語彙力ゲーム!
二人の男子高校生が、暇を持て余していた。
そよそよと風が彼らの髪を撫で、温かな日差しに包まれ、安らぎを感じていた。
「暇じゃね?」
『死にそうなくらい暇』
「なんかゲームしようぜ」
『いいぜぇ…』
「なんかねーの」
『せっかくだからゲーム考えようぜ』
「天才じゃん」
「とは言ったもののゲームってどうやって作んだ」
『企画・設計から』
「外注でもするんか?」
『うーん、じゃあしりとり的なさ、口だけあればできるようなゲームにしよう』
「いいね」
『言葉の一番後ろをつなげていくゲーム』
「もうある」
『口使うとボキャブラリーが必要になるな』
「語彙力を試そう」
『語彙力』
「芸人とか清少納言とかって言い例えめっちゃするじゃん、そんな感じにしよう」
『芸人と清少納言を同じ土俵に立たせるな』
「語彙力ゲーム!どんどんパフパフ」
『その盛り上げ方する奴、現実で初めて見たぞ』
「俺も初めてしたしめっちゃ恥ずかしいな」
『で、どうしようかルール』
「何気ない会話を自分が持つ語彙力MAXでしよう」
『してみるか』
「き……本日はいいお天気ですね」
『まことにまことに………いかがいた、しますこと?』
「タイムですわ」
『んだよ』
「ただのお嬢様じゃん」
『ちょっと思った』
「駄目だなー会話は、貴族の会話になる」
『なんかテーマ決めて、それをどんくらいエモく言えるかにしようぜ』
「いいじゃん」
『じゃあテーマは、"青春"』
「青春ってすでに字面エモくね?」
『その年で悟るなよ』
「できた?」
『できたできた』
「じゃあ俺からね、えっと…【夏空の入道雲、サッカー部の汗きらめく】」
『あいつらめっちゃ汗くせぇじゃん』
「女子サッカー部とかなら全然ありだな、でもこれよくアニメとかで描写されんじゃん」
『それな。じゃあ俺な。【二月のマフラーと髪、バレンタインの校舎裏】』
「喧嘩?」
『どう考えてもちげぇだろ。』
「何お前、そういう経験あんの?」
『無いんだなぁこれが!』
「泣くなよ」
「結構いいんじゃね?これ」
『いやいいよいい感じだよ。お前がそんなポエマー気質と知らんかったし』
「よせやい。じゃあ次は"病気"」
『病気ぃ?またよくわかんねぇやつを』
「降参?」
『やってやろうじゃねぇか』
「できた?」
『自信ないけどできた』
「じゃあお前いいよ」
『うし。【友達の手で渡されるプリントと、アンニュイな登校】』
「気持ちめっちゃわかる。元気になってもなんか行きずれぇよな。」
『ちょっとツイートしてぇもん』
「じゃあ俺な。【友達より早く読めるジャンプに癒える我が胃腸】」
『ちょっと好きだわそれ。甲乙つけがてぇ~』
「お前ら何してんの?」
『佐々木!お前野球部引退してから髪の毛伸びんの早くね?』
「坊主の佐々木に戻ってあの頭をまたシャリシャリさせてくれよぉ」
「やだよ、シャリシャリするためだけに刈らねぇよ」
『今語彙力ゲームってのやってるけどお前もやる?テーマに沿ってどれだけエモく言えるかってやつ。テーマは"病気"』
「面白そーじゃん、病気な?…できた」
「は?早くね?」
『申してみよ』
「【尻にネギ】」
「お前が優勝だわ。」