第4話 ドラマ版リング
意外と知られていないのが、この「ドラマ版リング」だ。
ちょっと今回はまじめに感想を書いてみる。
邦画のリングは1998年に続編の「らせん」と同時上映されているが、ドラマ版リングは1995年に2時間ドラマとしてフジテレビ系列で放映された。
そして邦画版リングが上映される1年前の1997年にVHSビデオが発売・レンタルもされている。しかし残念なことにDVD化は未だになされていない。確かにリングはビデオで観るべきだとも言えるので、もしかするとそこに拘っていたりもしてるのか…
邦画版リングとドラマ版リング、どちらが怖いのかについては色々と意見が分かれるところだが、俺は断言する。絶対に「ドラマ版リング」の方が怖い。あえて言わせてもらうと、ジャパニーズホラーの中で「ドラマ版リング」を超えるものは後にも先にもないだろうし、ホラー映画の金字塔と言われている「エクソシスト」にも勝るとも劣らない怖さだ。
余談になるが、俺はホラー映画が死ぬほど好きで、エクソシストは今まで何度視聴したか忘れるほどに観た。あの映画は凄い。だが、このドラマ版リングもスゲーーーーンだ。
原作は鈴木光司。
実は俺は1995年に放映されたドラマ版リングはその当時には観逃していた。又、邦画版リングも映画館まで足を運んだことはない。
簡単にドラマ版リングとの出会いを説明すると、ホラーが好きな俺は一時期ホラー小説を読み漁っていたこともあって「作者:鈴木光司のリング」を書店で偶然手に取り、そのままレジへと持っていったのだ。読んだ感想はというと、「この小説はヤバイ。観たら一週間後に死んでしまうビデオとは何だ? どうしても映像で観たい!」、そしてレンタルビデオ屋でドラマ版リングを借りて視聴し、更には我慢できずに購入までしたのだ。未だに持っているぞ、VHSビデオのドラマ版リングを。どうよ、すげーだろ。
ドラマ版リングと邦画版リングは原作が同じでありながら色々と違う。邦画版リングを観た時には俺は「はぁぁあああああ??!! なんだこれ…」と頭にきたもんだった。違いを簡単に説明しよう。
【映画版リング】
監督:中田秀夫
脚本:高橋洋
浅川和行役:なし
浅川令子役:松島菜々子
高山竜司役:真田広之
高野舞役:中谷美紀
大石智子(物語冒頭で苦悶の表情で死ぬ女子高生)役:竹内結子
山村貞子役:誰だかよくわからない
【ドラマ版リング】
監督:瀧川治水
脚本:飯田譲治
浅川和行役:高橋克典
浅川令子役:なし
高山竜司役:原田芳雄
高野舞役:浜田万葉
大石智子(物語冒頭で苦悶の表情で死ぬ女子高生)役:雛形あきこ
山村貞子:三浦綺音
映画とかドラマは監督もさることながら脚本で決まるとも言われているが、このドラマ版リングの脚本は、あのNIGHT HEADの原作・脚本・監督を手掛けた飯田譲治だ。俺はもうこの時点で勝負ありとみた。
次に大きな違いは、原作通りにドラマ版リングでは浅川なる人物が男なのだが、邦画版では何故か浅川令子なる女に変わっていた。原作を読み返し、邦画版を再び視聴しても、なぜストーリーのメインとなる人物の性別を変えたのか全くもって分からない。もしかするとだが、この当時から日本映画は制作委員会方式を取り入れており、ご多分に漏れず邦画版リングも「リング制作委員会」というテロップがエンドロールに出てくる。制作委員会方式は日本映画をクソつまらないものしているとの悪評が未だに絶えない。やはり制作委員会の組合員は投資家というよりスポンサーだから、そのスポンサーから何かがあって脚本をいじってまでも松島菜々子を起用、というような邪推をしてしまう。
又、当時の高山竜司役の原田芳雄は、松田優作が憧れ演技や発声までもを真似た大物だ。1998年当時の真田広之ではやっぱり軽い。
それとドラマ版リングと邦画版リングの最大の違いは、なんと言っても「視聴者に対し何をもって怖がらせるか」だ。邦画版の方は、これはあくまでも俺の個人的な感想だと前置きをするが、「貞子」だ。貞子が濡れた長い髪の毛によって顔が見えない状態で井戸から這い出てギクシャク歩く化け物。こいつにビデオを観たヤツが殺される。これが観ている者に対し恐怖を与える。しかしドラマ版の貞子はそうではない。半陰陽(両性具有)という悲劇的な身体をもって生まれた見た目は美しい女。そういう設定の貞子を三浦綺音が物悲しくも妖しく演じ、見事で美しい裸体まで晒した。
それではドラマ版リングは何が怖いのか? そのものズバリ「貞子が念写したビデオの映像」だ。ドラマ版リングではその「念写ビデオ」の映像を全て映すのだ。念写だから当然画像が荒く、なんの脈略もない静止画像だったり動画だったりが続くのだが、俺は小説を読んで活字からイメージしていた「念写ビデオ」が見事に再現されているのに正直恐怖を覚えた。余談だが、俺は自分の友人に「ドラマ版リング」を貸したことがある。「すっげー面白いから観てみろ」と。そいつは小説など全く読まない男で、テレビで放映されたドラマ版リングも観ていないヤツだったが、次に会った時にこのように言っていた。
「ヤバイってあれ……マジ怖ぇぇよ……あれってなんなのよ? あのビデオの映像だって。まさか俺…一週間後に死んだりしないよな」
そうなのだ。ドラマ版リングは視聴者に登場人物と同じ恐怖を体験させるのだ。最初に死んだ雛形あきこ、そしてやはり助からなかった原田芳雄、それら不条理な死を目の当たりにして、怯え、駆けずり回る高橋克典と同じ恐怖を。
語弊があるだろうが、邦画版リングは同時上映された「らせん」の為に急ごしらえで制作された映画のように感じる。ちなみに「邦画 らせん」を調べてみて驚いた。監督、脚本ともに飯田譲治だった。確かに「邦画 らせん」は面白く、複数回視聴したが「邦画 リング」は再び観たいとはあまり思わない。この違いは飯田譲治にあると俺はみる。