17話 旅の話
ゲルマニアを出て1年と4か月。
ニューモクムを出て半月。
「…ロッティ。私ね、時々思うんだ。」
「どうしたの?ウェンディ。」
ライアンの森の川辺で、焚火を焚いて夕食を食べ終わった後に、ロッティが片づけをしながらウェンディは寝そべって煙管を吸っている。
鍋や食器を川で洗っていたロッティは、食器を持って焚火の所に戻ってくる。
「私さ、なんでこうして旅をしてるんだろうって。なんで剣の技を極めたいと思ったのか、なんで武術とか射撃を極めたいのかって、時々考えちゃうんだよね。」
「なるほどね。自分が何のために旅に出たのか、旅をしてる意味がわかんなくなっちゃうんだね。」
「そうなのかも。そして、そういうことを考えたときにはね、旅に出て見たきれいな景色とか、人助けの笑顔とか、あとは剣を本気で降るときの感覚とかを思い出すと、今してる旅が、最高のひと時のように思うんだ。」
「ふふっ。ウェンディって、もしかして本当は旅が好きなのかもね。剣を振ったり体を動かすのと同じくらい。」
「そうなの、かも…。」
咥えていた煙管をいつの間にか片付けたウェンディは、スッと眠りに落ちた。
食器を片付けていたロッティが振り向くと、鞄に頭を乗せて地面で眠るウェンディが目にはいった。
「あ、寝ちゃった。」
毛布を出してウェンディをくるむと、自分も毛布にくるまってウェンディの頭側にある岩にもたれかかる。
弱まる焚火を眺めながら、ロッティも静かに瞳を閉じた。
焚火の火は、そこから少しして炎が消えた。