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13話 ライアン合衆国

 ゲルマニアを出て1年と2ヶ月半。

 ウェンディとロッティは、船の上にいた。

 甲板で煙管を吸っているウェンディと、その横で海を眺めているロッティは、ガリアから船に乗り、新大陸に向けて航海をしている。

 海風になびく黒茶色の髪とプラチナブロンドの髪に煙管の煙。

 甲板を歩いている水夫やほかの乗客たちも、2人の少女に見とれている。

「新大陸ってどんなところなんだろ~。」

「新興国で、まだ国の西側は未開拓の砂漠地帯が広がってるんだって。でもここの海での航海が長いせいで馬は乗せられないなんて。」

「でも新大陸を馬で通るのはやめた方がいいって話だったし、現地で乗合馬車でも乗ればいいんじゃない?」

「いや、新大陸の国は新興国だけど工業大国でもあるみたいなんだよね。それで、こっちの国とは全く違った乗り物があるみたい。」

 欧州と新大陸の間に広がる海を、ゆったりと進む全装帆船。

 船の上では甲板で海を眺めるか船室でくつろぐ以外にやることが無く、必然的に甲板で素振りや抜刀、銃の早撃ちの練習がはかどっていく。

 数日ののちに、船の正面のはるか遠くに陸地が見えてきた。

「ウェンディ、あれが新大陸なのかな。」

「そうじゃないかな。この船はガリアを出た後は新大陸以外に寄らないらしいから、多分あれが新大陸だよ。」

 ガリアからブリタニアの時には大荒れだった海も、この新大陸までの海は特に荒れることなく穏やかなものだった。

 新大陸がうっすら見えた翌日、船は港に接岸した。

「や~っとついた~!!」

「とりあえずしばらくはこの町で過ごそう。この国のことも知りたいし、何より船旅は疲れた…。」

「だね。私も少し武器が欲しいかなぁ。流石に魔術だけじゃ心もとないし。」

 ロッティの魔術は、ブリタニア以外の国からすれば十分強力なレベルだった。ブリタニアの魔術師たちに比べれば確かに弱いかもしれない。ブリタニアの師匠に比べればかなり弱い。だが、ほかのガリアやゲルマニアなどの国の魔術師に比べれば、十分通用するレベルだった。

 ロッティの魔術の練度であれば、弾丸への付与とかも簡単に出来そうだと感じる。

 港町の一角にある宿屋に数日分の宿をとると、その日は2人で街を散策する。

 町を歩き回り、いろんな店や今までに見なかったような服装の人が歩いている。

(あ、カウボーイっぽい人もいる。この国は、前の世界で言うところのアメリカなのかな。ここの町はどこの町にあたるんだろう。)

 歩いていると、看板に《ニューモクム》と書いてあるのが目に入る。

「…ニューモクムってどこら辺の町なのかな。」

「そもそもこの国って何て名前なのかな。ずっと新大陸としか呼んだことなかったけど。」

「国の名前は《ライアン》っていうらしいよ。正式にはライアン合衆国。もともとはガリアとかブリタニアとかの植民地だったんだけど、独立していろんな人種の集まった国が出来たんだって。」

「へ~ライアンかぁ。あ、あそこ武器屋って書いてあるよ!」

「お、じゃぁロッティ用にいいのがあるか見てみよう。剣とかあるのかな。」

 武器屋の中に入ると、そこは今までいた国とは全く違う雰囲気だった。

 日の光が窓から入る店内に、壁に掛けられた数々の銃たち。壁際の棚には火薬や弾頭がおかれ、奥にはホルスターに帽子なんかがおいてある。

 ものすごく、西部開拓時代のアメリカって感じの店内だ。

「わぁ~。ウェンディの銃と似たようなのがいっぱいあるね~。」

「そうだね。私の銃もこの国から来たみたいだね。」

 店内を見ていると、カウンターの中に座っていた老人が立ち上がり、歩み寄ってくる。

「…嬢ちゃんたち、銃を見に来たのかい。何が欲しいんだ。」

「あ、この子に銃をと思いまして。よくわからないので何かいいものはありますか?」

 ウェンディが話しかけると、老人はウェンディの腰に下げた拳銃を凝視している。

 視線に気づいて目線を落とすと、老人はすかさず話始める。

「…ドラグーンか。そんな重い銃を腰に下げて、重くないのか?」

「これですか?まぁ少し重いですけど剣もあるんであんまり。左右でバランスが取れてちょうどよく感じます。」

「ドラグーンの、しかも初期型か。そんな古くて重い銃を使っている理由はなんだ。今なら、こういう軽くて扱いやすい銃もあるだろう。」

「これは、母の形見で…。剣と一緒に受け継いだものなので。」

「そうか。それは悪いことを聞いたな。…そっちの嬢ちゃんの銃だったな。こいつはどうだ。」

 老人は壁の拳銃を一丁取ると、差し出してくる。

「セカンドネイビー・ポケット。セカンドネイビーの銃身を短くしたモデルだ。セカンドネイビーは君のドラグーンの後継機であるネイビーをさらに改良したモデルだ。口径も小さく重量も軽い。メイド服の嬢ちゃんは、あんたほど腕力があるようには見えないからな。」

 差し出された銃を握るロッティは、案外好感触のような表情だ。

 握ってハンマーを起こしたり引き金を引いたらしてから、満足したようにこちらを向く。

「これすごい持ちやすい!軽いしいいかも!」

「…これでいいみたいです。あと弾丸と火薬にホルスターをください。」

「わかった。これでいいか?」

「はい大丈夫です。」

 ホルスターを受け取って腰につけると、拳銃をしまって弾丸を受け取る。

 体のサイズに合うようにホルスターを調整して、店を出る。

「また来いよ。この町に残るのならな。」

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