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第74話 3つの鍵

 この映画、洋画好きの方の中でもシリアス系が好みの人であれば知っている映画だと思う。


 2021年製作という比較的新しい映画で、イタリアとフランスの合作。

 そしてイタリアの巨匠・名匠と言われるナンニ・モレッティが監督・脚本。

 第74回カンヌ映画祭コンペディション部門で正式上映され、海外メディアからの評価も高い作品なのだが、俺にとってはビミョ~~って言うより、意味不明な映画。だから前もって言っちまうが、ネタバレを書いちゃう、っていうか書かずにはいられない。とにかく変なのだ。


 原題は「tre piani」で「3階建て」という意味らしいが、邦題が「3つの鍵」だ。

 これね~、邦題つけた人って誰? って言いたくなるんだよね。

 先ずね、原題の「3階建て」とは、物語に出てくる何組かの家族がいるんだけど、彼らが同じアパートに住んでるの。そしてそのアパートが3階建てなの。それを指しての題名なんだけど、邦題の「鍵」ってなに? それも3つの鍵?? う~~ん……解説を読むと3組の家族が……って書かれてるんだけど、4組の家族が出てくるんだよね。1組どうした? もしかしたら邦題つけた奴ってこの映画ちゃんと観てない? そして邦題の「鍵」なんだけど、「なにかを解決するための鍵」というような比喩的な使いかたなのかと思って観てたんだけど、そうではなかった。そもそも「鍵」を連想させるナニかがあったとは思えねぇ。これも視聴後に読んだ解説に書いてあったんだけど、「鍵を掛けてしまったアパートの各部屋(各家庭)の内情は、外からでは全く分からないという意味ではなかろうか」というものだが、そんな意味深の邦題にしたの?? だったら4つの鍵だろ。とにかくこの邦題は変に気取ったあげくに意味を余計に分からなした大失敗な邦題だと俺は思うぞ。映画の公式サイトには「彼らが手にする未来の扉を開く鍵とは?」って書いてあって、そこからの強引な引用だろうね。でも、この映画を視聴した俺は、公式サイトに書いてあった「ーーー未来の扉を開ける鍵」と言われても、そんな内容の映画だとは到底思えねぇ~。


 そしてこの映画、監督と脚本はナンニ・モレッティ氏なのだが、彼のオリジナル作品ではなく、原作がある。イスラエルの人気作家:エシュコル・ネポが書いた「三階 あの日テルアビブのアパートで起きたこと」だ。そしてこの原作ではイスラエルの政治状況と照らし合わせて読まれているらしく、「敵に囲まれ孤立している」を描いていると論じる人も多いとか。但し、映画では舞台をイタリアのローマとしており、「敵」という概念は薄まってはいるけど、「孤立」というものは随所に描かれてはいるな。うん。だけど意味不明だぞ~



 随分と前置きが長くなっちまったが、ここからがこの映画の感想なのだが、先ずは、凄く深刻な問題ーーそれも1つではなく、幾つもの深刻な問題が描かれた作品なのだが、驚くほど軽いタッチなのだ。うん。これは監督の力量なんだろうね。日本の映画監督に撮らせたら、ドヨ~~ンって感じの暗い映画を作っちゃうだろうな。ただね、お国柄なのかチョっと軽く描き過ぎて、それが原因なのか、どの登場人物にも共感できないんだよね。もしかしたらブラックユーモアを交えた作品なのかもしれないけど、「飲酒運転で死亡交通事故」、「女児に対する性的な暴行」、「育児ノイローゼの母親」、「老人性認知症」、「未成年者とのセックス」という問題が描かれていて、これをブラックユーモアでは………

 ちなみにこの映画は群像劇で、主人公が大勢いると言えば良いのか、主人公がいないと言えば良いのか分からないが、特に男の登場人物には誰一人共感できないどころかハラが立った。もしかしたらアレが典型的なイタリア男か? だとしたら日本で暮らすのは止めてくれ。絶対に馴染めない。


 ここで映画に登場する4組の家族を書いておく。



 ①

 3階に住むヴィットリオとドーラは夫婦揃って判事。息子のアンドレアが飲酒運転で女性を跳ね殺し、そしてその車は自分達が住んでいるアパートの1階に突っ込む。


 ②

 1階に住むルーチョとサーラの夫婦。7歳の娘:フランチェスカは、突っ込んで来たアンドレアが運転する車に轢かれ掛けるが無事。部屋がグチャグチャになった為に、隣に住む老夫婦に娘を預ける。


 ③

 1階に住むレナートとジョヴァンナの老夫婦。夫のレナートは初期の認知症だが、それを知らずに娘を預けた②夫婦。


 ④

 2階に住むジョルジョとモニカの夫婦。夫のジョルジョはナポリに単身赴任で、妻のモニカは絶えず一人なのだが妊娠しており、陣痛が始まり病院に向かう際に①の息子:アンドレアの車が人を撥ねるのを目撃。



 こんな4組の家族が3階建てのアパートに住んでいるのだ。

 映画は、3階に住むバカ息子アンドレアの飲酒による死亡事故から始まる。この息子ね~本当にバカで救いようがないんだよね。映画の終盤では厳し過ぎる父親が敷いたレールから解放されたように描いてるんだけど、「親が二人とも判事なんだから、俺が起こした事故なんかなんとか出来るだろ! うまく誤魔化すよう友達の裁判官に頼めよ!」って平気で言うわ、それに対して「お前は人を殺したんだ。罰を受けなさい」と言った父親を殴るわ、蹴るわ。まぁ、親が干渉し過ぎて育てた結果が、全く自立できていない無責任な人間を造っちまった訳だろうけど、このバカ息子には最後までハラが立ってしかたがなかった。


 7歳の娘を老夫婦に預けたルーチョとサーラなんだけど、翌朝、娘を迎えに行って、その娘が言うの「レナートは壊れてる」と。それは、レナートは色んなことを直ぐに忘れ、頭が壊れているという意味で、その意図を理解したルーチョとサーラは、「これからはちゃんとしたシッターを頼もう」と夫婦で話す。

 このルーチョとサーラという夫婦は共働きらしく、今までも頻繁に娘を老夫婦に預けていたらしく、娘も老夫婦に懐いているが、レナート(爺さん)に認知症の症状が出てるってことは知らなかった。


 余談になるけど、外国って幼い我が子を近所に預けるってことが現代でも当たり前なのかね~? 日本じゃ、確かに昭和の頃はご近所付き合いも活発で、赤ちゃんが生まれたんだけど乳の出が悪いお母さんなんか、「近所の〇〇さんはお乳の出が良いから、ちょっと飲ませてもらいましょう」って、今じゃッビックリしちゃうくらいの近所付き合いがあったらしいから、「うちの子をチョット預かってて」なんてことは頻繁にあったろうけど、現代の日本じゃ考え難い。


 話しを映画に戻すが、数日後、サーラの留守中に夫のルーチョは再び娘:フランチェスカを老夫婦に預ける。その理由は、自分がジムに行くため。ところが初期の認知症であるレナートがフランチェスカを連れて外出したまま帰ってこない。レナートは帰り道が分らなくなったのだ。フランチェスカ(女児)は「公園に居ればきっとパパが迎えにきてくれる」と考え、自信を無くして泣き出してしまったレナート(爺さん)を連れて公園に行く。この7歳のフランチェスカは本当にシッカリしてて、登場人物の中で唯一応援したわ。うんうん、変なヤツしか出てこない中での救いがフランチェスカだった。

 そしてフランチェスカの予想通りに公園に来たルーチョ(自分勝手な父親)が見たモノは、7歳の娘の膝を枕に泣きじゃくるレナート。レナートの股間は濡れていて失禁したようだった。

 ルーチョは「娘はレナートに性的暴行を受けたのでは?」と疑う。警察もその可能性があると考えフランチェスカ(女児)を病院で検査を受けさせ、その結果は「娘さんは無事です。性的被害は受けていません」というもの。だがルーチョは執拗に疑う。これマジで執拗なの。それこそ「娘は性的被害に遭いました」って言って欲しいと思ってんじゃねぇの? って感じるくらいに執拗で、入院中のレナート(爺さん)の部屋に無断で入って、「なにがあったんだ? 正直に言え!」って迫る。認知症のレナートは「覚えていないんだ……」と言うが、それを聞いて頭に血が登ったルーチョはベットに寝ているレナートの首を絞める。自分がジムに行きたいから娘を預かってもらって、そんな無責任の結果を他人に押し付けるオヤジがルーチェ。

 病室で夫がルーチェに首を絞められているのを目撃したジョヴァンナは激怒するが、ルーチェの妻:サーラの謝罪を受け告訴はしない。だが当のルーチェは頑なに謝罪をしない。これマジでむかつくから。とにかく正義は自分にあるって思い込んでんの。

 そんな中、以前はこのアパートに住んでいたと思われる老夫婦の孫娘が現れる。おそらくは爺ちゃんのお見舞い。その孫娘は「自分の爺ちゃんがルーチェに疑われてる。それも女児に対する性的加害者として疑われてる」ことなど知らないし、誰も教えてくれない。それどころか孫娘は元々ルーチェに思いを寄せていたらしく、ルーチェを誘惑し、そしてセックスをする。事が終えてルーチェは孫娘に言う「初めてだったのか……」と。これさ~最低だよな。ルーチェは相も変わらずレナート(爺さん)を疑ってるの。自分の娘にナニかをやったはずだと。その爺さんの孫娘はどう見ても未成年なんだよね。そんな娘とヤるか? コイツ終わってるぞ。どんだけ自分に甘いんだか。っで案の定、孫娘とヤったのがバレる。孫娘の家族だけじゃなく自分の嫁:サーラにも。だがサーラが不思議な女で、何故かそんなバカ亭主と別れたりしないんだよね。

 訴えられたルーチェ。だけどその裁判の争点が「強姦か和姦か」なんだよね。お国柄なのかね~、未成年とやっちまったら一発アウトじゃないみたいで、結局は無罪。合意があってのセックスだと認められた。




 ここまで長々と「ルーチョとサーラ夫婦の家族」と「レナートとジョヴァンナの老夫婦家族」の事を書いたかというと、この3階建てのアパートに住む4組の家族で、絡みがあるのはこの2家族だけ。そう、他の2つの家族とは全くといっていいほど絡まない。ビックリするぞ。

 3階に住むバカ息子:アンドレアの起こした事故が切っ掛けで、ルーチョとサーラの娘が、レナートとジョヴァンナ夫婦に預けられ、そしてアンドレアの起こした事故の目撃者が2階に住むモニカなんだけど、3階の家族と2階の家族は、それ以降は他の家族と一切絡まない。モニカも事故の目撃者なんだけど、陣痛が始まってるからそのまま病院に行ったらしく、事故の事にすら絡まない。

 で、このモニカなんだけど、母親が精神疾患らしく、自分も母親と同じになるんじゃないかと思ってる。そして夫が単身赴任のため育児に疲れノイローゼっぽい。何度か部屋の中にカラスがいるのを見るんだけど、それは明らかにモニカの幻覚。っで夫のジョルジョは実の兄と絶縁状態なのだが、その兄(モニカにとっては義兄)が現れ、なぜ兄弟が絶縁となったのかが明らかになる。それは兄がモニカに言い寄ったとかなんとかでジョルジョが激怒した結果なのだが、どうも兄とモニカは性的なナニかがあったみたいなんだよね。だけど当のモニカは覚えていないように描かれていて、どこまでが事実なのかが微妙。そしてジョルジョが単身赴任で留守の間に現れた義兄とベットの上で性的な会話をするモニカ。これはモニカの妄想なのか現実なのか不明。もしも妄想なら、モニカにはそういった願望があるってことなんだろうね。っでモニカは突如行方をくらますの。赤ん坊を置いて一人でどこに行っちまった。これね~~モニカ夫婦をこの映画に出した意図ってナニ? おまけに義兄まで出してるんだけど、あまりにも謎。



 死亡事故を起こしたアンドレアなんだけど、父親のヴィットリオが死んじゃって、その葬式にも行かない。要は、とことん父親を憎んでいる設定。もっと幼少期から描けば違った感想を持つのかもしれないけど、酒を飲んで死亡事故を起こすわ、それを揉み消すよう親に頼み、断られるとキレて、そして刑務所に入れられている間に母親が何度も面会に行くんだけど、その面会全てを拒否。こいつクソだぜ。

 っで映画のラストは、このバカ息子が或る女と一緒になり子供までいると知った母親。逢いに行くが「こっちに来るな! せっかく僕が築いた世界に入り込むな!」と怒鳴られる。



 この映画っていったなんなんだろう?

 とにかく出てくる男はどいつもこいつも変。

 っで女は………やっぱり変。亭主が未成年の女とヤッちまって裁判にもなってるのにどうして夫婦を続けてる? それも自分の娘が性的被害者だという妄想に憑りつかれてる夫だぞ。それだけでも家庭が壊れるだろうし、その妄想上の加害者の孫娘とヤったんだぞ。

 っで、もう一人の女は、出来損ないの息子にいつまでも執着してる女。

 更にもう一人は、義兄とナニかあったんだろうけど、それを思い出すことも出来ない内に、なぜだが居なくなった。


 全員が自分勝手。

 ヒューマンドラマだろうから、人間ドラマとして胸に迫るナニかを描いているのか??? 俺は何も感まかったぞ。、っで何故かラストはハッピーエンド風。



 追記


 この映画の原作を「フロイトを引用することによって読み解く」とする書評があるらしい。はぁああ?? そんなもん映画になる訳ねぇだろ!!

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