第46話 パンチドランク・ラブ
ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画をもう一つ書こう。
2002年製作のアメリカ映画で、上映時間は95分。この監督が撮った映画にしては短めで視聴しやすいとも言える……のだが、この映画こそ好き嫌いが分れるだろうな。
パンチドランクラブは恐らくは「強烈な一目惚れ」って意味なんだろう。そんな意味から想像できるようにジャンルとしてはロマンティック・ラブコメディに分類されるそうだが、どうなんだろう? これってラブコメか??
主人公はバリーという独身男性で、それを演じたのはアメリカのコメディ俳優のアダム・サンドラー、当時36歳。
アメリカのコメディって日本人からするとあまり面白くないってこともあって日本でのヒット作は少ないが、彼が主演したコメディ映画はアメリカでは軒並みヒットしていて本来のギャラは相当に高額な俳優さんなのだが、ポール・トーマス・アンダーソン監督に乞われ安いギャラで引き受けたらしい。
そのバリーに恋をするのがバツイチのリナ。演じるのはエミリー・ワトソン。イギリスの女優さんで当時35歳。彼女は1996年のデンマーク映画「奇跡の海」で映画デビューしているのだが、その映画での鬼気迫る強烈な演技が高い評価を受け、アカデミー賞主演女優賞にノミネートの他、ヨーロッパ映画賞年間女優賞、全米映画批評家協会賞、ニューヨーク映画評論家協会賞などを受賞した実力派女優。近いうちにこの奇跡の海は絶対に視聴したい。うん、凄いストーリらしいぞ。
そんでもってパンチドランクラブには俺が大好きな俳優フィリップ・シーモア・ホフマンも出演している。
この映画ーーパンチドランクラブの出だしは、「これってサスペンス映画? それともホラー?」と思ってしまうような始まりで、冒頭シーンが醸し出す雰囲気は決してラブコメじゃない。
そんで主人公のバリーは生まれ育った環境からなのだろうが、ちょっと変わってる、というか精神疾患のギリギリ手前って感じで決して女性にモテるタイプではない。そんなバリーに恋心を抱くのがリナ。
ちなみにポール・トーマス・アンダーソン監督は雑誌のインタビューで、「リナという女性はバリーのような男性のどこが良くって恋をしたんでしょうか?」という問いに対し、「逆に聞くけど、あなたの奥さんは、あなたのような男性のどこが良くて結婚したんですか?」と答えている。
この映画は「恋は唐突にやってくる。それは理屈ではない」を具体的に映像化したものなんでしょう。
上に書いたバリーの生まれ育った環境というのが強烈で、姉が7人もいるのだ。それもどの姉も口うるさいときたもんだ。実は俺も姉が一人いる。5歳年上の姉で昔っから姉貴風を吹かせるヤツで、あんなのが7人もいたらと思うと、正直ゾっとするし、バリーの姉たちに対する口には出せない不満やら苛立ちには大層共感したわ。調べてみるとポール・トーマス・アンダーソン監督自身が9人兄弟の3番目らしく、姉や妹が何人いたのかは分からないが、女兄弟の面倒くささみたいなものは実体験なんじゃないのかね?
この映画についてのネタバレを書くのは止めるが、3つの出来事が進行していく造りになっているが、その内の二つは実際にあった出来事を基にしている。
冒頭に好き嫌いが分れる映画だと書いたが、うん、俺は好きだな。
追記
主人公のバリーを信頼して受け入れてくれる人は、ヒロインのリナの他にもう1人いる。それはバリーの同僚の男性で、演じるのはルイス・ガスマン。この俳優さんの名前を聞いて顔を思い浮かべられる人は映画評論家になれると思う。だけど写真を見れば大半の人は知ってる俳優さん。プエルトルコの人なんだけど悪役以外やってんのこの映画で初めて見たわ。いや~~とにかく存在感がハンパねぇって言うか、そこにいるだけでメッチャ目立つし、背か比較的小さい割に顔がデカく、そして強烈な悪党ヅラで、真面目な顔しているだけで笑っちまうんだよな~~。うんうん、物凄いキャスティングだと思う。この映画ではそんな彼を見るだけでも一見の価値があると思うな~。




