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第16話 海外ドラマ リリントン・プレイス エヴァンス事件

 イギリスBBCが2016年に制作した3話で完結する実話に基づいたドラマだ。

 このドラマは怖い。

 しかし犯人は直ぐに解るし、謎がある訳でもなく、何人もの女性が殺されるのだがハリウッド映画のように派手な演出などないから「どうしよう、あの女の人、殺されちゃう……」的なハラハラドキドキものでもない。イギリスの映画やドラマ特有の淡々とした映像なのだが、それが返ってじわじわとくる。

 連続殺人鬼が主役なのだが、犯人とは別の人が冤罪で逮捕されたあげく死刑が執行されちゃった、という事件がイギリスで実際に起きていて、この映画の題名にある「エヴァンス」というのが冤罪で死刑になっちまった不幸な青年の名前だ。

 ちなみに現在のイギリスでは死刑制度は廃止されているのだが、この冤罪死刑執行事件が大きく影響している。


 主演はティム・ロス。

 俺にとってのティム・ロスといえば米国FOXで2009年から2011年に放映された「ライ・トゥ・ミー嘘は真実を語る」だ。この時の彼の役柄は心理学の博士で「一瞬の表情や動作で嘘を見破る」技術を用いて犯罪捜査に協力するといったもので、実在する精神行動分析学者をモデルにしていたようだが、かなりの変人として演じていた。そんでもって2001年には米国映画「猿の惑星」でボス猿だったらしい。特殊メイクだからティム・ロスだとは全然気づかなかったが、知った後は妙に「あ~~そうかも、あの猿はティム・ロスだ!!」って思ちゃう。ついでに言うとこのボス猿は相当に気難しかったような。まぁ猿なんだからゲラゲラ笑ったりはしないだろうが。


 話をエヴァンス事件に戻すが、ティムはレッジと呼ばれる中年男を演じているのだが、頭が波平ハゲなのだ。おまけに黒縁の丸眼鏡をかけてるもんだから見た瞬間「あれ~~波平さんだ」ってな印象で、このドラマはジワジワくるホラー的な要素が強い作りなのだが、ハゲ頭に見慣れるまでちょいと苦労した。


 題名にあるリリントン・プレイスというのは、ロンドンにある地名らしく、そこの10番地にあるアパートに嫁のエレスと二人で住むのだが、明らかにサイコパスなんだよね、レッジが。

 嫁のエレスはというと…どうなんだろう? エレス本人が殺人を犯す訳でもないし、夫の殺人現場を目撃する訳でもないのだが、「夫が殺人犯だろう」とうすうす気づくんだけど裁判では嘘の証言をしてまで夫を庇うんだよな。

 まぁ実際にあった事件を基にしたドラマだから事実通りにエレスも殺されちゃうし、その事件自体も1940年から1950年に起きたものだから、嫁のエレスが「夫が殺った」と考えているのにその夫と同じベットで一緒に眠る神経が解らないのだが、深掘りのしようがないのだろう。推測だがエレスも頭がちょっとおかしかったと俺は思っている。


 そして嫁まで殺しちまったレッジはタガが外れたのか次から次へと女を自宅に連れ込んではかたっぱしから殺しちゃう。一緒に視聴していた俺の嫁なんて「はぁああああ?? なんでこんなハゲについて行っちゃうの? それも女一人で男の部屋に」って言ってたんだけど、それが事実なんだからしょうがない。おそらくだけど「こいつはいける」って見抜ける才能みたいなものがあったんだと思う。だけど連続殺人を犯す動機が全く分からない、というか描かれてはいない。間違いなくサイコパスだったろうから、あえてそれ以上の動機ーー「殺したいから殺す」以外の動機は必要ないとして描かなかったのか? これは後で書くが、俺は「殺すことによって満たされる欲求」があったのだと思う。

 そして凄いのが、殺した女をーー何人殺したのか忘れたけど一人は中庭に埋め、あとは部屋の壁や床を剥がして死体放り込んで、そして塞いでの繰り返し。そうとうに雑なんだよね。


 脳科学者の中野信子ーーIQ140越えの超天才ーーがサイコパスについて書いた本を読んだことがあるのだが、レッジは見事に当てはまる。

 まず「嘘をつく」。それも巧妙な嘘ではなくって少し調べれば簡単にバレてしまう嘘を平気でつく。それを何度も何度も、それこそ息を吐くように嘘をつく。これって思考回路がやっぱり狂ってて、「バレるかもしれないから、もっと巧妙に…」というような事が考えられないらしい。だから殺人にしても「バれたら捕まるから、バレないようにしよう」というような学習能力が欠如しているケースが多くて、中野信子氏は「負け組のサイコパス」と呼んでいる。そんでもってプレゼン能力が高い。要は嘘で塗りかためた話を当然のように喋るから、面接重視の採用試験なら合格率は異常に高くなるそうだ。

 実際に「トルコ人の宇宙飛行士」だと名乗る男が東京大学の助教授を務めていたらしいのだが、見事な経歴詐称で、インターネットが普及していなければバレなかった可能性もあったとか。


 サイコパスっていのは長年「謎」だったが、脳科学の発達でようやっと少しずつ解明されてきて今があるという。

 そしてサイコパスが先天的なのか後天的なのかについては、どうも生まれつきって説が有力なんだけど、やっぱりグレーな人間っているらしくて、そういった人間は何かの切っ掛けがあって完全なるサイコパスーー要はグレーゾーンから突き抜ける事になってしまうらしい。

 このドラマの基になった実際のレッジは元々はグレーだったのだと思う。というのも調べてみると、初体験は経験豊富な女性とだったらしいが上手くいかなくってそれをバカにされ、更にはその事実を言いふらされ「玉なしレッジ」という酷いあだ名までつけられたせいで不能になったらしい。そこら辺が切っ掛けじゃないかな。だったら「レイプ殺人って変だろ」って思う人も多いだろうけど、このドラマを観る限りでは「部屋に連れ込んだ女をレイプする」ような描写は無い。

 もしかすると「自分をバカにしない女ーー死体相手にしか出来ない」男なのかとも思ったが、殺された女性の検分ではそいういった痕跡はなかったという。

 そして妻のエレスとの間に子供はいない。だが夫婦なんだから結婚当初から旦那が不能ってあり得ないだろうけど、エッジは結婚前に第一次世界大戦に召集されていて大戦終結後に結婚しているのだが「戦地でガスを吸ってダメになった」と妻に言っていたという説もある。それにしても「ああそうなんだ、不能なんだ。わかったよ」って感じで結婚生活を継続させる女性っているかね? 俺の嫁なら絶対にしねぇな。 とにかく妻のエレスもなんだか変だし、どうなんだろう? そしてレッジが警察に捕まり取り調べを受けている時に複数人の陰毛を隠し持っていたのが発見されて尋問されるんだよね。それについては答えないんだけど、おそらくは戦利品だろうな。

 前に書いた「殺すことによって満たされる欲求」っていうのが、エッジが不能だったことに深く関係していると思う。

 話が少し逸れるが、放火犯の7割だか8割ーーそれ以上だったか忘れたが男なんだよね。女の放火犯って極めて少ないらしい。これって性的興奮と連動するらしいのだが、「火をつける、放火する」ことが異様なほどの性的興奮ーー性行為以上の興奮に結びついてしまう人がいて、その割合が圧倒的に男性が高い。有害性が極端に高い性的倒錯者という事が言えるのだろうが、エッジにとっては放火犯の「火をつける」行為と同等な行為に「女を殺す」行為であり、それってやっぱり不能になった事と無縁ではなのだろう。


 併せて、第一次世界大戦が始まり召集されたことによって、その期間は殺人鬼とならなかった、って解釈している人たちもいるが、俺はそうは思わない。こいつなら戦争をいいことに相当な事やってるはずだ。どうやら男を殺す事では欲求が満たされないようだから、戦地で民間人を見つけては同様の行為を繰り返していたと思う。


 サイコパス最大の特徴が「人の痛みを理解できない」だ。これってやっぱり「脳のネジ数本」が生まれながらにして欠けているから起きている症状で、治療できるものではないのだろう。但し、前途の中野信子氏によれば、人生経験の中で他人の反応をうかがいながら成長し「人の痛みを理解しているふり」をするサイコパスが稀にいるという。それが「勝ち組のサイコパス」で犯した殺人にしても巧妙に隠蔽する能力を持っているらしい。


 話がかなり横道に逸れまくってしまったが、このドラマは怖い。淡々と描きすぎているせいで、それはまるで作業をしているように女を殺す姿を淡々と描いているようで、怖い。そしてティム・ロスの演技が「ひたすらに気味が悪い」。


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