第13話 ウォント・バック・ダウン
2012年制作のアメリカ映画で、マギー・ギレンホール、ビオラ・デイビス、ホリー・ハンターといった実力派女優が揃った作品なのだが、日本では劇場未公開だ。おそらくレンタルDVDで借りれることもできるだろうし動画配信でも視聴することが可能だろうが、邦題が酷すぎるせいで敬遠されているだろうな。
ちなみに何年前か知らないがWOWOで放映されたらしく、再放送をしてくれとの希望が多かったと何かで読んだ。
話を戻すが、この映画の邦題は「ママたちの学校戦争」ときたもんだ。この題名を知って、「おおお、これは絶対に観たいぞ!」って誰が思うんだ? 殆どの人は「B級コメディのドタバタ映画だろ」って思うはずで、邦題を考えたヤツの悪意すら感じるわ。
原題にあるバック・ダウンーーback downは「引き下がる」とか「撤回する」という意味だ。次にウォントーーwon'tと書くがwill notの短縮形で「強い拒絶」を意味する言葉だから、この映画の題名は「私は引き下がる事を断じて拒絶する」とか「一歩も下がらねぇぞ!」という意味だろうな。そうなのだ、この映画は何かに対して強い意志を持って戦った映画で実話を基ににしている。だから確かに「戦争」という言葉を使う事は間違いではないだろうが……邦題のママたちの……これはないだろ。
映画の内容を簡単に説明するが、主役のマギーが演じるのがシングルマザーで確か小学3年生のマリアという名の娘がいるのだが、そのマリアが通っている小学校が強烈に酷い。住んでいる地域も貧困エリアなのだろうが、その中でも超底辺小学校。マリア自身も読字障害を患っているらしいが本人は勉強をして読めるようになりたいという意思をしっかりと持っている女の子。それなのにやる気のない教師どもがまともな授業なんて全然やらないから、この小学校では7割の生徒が字を読めないままで卒業していくという恐ろしい実態があるのだ。そんなんだからこの学校の落ちこぼれの数で刑務所の監房数が決まるらしい。
そもそも、そったらやる気のない教師たちがどうして存在していられるのかというと、教員組合で守られているからで、子供のことなどまるで考えていないーー自分の生活が保障されていればそれで良しとしている輩が教師をしており、マリアが教科書を満足に読めない場面では、女の担任は教える事もせずに、どうしてこんなにバカなのって感じを露骨に出すもんだから、周りのガキどももマリアをバカにするんだよね。視聴しているとマジで腹が立つぞ。
主人公が、娘が通う小学校をなんとか改革しようと署名活動したり、委員会に提出する改革に必要な膨大な書類を作成しようと奮闘するんだけど、やる気のない教師どもは「自分たちの今の環境が変わってしまう」事に異様なほどの嫌悪をーー恐怖なのかもしれないーー示すんだよね。そのあげく主人公の娘であるマリアにも嫌がらせをするの。担任なのに。マリアが授業中にオシッコがしたくなってそれを訴えたんだけど、「女の子なんだから我慢できるでしょ」みたいな事を言ってトイレに行かせないもんだから教室で漏らしちゃうんだよね。
ビオラ・デイビスは教師役で旦那とは離婚しててシングルマザーなんだけど、障害がある一人息子がいる役どころで上記のマリーが通う小学校の教師なんだよね。そして主人公がビオラ・デイビスに「一緒に行動を起こして学校を変えよう!」と盛んに説得するのだが、職場での自分の居場所が無くなってしまうことが明らかなために最初は渋るの。だけど孤軍奮闘している主人公の姿を見ているうちに、とうとう立ち上がるんだよね。その結果「学校はクビ」。そうクビになるの。改革を嫌う凄まじいほどの保守思想が背景にあんだろうけど、アメリカってこんな事が許されるんだ、ってかなり驚いたな。だけどビオラ演じる教師が凄いんだよね。「クビになったらもう恐れるものは何もない」を地で行っちゃって、校長から何を言われようと真っ向勝負。うん、戦う女はカッコぇぇし、母は強しだ。
そして最後は学校改革のための諮問委員会で投票にまで待ちこんで勝つんだけど、いい映画だと思ったし、「絶対に諦めない。一歩も引かねぇぇぞ!」という熱いものが伝わってくる映画だった。
追記するが、ビオラ・デイビスーーヴィオラ・デイヴィスと書くのが正当らしいがーー1965年生れのアフリカ系アメリカ人。今までも何度か映画や連続ドラマで見たことのある女優なのだが、歩き方が独特でーーとにかく逞しい歩き方をする女優のために、俺は元格闘技系のスポーツ選手かもしれないな、と思っていたが全然違った。
ちなみにビオラは演技の三冠王ーーアカデミー賞、エミー賞、トニー賞のそれぞれの演技賞を受賞した唯一の黒人俳優だ。
余談になるがビオラは連続ドラマ「殺人を無罪にする方法」で主演だったんだけど、この女優の演技に対する姿勢は凄かった。映画やドラマで眠っているシーンや朝起きるシーンって珍しくない。しかし、そのシーンを演じるのが女優となると、化粧をバッチリしてるまんまで瞬きししたらバサバサ音が聞こえるほどの睫毛で寝てるんだよね。特に酷かったのが海外ドラマ「ゴースト」で主役だったジェニファー・ラブ・ヒューイットだ。今でこそかなりまともになったような気がするけど、このドラマに主演している時の彼女の化粧は強烈に厚かった。その状態で寝るんだもんな。ドラマといえどもあれはないだろ。
だけど「殺人を無罪にする方法」の時のビオラは凄かった。あれは絶対にノーメイクだった。ゴースとのジェファニーに対しても「ゲ…」っとなったが、「殺人を無罪にする方法」のビオラには「……」だった。
それと最後に付け加えるが、「殺人を無罪にする方法」のビオラはとにかく笑わない女で怖い顔ばかりしてたのだが、この映画ーーウォント・バック・ダウンのビオラは真剣な顔のシーンも多いのだが、笑顔のシーンも沢山あって、笑ったらとてもチャーミングな顔をしているのだと改めて知ったわ。うん、かわいい。




