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くずかごの戯曲  作者: GOMI
2/11

魔と神

「あら、こんにちは。素敵なお嬢さん」

『不思議ね。とってもきれいな女性が目の前にいるわ』

「ふふ。ありがとう。何をしているの?」

『さあ、私は何もしていないわ。』

「あなたってたくさん苦労をしてきたのね。私が力を貸しましょうか?」

『ありがとう。でもいいの。私はこのままでいいの』




「このままってあなた、危ないわよ?」

『ええ。仕方がないわ。それが人間だもの。』

「ふぅん。でも私、なんだか気分が悪いわ。こんなに愛らしい仔が苦しんでいるんですもの。」

『ごめんなさい。』

「あなたが謝ることではないわ。だってこれはあなたのせいではないもの。」

『…私は、どうすればよかったのかしら』

「聞かせて、あなたが最期に思うこと」

『人々の傍に寄り添っていたはずなの』

『沢山町の人も助けたわ。結婚を持ちかけられたりもした。私はここでの生活が楽しかったの。』

『でもいつからか、人々は私を避けるようになったわ。そして今に至るの。突然でしょう?私もそう思うわ』

「得体の知れない存在が許せないのね。人間ってそういうものよ。」




『あなたもそうなの?』

「さぁて、そうかしら。あなたが生きたいと願ったら、その時に教えてあげるわ。」

『死にたいわけじゃないの。ただ私…わからないの』

「死ぬわよ。」

『そう…。』

「ねえ、あなたってやっぱり可愛らしいわ。死ぬのが勿体ないわよ。」

『そんなに褒められるのはいつぶりかしら。前までは嬉しかったけど、今はそんなに喜べないわ。こんな醜い姿をしているんですもの。』

「あなたは自分を醜いと思うの?私が助ければ、醜いと思うこともなくなるわ。」

『どうしても私を助けようとしてくれるのね。』

「そりゃあ、人の住まいに何度も飛び込んでこられたらちょっと迷惑よねえ。」

『そうよね、ごめんなさい。でも私は彼らを裏切りたくない。このまま死ぬべきなんだわ。』

「あなたが裏切ったって誰も悲しんだりゃしないわよ。あなたはただ排除されて終わり。」

『あなたは、人間はお好き?』

「ええ!とっても好きよ。若い仔はもっと好き。あなたは例外。」

『私は、人間を愛していいのか解らなくなってきたわ』




「長くなってきたわね」

『そうね、私もそろそろ限界みたい。』

「どうするの?私の力が必要?」

『あなたはそうやって何人の女性を誘ってきたの?』

「あなただけよ。」

『私だけなのね。彼女たちは苦しんでた?』

「ええ。水ってね、とても声が響くの。どうしてここが選ばれたのか、私さっぱりわからないのだけれど」

『そう…私、もう少し生きたくなったわ』

「頑なに断っていたのに、どうしたの?…うふふ、復讐したくなった?」

『いえ、彼女たちを救いたいと思ったの。これからくる子たちも、今までここに来た子たちも』

「あなたって優しいのね。天使みたい。」

『そしたら、私を助けてくれるあなたは神様ね』

「うふふふ」





「さ、おいで。私の可愛い妖精さん。」

この社会現象は、本物だけでなく、「自分が疑われないよう別の人間を差し出す」といった非道な行為も行われていました。

裁判を受けた女性は斬首、火炙り、絞首、水責めなどで主に処刑されました。それらはいつしか裁判を介さず、自首を強要した、拷問といった形に変化していったのです。

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