12話 仲間
ガリアを出て11ヵ月。
ゲルマニアを出て約1年が経った。
「…!?」
ウェンディは、すでに思考停止に陥っていた。
目の前にはスカートをたくし上げた少女が立っている。
しばらく思考停止をして、何を言えばいいか、なんでこんな状況になっているのか理解が追い付かず、それを考えるだけの思考能力すらも固まってしまったウェンディは、一度落ち着いてからもう一度今の状況を考えた。
「…えっと、これじゃ足りませんか?」
「あ、いや!そんなのいらないよ!」
「そ、それってどういう……。」
「いいからスカート戻して!それに、そんな事されても、私女だよ。」
そういうと、フードを取って顔を見せると同時に髪が横に垂れる。
声を聞いてから顔も見て、相手が女性だとわかった瞬間、少女も固まってしまった。
「……えっと、とりあえず、焚火に当たれば?スープならすぐに用意できるから。」
「あ、はい。ありがとうございます……。」
2人並んでスープをすするが、とんでもなく気まずい。
気まずいってレベルでなく、何を話せばいいのかまったくわからない。
「えっと、君はなんでこんなところで行き倒れそうになってたの?」
「あ、はい。えっと、私少し前まで商人の家に勤めていたんですが、そこのご主人様が事業に失敗して夜逃げしてしまいまして、頼れる人もいなかったのでとりあえず仕事を紹介してくれる施設のある街まで行くために旅に出ました。」
「なるほど。そこで最初にあったのが私だったのね。」
「そういうこと。」
この国でも大変なところはあるみたい。
このまま島を出てそのまま新大陸に向かおうと思っていたウェンディに、行くあてのない少女が合わさった。
「ねぇ、あなたはこんなところで何をしているの?旅人のようだけど、私とあんまり歳も変わらなそうだけど。」
突如のタメ語。
まぁそっちの方が楽だからいいけど。
「え、私?私は自分の国を出て1人で旅をしてるの。もう国を出て1年になるかなぁ。」
「旅をしてるの!?へぇ私と変わんないのにすごいね~。…ねぇ、その旅、私もついていってもいいかな。」
「旅に?別についてくるのはいいけど、いいの?私は世界をまわるつもりだから、この後新大陸に向かうつもりだけど。」
「いいの!この国にはもう私の身寄りもないし、仕事もそうそう簡単に見つかるような土地じゃないから。違う土地に移動するのにも路銀もないから…。」
「それなら別ついてくる分にはいいんだけど、かなりの危険も伴う。守りながら戦うのは厳しいと思うのだけど、戦える?」
正直そこが一番の懸念だったりする。
この小さなメイドが、戦うすべがあるようには見えない。
「私?一応魔術なら使えるよ。使えるのは火系統と風系統が3階級まで。あとは無系統かなぁ。」
「…結構使えるのね。それくらいできるんなら、問題ないかもね。一緒に来る?」
「行く!新大陸かぁ。楽しみだなぁ。」
笑顔な彼女の、名前をきいていないことに気が付いたウェンディは、自分から自己紹介を始める。
「そういえば自己紹介がまだだったね。私はウェンディ。ウェンディ・ラプラス。生まれはガリアで、育ちはゲルマニア。」
「へ~ガリア人なんだね~。あ、私はシャーロット・スチュワート!ロッティって呼んで。」
「わかった。私はウェンディでいいよ。」
焚火を囲んでスープを飲んでから、ロッティが眠ってからウェンディも眠りにつく。
翌朝、ロッティよりも早く起きたウェンディは、持ち物がなくなってないか、ロッティの持ち物に変なものはないかとポケットを探るが、何も入っていなかった。
もともと何も持たずに家を追い出されたという話を信じるのなら、確かに信憑性はそれなりに高まったように感じた。
荷物から干し肉とパンを取り出して食事をしていると、ロッティも起きる。
「あ、おはようございます…。」
「うんおはよう。パンとか食べる?」
「いただきます…。」
ロッティがパンに干し肉を乗せて食べているのを見ながら、
(テントくらい買わないとなぁ。)
と、ウェンディは思った。