22話 クインシー
ゲルマニアを出て1年と4か月3週間。
3人は、食料調達やこのあたりの地図をミシシッピ川ほとりの街クインシーを訪れていた。
「ロッティ。地図はこれでいいかな。」
「そうだね。周りの街も乗ってるし、地形もちゃんと書かれてるからそれでいいかもね。」
測量屋から出てくるロッティとリリーに、1人の少女が近寄ってくる。
「ロッティ、リリー。お待たせ。」
「ウェンディ!ギルドの方はどうだった?」
「すごかったよ。流石フロンティアなだけあって冒険者の数も多いし、ギルドと提携してる宿屋の数もおおい。同じ国のギルドだからニューモクムで登録したギルドカードも使えたし、仕事もできるよ。」
「じゃぁしばらくここで休息してから行こう。」
「そうだね。じゃぁ宿屋を探しに…。」
3人で町を歩いていると、建物の陰から路地を覗いている剣を差した太った男を見つける。
ウェンディがじっと見ていると、ロッティが目線の先に気づいたのか、肩をたたいてくる。
「どうしたの?あの人、知ってる人?」
「ん?あ、いやそうじゃないんだけど…。」
「気になる?」
「うーん。なんか引っかかるんだよなぁ。」
「ちょっと話しかけて見よっか。」
「あ、ちょっと!」
ロッティが男の方に走っていき、その後ろをウェンディとリリーが付いていく。
何かが引っかかった。それだけの理由で声をかけていいのか、ウェンディが悩んでる間にロッティがすでに声をかけていた。
「お兄さん、何見てるの?」
こういう時、この3人の見た目はかなり役に立つ。
リリーは角を隠すためにマントをかぶっているが、3人とも体格や顔つきはどこにでもいる8歳の少女だ。
驚いた顔の男には、笑顔で顔を覗き込んでいる少女に写っただろう。
「な、子供?こ、子供には関係ないよ…。」
男が少し困惑した顔でロッティを見るが、それを無視してロッティが壁から顔をのぞかせている。
路地を見ているロッティに目線を向けていた男は、ウェンディ達がすぐ後ろまで来ていることに気づかない。
「ロッティ、なんだったの?」
「うぉ!まだ居たのか!」
男が驚くのを完全に無視して、ロッティの頭に顎を乗せる形で路地を覗き、ロッティのしたからリリーが顔をのぞかせる。
覗いた路地は人が通らないような細い裏道といった道だった。
路地には木箱や麻袋がおかれ、なお一層も人が通りづらくなっていたが、その荷物の陰に布が翻るのが見え、少し視線を上げると、男女が抱き合っている姿が目に入った。
男は鎧を着こみ剣を差したザ・戦士といった見た目で、女は白いローブを着て杖を持っていて、おそらく旅僧侶のような見た目だ。
旅僧侶とは神聖魔術を使用することのできる聖職者以外の者の事であり、神聖魔術を専門で扱う人物のことを言う。旅僧侶といっても旅をするわけではなく冒険者として活動する人が多く、実際に旅をしている旅僧侶はそこまで多くない。
しかし、ロッティのように魔術師でありながら神聖魔術を扱える人もごくまれに存在し、とても希少な存在だ。
路地で抱き合うふたりは、ずいぶんと親密な関係に見えるが、見るからに旅僧侶の方が冒険者ランクは低い。
ウェンディは、ふと頭の向きを変えて驚き顔の太った男をみて、心の底から後悔をした。
(これ、すごくめんどくさい事に首突っ込んだかも…。)
ちなみにと言わせていただくと、クインシーというミシシッピ川沿いの町は実在する名前ですが、町の中の地名などは一切関係ありません。




