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第32話 フロッグ

 2019年製作のアメリカ映画、なのかイギリス映画なのかよくわからない。というのも舞台はアメリカでアメリカ人俳優が殆どなのだが、配給がクロックワークスというイギリスの映画配給会社だからどうにもハッキリしない。映画を視聴した俺は「これはイギリス映画だろうな」という印象を持って調べたのだが、ネットの大半はアメリカ映画だとしている。

 又、この映画の分類を「ホラー映画」として案内しているサイトもあれば「スリラー、サスペンス映画」としているものだけではなく「ミステリー映画」と案内しているものもあり、おそらくは全てに当てはまる映画だ。


 原題は「I see you」だ。

 フロッグというのは邦題なのだが、一般的に使わている「カエル」という意味とはちょっと違う。

「ピョンと跳ねて、そしてまたピョンと跳ねるのがカエル」だから、そういった行動を「人の行動様式」に例えた使い方がアメリカにはあるらしいのだ。

 解りやすく言うと「他人の家庭にバレないように忍び込んで密かに暮らす行動」をフロッグと呼び、それは当然一つの家に長居なんかできないから、バレないうちに次の家庭に「ピョン」とーーまるでカルが跳ねるように移動するからそんな名前ーーフロッグ又はフロッキングと呼ばれているらしいのだが、当たり前に犯罪だし、家が狭い日本ではムリだろうな。


 そんな前置きなどどうだっていいのだが、この映画はとにかく良くできた映画だ。


 映画の構成は日本映画の「カメラを止めるな」的な構成になっているのだが、なんと言っても「カメラワーク」と「音楽」の使い方が凄い。

 映画の冒頭からカメラワークと音楽だけで一気に視聴者を引き付けてしまう。そうなのだ、まだストーリーなんてまるで解らないうちから、何かが起きそうで目が離せなくなる。

 最初に出てくる少年が自転車に乗っているんだけど、その少年をカメラが追いかけて行く訳だが、その追い方が何とも「ザワっ」とするんだよね。音楽もそんな視聴者の不安を掻き立てるのに十二分な効果のあるものを使っていて、そこだけでも監督のセンスが光る映画だ。


 監督はアダム・ランドールというイギリス人。

 1980年生まれだから当時39歳、って結構若いこともあって、この映画以前に撮った有名どころは無いみたいだ。


 脚本はデヴォ・グレインという1987年生れのアメリカ人で俳優さんだ。

 テレビドラマに随分出演していたみたいで、CSIやアメリカンホラーストーリーにゲスト出演しているので写真を見れば「あ~~この人見た事あるわ」って人なのだが、この映画ーーフロッグの脚本を書いたらしい。多才だよな~。


 音楽担当はウィリアム・アルケインという人らしいのだが、全く情報がないので無名の人なのかな~? それにしてもフロッグという映画の不気味さに最も貢献してるのはあの音楽だと思うんだけどな~。


 撮影はフィリップ・ブローバック。

 この人が撮影した映画を調べてみると、2009年製作の「アリス・クロードの失踪」イギリス映画が有名らしく、監督のJ・ブレイクソンが大勢の批評家から「とんでもないヤツが現れた」と大絶賛されていた。ネットでこの映画の冒頭5分があったので視聴したが、「ああ、このカメラワークはフロッグのカメラワークに似てる」と感じた。だから「アリス・クロードの失踪」って映画の功労者はフィリップ・ブローバックなんだと思う。しかし俺は大絶賛された「アリスクロードの失踪」より「フロッグ」の方がカメラワークに磨きが掛かってて「凄い映画に仕上がってる」と思ったね。ただ、アリスクロードの失踪は未だ視聴していないので近いうちに絶対に観る。


 話を映画ーー「フロッグ」に戻すが、張り巡らせされ伏線の数が多い。上記に書いた「自転車に乗った少年」をカメラが追っていき、「いったい何が起きるんだ?」ってな具合に息を詰めて観ていると、次の瞬間には、俺は一緒に観ていた嫁と二人で「ああああ!!」って声を上げちまった。唐突にアクシデントが起きちまうのだが、それが何を意味してるのか全然解らない。要は映画の後半にならければ解らない伏線の一つなのよ。

 他にも伏線はいっぱいあって、いや~~よくできた構成だ、っていうか、隙の無い作りになってるのに感心するわ。

 伏線がいっぱいあるミステリー映画で意外と多いのが、力技っていうのか、最後は「えい、やーー!」って感じの無理やり感がどこかにあるような強引な展開ーー雑な部分があるものが多いのだが、それが無い映画だ。

 ちなみに、この映画に描かれているフロッキングについては日本の漫画から着想を得たんじゃないのか? ってコメントをネットで見かけたが、映画「フロッグ」の本筋はフロッキングではない。だからフロッグという邦題を考えたヤツは結局は無意味で見当違いな題名を考えた薄らバカ野郎だし、日本の漫画から着想を得たという批判も「木を見て森を見ず」ってものだろうと俺は思うぞ。


 メインの登場人物は3人の家族だ。

 父と母と息子の3人なのだが、父は警察官、母は精神科の医者なのかな~? もしかするとセラピストかもしれない。そして息子は高校生ぐらいだと思う。

 一人息子の母であり夫にとっての妻は、過去によその男とヤっちゃってんだよね。そう浮気。それも結構な期間やっていたと思われる。そしてそれを夫も息子も知ってるって設定。

 息子なんて「父さん以外の男とヤりやがって」って母に面と向かって言うし、母であり妻であり、だけど女でもある事を息子に責められる母親は夫には「ほんの過ちなの。あなたを愛している事には変わりはないの、許して」というが意外とケロっとしてて、父はそんな「誰かとヤった妻」を許す訳でも許さない訳でもなくって、それでも3人で一緒に暮らしてる変な家族なもんだから、観ているこっちは誰にも感情移入できない。

 後でよくよく考えてみると、この家族の設定って凄い設定なんだよね。家族の崩壊とか再生をテーマに1本の映画を作れそうな設定なんだけど、この映画のメインストーリーはそこじゃないから、やっちまった妻が、寝取られた夫が、母が実はヤリマンだと分かった息子がその後どうするのかなんてものは、どーーだっていいって感じに完全放置。

 未だこの映画を観たことの無い紳士・淑女の中には、俺が書いた「変な家族」の部分を読んで、「なにそれ? 全然観たいと思わないんだけど」って感じてしまう人もいるかもしれないが、この映画のメインはそれじゃないから。うんうん、観て損をしないサスペンス映画に仕上がっているのは間違いない。


 ヤっちまった妻を演じるのはヘレン・ハント。

 1997年の映画「恋愛小説家」でアカデミー賞主演女優賞獲得。そして1999年の映画「ハート・オブ・ウーマン」でメル・ギブソンとダブル主演を果たしたのが有名。

 彼女は1963年生まれだから「フロッグ」の時は56歳。いや~~どうなの? 高校生の息子がいるヤっちまった妻にはちょっと無理がないかね?

 若い時は極端な美人ではないものの、けっこう綺麗な顔立ちだったのが、この映画の彼女は口元がヤバイ。元々がペラッペラの薄い唇だった女優さんなのだが、その唇の周りに「たて皺」が何本も出来ちゃってて、その部分だけを見るとまるで入れ歯の婆さん。

 一緒に観ていた俺の嫁は次のような事をずっと呟いていた。


「こんな婆さんが浮気? 無理でしょ。どんな男がこんな婆さん誘うの?」


 まるで、アタシの方が男から100倍誘われる女だわ、って言ってるようだった。

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