第57話 邦画 名前
「名前」という題名の、2018年製作・公開の日本映画だ。
この映画のキャッチコピーが、
ーー行き場のない二人は、家族になったーー
うん、うん、いいね~。「行き場のない二人が」ではなく「行き場のない二人は」としたのが、とってもいい。
主演は、津田寛治(53歳)、駒井蓮(17歳)
そしてこの映画は原作はないのだが、原案がある。直木賞作家の道尾秀介が、この映画のために書き下ろしたもので、書籍としては未発表の物語だ。
ちなみに道尾秀介が書いたホラー小説「背の眼」は、ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、その小説は2008年に小池トクノ作画で漫画化されてコミックバーズで連載(単行本は全3巻)、そして2012年には日テレBSで主演を渡辺篤郎のドラマ化までされている。又、他には阿部寛主演の映画「カラスの親指」も道尾秀介の小説が原作だ。
監督は戸田彬弘、脚本は守口悠介で、他のキャストには、松本穂香、筒井真理子など。
この映画、海外での評判が良く、イタリアの映画サイトのレビューでは★が5つらしい。
そしてこの映画は茨城南青年会議所が企画・制作に関わっていて、取手市・守谷市・つくばみらい市・利根町を元気にしたいという思いからの企画だそうで、そんな思いがからなのか気取った映画ではなく、オープニングに25名の出演者の名前が映し出されるのだが、ん……? って感じの文字なんだよね。後から調べて解ったのだが、主演女優の駒井蓮(17歳)が書いたのだそうだ。
っで映画の中で津田寛治が「オレンジジュースを飲もう」と唐突に言い出して駒井蓮と二人で飲むシーンがあるのだが、「どうしてオレンジジュース? 相手が女子高生だから? でもコーラの方が一般的だよな」なんて思いながら観ていたのだが、やはり前後の脈略とは全く関係ないオレンジジュースがどうにも記憶に残って調べてみた。すると、茨城には「100%生絞りオレンジジュース」の自動販売機があるらしい。1杯500円と、高いのか安いのかそれとも相場なのか分からないのだが、自販機の中にオレンジが入っていて搾りたてが出てくるから果肉まで混じってるという優れ物らしいぞ。スゲーな。北海道在住の俺はそんなの見たこと無いし初めて聞いた。うん?! 北海道なら牛に箱を被せて「搾りたての牛乳自販機」ってのは……無理だな。卵の自販機ならあるが、中に鶏が入ってるわけではなく、毎朝、養鶏農家の人が産みたての卵を自販機に入れているというものだが、う~~ん、鶏が入っていた方がウケるな。動物愛護法に引っかかるか……
他にも色々あって、なぜだか釣り堀に行ってヘラブナ釣りをしたり、妙に田舎臭いボーリング場に行ったり、高校の演劇部、枕、線香花火、オルゴール等々………これってもしかしたら全部が茨城に関係してるのかな? もしそうなら、昔あった西部警察というドラマを連想しちまった。
西部警察。名前の通り刑事物のドラマのはずが実際は戦争映画顔負けの、殺しまくるドラマだ。
悪いヤツを逮捕なんかしないの。逮捕令状も出ていない捜査の段階で、「あ! アイツだ! 逃げたから間違いない!」って、いきなり発砲する。市街地だろうとデパートの中だろうとおかまいなし。っで仕舞には「団長」って呼ばれている渡哲也がショットガンでブっ殺す。ショットガンだぜショットガン。それも銃口を短くした改造ショットガンだと思うな、アレわ。戦争でもショットガンで人を撃つのは禁止されているはずだが、団長はそんなモン関係なくって、ヘリコプターからでも地上の犯人らしき奴をショットガンで撃つ。誰に当たろうと関係なしだ。
スポンサーが日産で、「ウチの車を何台潰したっていいから、ガンガン映してくれ」との要望もあったみたいで、5年間の放送中に廃車にした台数が約4600台、使用した火薬が約5トン、使用したガソリンが12,000リットル、飛ばしたヘリコプターが延べ600機、壊した家屋が320軒、警察に提出した始末書が45枚。
石原プロが制作したドラマで、当時の大臣が石原慎太郎だ(運輸省か建設省)。そんな事が関係してるのか、銀座のど真ん中に戦車を走らせている。
とにかくデタラメなドラマだから湯水のように製作費を使い続け、億単位の赤字ドラマ。そこで石原プロが考えたのは「全国縦断ロケ」。それも大手広告代理店を無視して、全国の自治体と直接やりとりをした。これがバカウケして「オラの町にも来てくれ」との要望が殺到。なんせドラマのストーリーとはまるで関係なしに、出演者が突然「ハラ減ったよな」と言い出して、ロケをしている地域の食堂やら喫茶店に必ず入って飯を食う。今で言うご当地グルメを高視聴率のドラマで宣伝してくれるんだから要望が殺到するわ。更には地元の企業が捜査に協力してくれるとか言って、企業の社長さんやら社長夫人まで出演して、その企業の商品名を不自然極まりなく連呼するの。地方ロケの広島編では、広島での視聴率が49%だったとか。このロケで実際の広島市電を爆破してるんだよね。ヤジ馬・見物客が死ぬほどいる真昼間に。どんな世紀末ドラマだろうとコイツらには勝てない、超マッドポリスが西部警察なのだが、ご当地グルメやら観光地をドラマの中でガンガン宣伝しまくっていた。
話しが逸れまくっちまった。とにかく茨城のご当地愛が詰まった映画なのだろうな。名前という映画わ。調べてみると茨城の粟原のため池って市営の釣り場がヘラブナ釣りで有名らしく、映画の中で主演の二人が行った釣り場はココかもしれない。そして演劇部に所属している駒井蓮が稽古の時にズっと枕を抱ているのが気になっていたのだが、茨城にはオーダーメイド枕を作ってくれる店が589店もあるそうでビックリ。もしかしたら県民全員がオーダーメイド枕?? それに茨城の水戸って市民の芸術活動が盛んで、演劇フェステバルなんかも昭和40年代からズっとやってるみたいで、ちょっと演劇に興味のある俺は羨ましい。ボーリングなのだが、新天地「大学ボール」なるものがあるみたいだが、意味が分からん。新天地ってなんだろう? 大学ボールって? とにかく盛んなんだろうな、ボーリングが。
ここまで読むと、この映画は「たんなるご当地映画」と思われそうなのだが、そうではなく、ヒューマン系のミステリー映画だ。ヒューマン系と言っても「お涙頂戴」といった安っぽいものではなく、ジワ~とくる良い映画だと思うし、ラストが良いね。どうやって終えるのだろうかと思いながら視聴していたのだが、「おおお、そう来るかい」という爽やかで、それでいて「ガンバレよ」と応援したくなるラストだった。
ミステリー仕掛けとなっているのでネタバレは極力避けるが、津田寛治がいくつもの偽名を使う中年男役で、なぜ偽名を使うのか? という理由が明確にはならないが、俺は、何となくだが偽名を使う気持ちが解るような気がした。
この映画はいい映画だ。茨城の青年会議所が企画したものに、どうやって直木賞作家が乗っかったのか是非聞いてみたい。書籍未発表の書下ろしを提供するなんて凄いね。
追記
旅行が好きで、毎年、嫁と二人で全国のどこかに2泊3日程度の旅行をするのだが、茨城って一度も行ったことが無いし、今まで行きたいリストに入っていなかった。うん、茨城のオレンジジュースを飲んでみたくなったぞ。




