始まりはテンプレ
調子にのって勢いで書きました
後悔はすると思います
「知らない天井?……かなぁ?」
思わず現実逃避してしまった。 『目覚めたら知らない世界でした』なんて小説じゃあるまいし、自分が体験するなんて理解が追い付かない。
よし、記憶を整理してみよう。
トラックに撥ねられた記憶はない。
ブラック企業で身体がボロボロだった訳でもない。
子どもの頃から身体が弱くて入退院を繰り返したりの闘病生活だったとかでもない。
――うん、死んだ心当たりはないな!
真っ白な空間で女神様に「世界を救って」と言われていない。 まぁ神様にも女神様にも会っていないのだが。
また、令嬢っぽい人に「私の代わりに」とお願いされてもいない。
そもそも私はネット小説は好きだが、ゲームは黄色い大きなトリとモグラコウモリが出てくるヤツとか『おお勇者よ。死んでしまうとは情けない』系の物しかやったことがない。 乙女ゲームなるものは見たこともない。
とりあえずベッドから降りて辺りを見回すがネット小説によくある鏡が見当たらない。 自分がどんな姿をしているか興味があったので、鏡を探して部屋の中をうろついていると大きな扉がノックされた。
「はい」と返事をしてしまったら、扉が開いて女の人が入ってきた。
彼女は金髪をきつめのシニヨンに纏めて、黒いロングワンピースの上にフリルのついた白いエプロンの様なものを着けていた。 瞳の色は綺麗なコバルトブルーだ。
彼女は私の方を見て声をかけてきた。
「お目覚めですか。お嬢様」
おお、異世界転生テンプレの台詞! おらワクワクすっぞ!と思いながら彼女に尋ねた。
「えっと、ここは何処で私は誰でしょう?」
彼女は一瞬大きく目を見開いたが、直ぐに真顔に戻った。
「暫くお待ちいただけますか」
そう一言だけ答え一礼して部屋を出ていった。
仕方がないのでソファーに座って待っていたら、先程の女性が年配のロッテンマイヤーさんみたいな人と一緒に入ってきた。
ロッテンマイヤーさん(仮)は眼鏡の細い縁を片手でクイッと持ちあげてから私に聞いてきた。
「今お嬢様の中にいらっしゃる貴女のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
『お嬢様の中にいらっしゃる貴女』って私の事ですよね。 はい、私の名前は……
―――あれ?私って誰だっけ???
少し手直ししました(2022年1月16日)
内容は変えていません
本編終了したので手直しに入ります
今日(3月26日)からリーゼロッテの前世(黒崎讃良)が主人公の話の連載を始めました
異世界転生の話ではありません
『délicieuse vie』
https://ncode.syosetu.com/n9399hn/