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第43話 ロスト・イン・トランスレーション

 2003年公開のアメリカ映画で、監督はフランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラ。


 今までソフィア・コッポラが撮った映画をあえて選んで視聴した事などなかったのだが、この映画を切っ掛けに観てみたいと思うようになった。うん、とっても良い映画だ。

 蛇足だがソフィア・コッポラの従兄弟がニコラス・ケイジだそうだ。へ~~って感じ。


 題名にあるトランスレーションという言葉の意味だが、例えば日本語で「こんにちわ」を英語に変換すると「ハロー」になる訳だが、そのように内容は変えずに形式を変換する行為を指すらしい。っで、ロスト・インと付けば、変換したが抜け落ちてしまったナニか…みたいな意味なんだろう。


 この映画は2003年当時の東京を舞台としていてオール東京ロケ。当時のアメリカ人にとっては異国の地トーキョーで全く日本語が解らない男女が主役。それ故に日本文化を正確には理解できないという意味と、主役の二人がそれぞれ抱えているプライベートな問題を併せて、ロスト・イン・トランスレーションという題名なのだろうな。


 この映画はちょっとコメディタッチなラブストーリーで、俺はあまりラブストーリーが好きではない、のだが、非常に好きな映画の一つに加わり、もう一度観たい映画の一つになった。


 主役のボブを演じるのはビル・マーレイ。あの大ヒット映画ゴーストバスターに主役で出演していたので名前を知らない御仁でも顔を見れば大抵の人は判るはず。1950年生れだから2003年当時は53歳。監督のソフィア・コッポラが、「絶対にビル・マーレイでなければダメ!」とビルを追い掛け回して承諾を取り付けたそうだが、何故か契約書を取り交わしていなくって、ロケ地の東京にビル・マーレイが本当に来てくれるのかメチャクチャに不安だったそうだ。


 もう一人の主役:シャーロットを演じるのは俺が大好きなスカーレット・ヨハンソン。1984年生まれだから当時19歳。めっちゃカワイイから。

 ちなみにヨハンソンは自身のサイズを公表してるんだよね。身長が160㎝、体重が57㎏。アメリカ人女性の平均身長って162.2㎝らしくてそれほど大きくはないんだけど、この映画で大勢の日本人の中を歩くヨハンソンって、背も日本人と変わらなくって、極端に脚が長い訳でもないから、妙な親近感みたいなものを覚えちゃう。っで体重の方なんだけど、ヨハンソンってアベンジャーズみたいなアクション系の映画に多く出演してるから相当に鍛えた結果が57キロなんだと思うし、必要以上に痩せようとしていない体型が、「マリリンモンローの再来」って言われる彼女の最大の魅力の一つなんだと思うんだけど、ロスト・イン・トランスレーションのヨハンソンは、今よりもっとポッチャリしてて強烈にチャーミングだ。っで27日間の東京ロケで、うどんをしこたま堪能したらしく、「あれ……随分と身体に厚みがあるな。ちょっと腹出てない?」ってな感じなのだが、それも凄くかわいい。余談だが、この映画は、ピンク色のパンツ姿でうつ伏せに寝転がってるヨハンセンの姿で始まるのだが、日本食で身体が膨れ上がっちゃったヨハンセンは当初はこのシーンを拒否ってたらしい。っで監督のソフィア・コッポラがこのシーンがどのように見えるのかを実演して見せ、ようやっと決心したという。



 この映画は、製作も脚本も監督も全部がソフィア・コッポラなのだ。っでヨハンソンが演じたシャーロットにはモデルがあって、それはソフィア・コッポラ自身らしく、半自伝的な作品だと述べている。彼女は数年の間、東京でファッションや写真を学んでいたそうで、そこで感じた様々なものをシャーロットに投影させているのと、映画の中では仕事の関係で来日した夫について来た妻がシャーロットなのだが、仕事に忙しい夫にホテルで一人放っておかれるシャーロットが、元夫とソフィア・コッポラの関係を示唆しているらしい。


 ロスト・イン・トランスレーションはアカデミー脚本賞を受賞。ビル・マーレイはアカデミー賞主演男優賞にノミネート。そしてゴールデングローブ賞ではコメディ・ミュージカル部門で男優賞。ヨハンソンはゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門で女優賞などを受賞している。

 ソフィア・コッポラは1971年生れだから当時は32歳で、長編映画はこれが2作目なのだ。けっして親の七光りなんてものではなく、そうとうなセンス……カエルの子はカエルとも言いうが、父親のフランシス・コッポラとは映画のタッチが明らかに違い、彼女独自のセンスと才能なんだろうな。近いうちに彼女が撮った別の映画も絶対に観てみよう。



 それとこの映画を観て率直に感じたのは、「本当の日本が映っていて良かった~」だ。というのもハリウッドで制作された映画に出てくるに日本人や日本文化の大半が「これって中国だろ! っざけんな!」てな描写なんだけど、この映画はまともな日本だった。もちろん外国人の視点で描かれてはいるけど、見ていて嫌~~な違和感なんか覚えなかった。っで凄いのが、ロスト・イン・トランスレーションって題名にもある通り、「とにかく伝わらない」というコミニュケーションの難しさがテーマの一つになっていて、それが夫婦間であったり、文化の違い、言語の違いーー通訳も自分勝手に翻訳して伝えるから全然違った意味になっていたりと、伝わらない場面が多いのだが、この映画が海外で上映された際は、日本語の部分にあえて字幕なんか入れなかったそうだ。それも監督のこだわりだったと言うから凄いね。

 っで、もう一つ凄いと感じたのは、ビル・マーレイがヨハンソンを笑わせるシーンが随所に出てくるのだが、すし屋でのシーンでは、「彼は彼女を笑わせる」としか台本に書かれてなくって、全てがビル・マーレイのアドリブだったらしい。32歳の監督とは思えない大胆な台本と指示だよな。うん、これは確かにフランシス・コッポラの娘だわ。


 そして興味深いシーンがいくつか描かれている。

 先ず第1に「なるほどな~」って感じたのは、しゃぶしゃぶ屋でのシーンだ。寿司や天ぷらなどの日本食を楽しんで食べる二人なのだが、しゃぶしゃぶ屋では「客が自分で料理するのか?」と相当に驚いていた。うん、俺たち日本人ってシャブ、シャブって2回ほど湯通しして食べるのが「しゃぶしゃぶ」だから、それを当たり前に食ってるど、あれは確かに「自分で料理している」とも言えるな。うん、おかしなメニューだ。


 第2が、ヨハンソンが観光名所な寺を見学して、「お坊さんたちが歌っていた」と表現するんだけど、ちっとも理解できなくて泣いてしまうんだよね。宗教の一つの儀式だとは解ったんだろうけど、キリスト教文明とは全く違う文明で、予備知識の無い彼女には、知りたいのに知りようがないもどかしさみたいなものだったのだろうけど、だけど日本人があれを本当に理解できているかというと、欧米人とさほど違いはないだろうな。


 第3が、ヨハンソンがゲームセンターで遊ぶ日本人とそのゲームを興味深く、ずっと見ているシーンがある。このシーンって、さっきの神社仏閣と対比させているように感じた。要は、不思議の国ニッポンなんだろうな。


 この映画のラストは凄くいい。

 アメリカに帰るために空港に向かうビル・マーレイ。そんな彼が雑多の中にヨハンソンの後ろ姿を見つける。タクシーを止めて降りて行ったビル・マーレイがヨハンソンの背に声を掛ける。振り返ったヨハンソソン。人混みの中で抱き合う二人、そして彼が彼女の耳元で何かを囁く。するとヨハンソンの目から涙が零れ、そして頷く。ビル・マーレイはそんなヨハンソンの唇にキスをし、笑顔を見せてタクシーに乗り込み、空港へと向かう。


 そんなエンディングなのだが、彼が彼女の耳元で何と囁いたのか、というのがファンの中でもけっこうな話題となったらしく、コッポラは「台本には、寂しくなるよ、と書いただけ」と言っているが、当のビル・マーレイは「僕がなんと言ったのかは、絶対に誰にも言わない」と公言しているそうだ。


 ちなみにこの映画はラブストーリーなんだけど、ベットシーンやラブシーンは一切ありませんので、それを期待したスケベーな紳士・淑女は強烈な肩透かし食らう。


 追記:

 この映画で渋谷のスクランブル交差点が海外でも有名になったそうだ。それと20年前の東京ってあんなに外国人が少なかったんだってビックリ。

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