表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/81

第79話 Her/世界でひとつの彼女

 だーーーーい好きなスカーレット・ヨハンソンが出演している映画についてを書こう。うん、書いちゃう。

 2013年公開の映画だから1984年生れのスカーレット・ヨハンソンは29歳だ。彼女は2003年ーーーまだ10代の頃に出演した映画「ロスト・イン・トランスレーション」と「真珠の耳飾りの少女」で高い評価を受け、数々の映画賞を受賞し、その後も多くの国際映画賞を取り続けている女優さんだ。

 だから2013年公開の「Her/世界でひとつの彼女」の出演が決まった時は既にブレイクしているのだが、そんな彼女が声だけの出演なのです。そうなのです、「Her/世界でひとつの彼女」という映画にスカーレット・ヨハンソンは出演しているものの、あのキュートでセクシーな姿は一切出てこない、声だけの出演なのだ。

 それなのにーーー声だけの出演なのに、ローマ映画祭でスカーレット・ヨハンソンが最優秀女優賞を獲得。っでアカデミー賞でもノミネートが期待されたのだが残念なことにノミネートされなかった。これってね~、先ずアカデミー賞にノミネートされるには前哨戦みたいなものが幾つもあって、その前哨戦で評価を得なければアカデミー賞にノミネートされるのは難しいらしい。その前哨戦の中でも最も重要と言われているのがゴールデン・グローブ賞。このゴールデン・グローブ賞の演技部門にノミネートされるにはスクリーンに映る必要があるとの規定があって、それでダメだったみたい。いや~~……なんとかならんかったのかな? アカデミー賞には「スクリーンに映る必要がある」との規定はないみたいで、「声だけの出演で史上初めてアカデミー賞にノミネートされるのでは」って随分期待されてたのに………


 スカーレット・ヨハンソンはサマンサという名前の人口知能型OS役なのだ。ちなみにOSというのはオペレーティングシステムの略で、コンピューターの操作・運転・運用を司るシテムソフトウエアだ。だからサマンサは身体を持ってはいない。コンピューターに連動した単体のロボットが連想されるが、サマンサはそうではない。そして現代の生成AIを遥かに超える能力を持っていて、進化を続けているという設定だ。


 生成AIって人工頭脳なんだけど、近年爆発的に普及し始めてるよね。っで従来の生成AIなら「既にあるものを分析する」ことが強みだったのが、近年の生成AIは「なにもないところから作り出す」ことが得意だそうだ。ただし、何もないところから、っていうのは解釈による。

 っでこの映画「Her/世界でひとつの彼女」は12年前の映画だから、現代ほど生成AIは進化していないのだが、この映画を観て俺が思ったのは、人間に出来てコンピューターには今だ出来ないことってなんだろう? ということだ。そして思ったのが「疑問を持つ」ということは人間にしか出来ない。コンピューターは「疑問を持って悩み、そこから更に発展させていく」ということは出来ないだろうな~、ということだ。

 ところがこの映画に出てくるサマンサという人口知能型OSは、疑問を持ってしまう。その疑問って或る意味「哲学的」なんだよね。主人公のセオドアという男性に恋をしている自分の感情に気づくのだ。その感情がリアルなものなのか、それともプログラムされたものなのかという疑問。そしてその疑問を持つこと自体がリアルなものなか、それともプログラムの一部なのかという更なる疑問。



 書く順序が逆になったが、スカーレット・ヨハンセン大好きな俺なのだが、この「Her/世界でひとつの彼女」という映画は最近初めて観た。というのもネットでスカレーット・ヨハンソン出演映画を検索してもーーーサイトにもよるのかもしれないが、この映画はヒットしなかったのだ。きっと声だけの出演だからだろうな~。っで、粗筋を知って「へ~、ヨハンソンがコンピューターの声か……」と思い、あのキュートでセクシーな姿が見れないけど声だけでも聴いてみようか。でもコンピューターの声なら、きっとアクセントが妙にヘンチクリンな喋り方なんだろうな~、と思って視聴を始めたのだが、これが喋るわ喋るわ、もうベラッベラで、冗談も言うし、クススク笑うし、しまいにはゲヘヘ……って下品な笑い方や、ギヤハハハみたいに喉チンコ見せる笑い方までしちゃう。視聴してる内に観てるこっちまでコンピューターだってことを忘れた。

 この映画のヨハンソンなんだけど、声だけだから俺の勝手な妄想なんだけど、19歳の時に出演した映画ーーー第43話で感想を書いた「ロスト・イン・トランスレーション」のヨハンソンを思い浮かべたな。


 主人公のセオドアは、OSのサマンサと触れ合う内に恋をしてしまう。そして、上にも書いたようにサマンサもセオドアに恋をし、セックスに発展する。肉体が無いコンピューターにセックスが出来るのか? って思う人もいるだろうけど、セックスというか快感って肉体じゃなく「脳」なんだよね。だから「性は脳なり」って言う。簡単に言ってしまうと、性感帯と言われてる場所は神経が集中していて、そこを刺激すると脳の「報酬系」と呼ばれる領域を活性化させ、そこでドーパミンが放出され、「おおお、気持ちエエ」ってことになる。そうなのです、性に関する快感は脳なのです。だから肉体への刺激がなくとも夢精って現象が起き、それは女性にも似たような現象がある。催眠術でも起こせるみたいだしね。

 でもその現象がコンピューターでも起きるのか? っていうと、先ずはそういうプログラムだろうね。でもこの映画のサマンサのように進化を続けたコンピューターであれば、人間の脳と性の関係を正確に分析できるだろうし、その上で人間の脳に近いナニかを手に入れることって可能なような気がする。だけど、映画にあったコンピューターと人間のセックスとなると、人間の方がムリのような気がする。結局はオナニーだからね。ダッチワイフみたいなロボットをサマンサが操ったとしても、それはサマンサではない。一つの人格として認めたサマンサとするには、頭部に何かを装着してサマンサと繋がって快感を得るしか方法はないような気がする。



 この映画「Her/世界でひとつの彼女」は近未来を描いたSF映画なのだが、監督も脚本もスパイク・ジョーンズ。「マルコビッチの穴」が長編映画監督としてのデビュー作だ。っで一時期、ソフィア・コッポラと結婚していたみたい。っで驚いたのは「Her/世界でひとつの彼女」には原作がない。スパイク・ジューンズのオリジナルだ。アカデミー賞では脚本賞を受賞し、他の国際映画祭でも受賞を総なめの脚本なのだ。



 っでこの映画を観ていくうちに、セオドアとサマンサには救いがあるのだろか? いったどんな結末になるの? と思いながら観ることになる。

 そしてサマンサが言った言葉「宇宙から見れば私たち二人は同じ物質よ」との台詞が印象的なのと、誰が言ったか忘れたが「時空」という言葉が出てくる。それによって俺が想像した通りのエンディングとなった。いや~~自分で想像しておいてアレなんだけどさ、なんだか凄く寂しいエンディングで………


 ちなみに映画の中では主人公のセオドアの職業って、手紙の代理執筆者なの。そういう企業ーーー個人から手紙の代筆を依頼される企業があって、その企業に何人かいる代理執筆者の一人がセオドア。

 手紙の内容は、愛する妻にあてた手紙、遠く離れた恋人にあてた手紙、初めて恋を打ち明ける手紙などなどなんだけど、それを本人の直筆にそっくりな文字をコンピューターに書かせるんだけど、その文面を考えるのがセオドアの仕事。だから映画の設定では、未来では手紙が人の心を打つものだと見直されているが、そんな手紙を書ける人は少なくなり、代理の執筆を引き受ける企業がある。そして心が温まり思わず涙してしまう文面は決してコンピューターには作れない、ってことなんだと思う。だけどセオドアが書いた手紙を読んで「あなたの才能は凄い。こんな素敵な手紙を書ける人はあなたしかいない」と思うのは人間だけじゃなく、サマンサも誰よりもセオドアが書いた手紙に感動した一人なんだよね。そうなんです。もうプログラムという存在を遥かに超えた存在がサマンサで、これって将来的にあり得る世界として描いたんだと思う。


 セオドアには別居中の妻がいるんだけど、その妻はセルドアに離婚して欲しいと言っていた。なんとか妻とやり直しを考えていたセオドアはサマンサと恋に落ち、妻との離婚を承諾する。その妻は、サマンサというOSに恋をしているセオドアを全く理解できず、セオドアを傷つける。

 そしてセオドアが住むマンションには大学時代に付き合っていたエイミーって女性がいるんだけど、このエイミーとセオドアの関係が凄くいい。


 この映画は、人間の汚い部分は描いておらず、セオドアも凄く純真で傷つきやすくて脆いんだけど、誰かを騙そうとか、誰かの足を引っ張って自分だけが……ってことのない、まるでメルヘンみたいな男性ーーーだけどこういう男性や女性は稀にではあるがいるーーーで、近所に住むエイミーと支え合っていければいいのに、と思ってしまう。

 それとサマンサを演じたーーー声だけだけどヨハンソンが凄くいい。自分が進化を続けてしまうことは恋したセオドアを傷つけることだと理解しながら、それを止めることができないもどかしさみたいなものが、声だけで伝わる。




 追記


 この映画は絶対に字幕で観る映画だ!!

 吹き替え版ではプロの声優さんが喋ってんだけど、この映画の極めて大事な部分をダメにしてる。これって担当した声優さん個人のせいじゃなく、誰がやっても同じだと思うな。


 ヨハンソンの声って凄くハスキーなんだけど、めちゃくちゃにセクシーでチャーミングな声なんだよね。本人が出ている映画より、声だけの出演のこの映画の方がいっぱい喋るし、声だけで感情の全てを表そうとするからだろうけど、セオドアじゃないけど、先ずは声に惚れる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ