人の会 林の柱 陰陽師ー①
銃が指した先を、みんなが振り返る。振り返った先には……。
「おいおい、僕がやったって言いたいの?」
その先には、亜門晴明がいた。
「いやいや……。こいつは、ありえない。だって、こいつは人格者として有名だろう。神﨑、お前、休んでいる間に狂ってしまったか?」
天笠の言葉につられて、次第に周りの刑事も次々と疑い始める。それは徐々に、罵声へと変わっていった。
「はー、揃いも揃って、お前ら全員、バカだな。少しは、頭を使って考えてみろ。」
神﨑のその声が、刑事たちの反感をさらに買う。セミの鳴き声よりもうるさく、わめき散らかす刑事たちに鬱陶しいということしか、神﨑は思わなかった。
それを無視し、神﨑は話し始める。
「証拠を提示する。その証拠ってのは、お前らの目の前で全て行っている。」
「言ってる意味が分からない。」
天笠の冷たい言葉だけが響く。その反応に、イライラしていた1人の男がついに叫んだ。
「お前はRなんだろ!!こいつら無視して、話せや!!」
それは、空蝉だった。静かになったその空間で、神﨑は返答した。
「いや、それはできない。なぜなら、雨宮さんに、俺はお前らの教育係をしてくれ、と頼まれているからだ。」
「はぁ?」
衝撃の事実に、沈黙が続く。
「まず、天笠。お前は、雨宮さんの言葉の意味を履き違えている。今、現在、現場で活躍している人という中に、警部は入っていない」
「おいおい、それはどういうことかな?」
亜門が、神﨑に尋ねる。銃を向けられているのに落ち着き払った彼に、誰も異常だとは思わないのか?
「今、実際、事件の前線で活躍しているのは、俺、霧谷、北鯨の3人だけ。あとは戦力外だ。あれは、雨宮さんがお前たちに忠告をこめて言った言葉だ。」
「おいおい、妄想が過ぎるぞ。」
天笠や亜門が、呆れたように言う。
「証拠ならあるぞ。これは雨宮さんから、受け取ったメールだ。読んでみろ。似たようなことが書いてある。」
その文面は、今の警部の事情について書かれていて、神﨑にそれを頼みたいとのことだった。
「メールの説明はここまで。証拠について気づいたやつは……、小鳥遊1人だけ、か。」
「早く、その証拠を言え。」
普段、無機質なアバラから言葉が出たので、周りは驚いていた。が、すぐに、話し始めた神﨑の方を向く。
「それは、……」