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こんなはずじゃなかったのに
「こんなはずじゃなかった」
ベットの上には名前しか知らない女がスヤスヤと寝息をたてて眠っている。
どうしてだろう。最も愛のある行為をしたはずなのに、
なんでこんなにも寂しいのだろう。
俺は寝ている女の顔を見る。
この埋まらないものはいったい何だ。
さっきまではこの女のことを愛していると思っていた。
この女は俺のことをわかっていると笑顔をみせた。
この女だけが俺を理解してくれると思っていた。
だから女は俺を受け入れ、俺は女に与えた。
俺は鼻で笑う。
本当の自分を隠して俺はいったい何が欲しいのだろう。
寂しい理由ならわかっているのに......
さっきまでは女の肌に触れたいとばかり考えていた。
温かい肌に触れ、実感したかった。
俺は満たされていたはずだった。
愛に触れていたはずだった......
いや、違う。
本当は知っている。
本当に満たされたのは性欲だ。
でも、短時間で何か満たされたかった。
幸せになりたかった。
俺はこうなる前は幸せを感じていたはずだった。
なのに、どうして......
幸せがいったい何なのかわからなくなってしまった。
こんなはずじゃなかった。