人の会 林の柱 陰陽師ー②
「それは、その証拠は……。」
「早く言え!!」
神崎が、陰った悪い顔で言う。
「警部全員に、盗聴器を仕掛けた。」
「えっ!?」
「やはり、気づかなかったか。」
冷たく笑う神崎からは、感情と感じられなかった。
「ど、どのタイミングで!?」
明らかに、亜門がひきつった顔で言う。そろそろ、化けの皮が剥がれるな。
「1人ずつ解説してやろう。天笠は手を引っ張った時に、腕時計に着けた。」
「な、あんな短時間で、そんな馬鹿な!?」
狐につままれたような顔をした天笠が、愕然とする。
「まぁ、とりあえず最後まで聞け。
観音寺は、話している最中に不自然にならないよう、髪止めに着けた。
空蝉は、掴んだ時に手についていたきらびやかな指輪に。
小鳥遊は、捜査資料を見ている時に制服に。
アバラは、掴んだときにネイルに。
近衛は、賭けの時にサイコロに。
最後は、亜門は、婚約指輪に。」
「だが、盗聴器7人分、どうやってその内容を聞いたんだ!!」
「白鯨っていうやつは、表立って活躍しない天才ハッカー。だから、お前たち知らないだろう?そいつはな、いろいろなアプリを作ってる。その中に、音声解析ソフトと言うのがある。」
「そ、そのソフトが何だと!?」
亜門の声が裏返る。必死で否定するその姿は、醜いものだ。これで人格者なら、まだ俺の方が近いだろう。
「そのソフトは人間の言葉だけを文字起こししてくれる。AIのディープラーニングを使ったもので、まぁ、Siriの進化形のようなものだよ。」
「う、嘘だ!?私が追い詰められるわけ……。」
「ふーん、」
「お前の負けだよ、亜門!!」
神崎が歩み寄る。徐々に近づいてくる銃口に、亜門はニヤリとした。