考えれば、特に理由がないのにつけてきたのは確かに変なやつだ。ヴォルフなんかよりもよっぽど信用できない。

「…この3人は、少し前に町に入った旅人なんだ。この近くで強力な魔獣を見たって聞いて、この地域を指定されていたクエストを君たちが受注したことを知ってすぐに追っかけてきたんだ。」

 まぁそのこたえなら不信感は減るかな。

 私たちも乗ってやるかな。

「戦闘がめんどうで迂回したんだが、最初から討伐してからくればよかったね。」

「あの時さっさと町に入ってベットで休みたいって言った私が悪かったね。」

「待てよ!お前らはなんなんだよ!旅人って、ただのガキだろ!!」

 ヴォルフがいまだ叫ぶが、炎障壁(フレイム・ウォール)を突き破って、レッサードラゴンが6体飛び出してくる。

 パーティメンバーの女子や、シエラたちの悲鳴が響くが、ウェンディとロッティは瞬時に体を翻して攻撃態勢に入る。

「≪火系統・付与爆炎弾≫≪火系統・火炎剣≫!」

「≪火系統・貫徹爆裂弾≫!」

 ウェンディは刀で2体の首を斬り飛ばしながら、左手の銃で1体の頭部を吹き飛ばす。

 ロッティが撃ち出した弾丸はレッサードラゴンの頭部を貫通すると同時に破裂して傷口をえぐり、最初の1発で2体倒しもう1発撃って最後の1体を倒す。

 6体のレッサードラゴンの死骸が周囲に転がり、おびえる冒険者たちを無視してロッティが炎障壁(フレイム・ウォール)を解除する。

 今まで隔離されていた向こう側には、20に届く数のレッサードラゴンがうごめいていた。

「な、なんだこれ……。」

 ヴォルフは精神が限界になったのか、小便を漏らしながら気を失った。

「シ、シエラ!」

 カルノーは、震える足を押さえつけながら剣を抜いてシエラの前に立った。

「カルノーさん!」

「シエラ、絶対そこを動くなよ…。」

 かっこつけてシエラを守ろうとするが、手に握った剣の切っ先はプルプルと震えていた。

 後ろを横目で見てから、ウェンディとロッティはレッサードラゴンの方を向き直る。

「かっこいいじゃんカルノー!でも、あいつらは私たちに任せな!」

「カルノーこそそこを動かないでね。」

 ウェンディは足を踏み込んで、走り出す。

「≪無系統・思考加速≫≪無系統・筋力強化≫≪風系統・超加速≫!!」

 ウェンディが高速でレッサードラゴンを切り裂き少し離れたレッサードラゴンには銃弾を放ち、ロッティは元の位置から弾丸に魔術を付与して貫通させながら一気に倒していく。

「6!」

「私は7だよ!」

 どんどんと倒れていくレッサードラゴンを見ながら、冒険者たちは呆然としている。

 剣を構えていたカルノーも、気づいたら剣が下がっていた。

「…すごい。」

「本当に子どもなのか……。」

 ボソボソとつぶやいている中、パーティメンバーの1人がつぶやいた。

「……もしかしてだけどよ。風のうわさで聞いた冒険者、あいつらなんじゃないか?」

「…それってあれか?史上初のミスリルランク到達者の2人組。」

「そうそう。確か、ガンフェンサーとガンズウィッチ。噂で聞いた2人の戦闘スタイルと、似てる気がするんだよ。」

 冒険者たちのそんな話声を聞いて、2人と面識があり、一緒に来たカルノーの後ろに隠れていたシエラがカルノーに声をかけた。

「ねぇ。あの2人って、本当にミスリルランクの冒険者なの?」

「わからない。リリー、本当なのか?」

「さぁ。私はあの2人が冒険者としてどんな活動をしてるかまでは聞いてないの。」

 リリーはほかの人間がいる場ではそっけなく少ししか話さない。

 みんながリリーの方を向くが、リリーは何も話さない。

「やめてあげて。その子は人見知りなの。」

「質問には私たちが答えるよ。」

 レッサードラゴンの殲滅が終わり、2人が戻ってきた。

 炎障壁(フレイム・ウォール)やそのほかの戦いのせいで発生した強風でなびく2人の服の首元からは、普通の銀とは違う透き通った白に近い聖銀の輝きを放ち、【MITHRIL】と刻まれたネックレスが見えた。

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