異世界チート無双したい系男子の日常。
「異世界転生ってどうすればできると思う?」
「アホなの?」
どうも、ご紹介に預かりましたアホです。嘘です今を生きる高校二年生、井上 将吾ですすみませんでした。ちなみにこれでも結構真面目に聞いている。だってしてみたいじゃん!異世界転生。
「異世界に召喚ってされてみたくなくなくない?」
「死ねばいいと思うな」
「酷いっ!」
さっきから当たりが強いこいつははす向かいの家に住む幼馴染、松本 佳太。俺と同じ高校二年生だけど、見た目は中学生ほどだ。小学校高学年くらいまでは同じ身長だったのに、どこでこんなに差ができたんだろうか。
「いせかい〜、ちーと〜、むそ〜、した〜い〜」
「キモいから出てけ」
「おう、言っとくけどここ俺の家だからね!」
さらに言うなら俺の部屋。なのに佳太は我が物顔をしてベッドの上で俺が買ってきた転ドラ(転生したらドラゴンになってたorz)の新刊を読んでいる。まだ買った本人である俺も読んでいないのに、何故だ。
ピンポーン
そんなことを考えていると、玄関のチャイムが聞こえてくる。
「お、来たか」
「そうっぽいな。出てくるわ」
俺は自室を出て玄関まで行き、ドアを開く。
「ちゃろー☆」
そこには、少し太った男が立っていた。この独特(?)の挨拶をかましてきた男の名前は大葉 優作。真正のオタクで、アニメ、ゲームのことならなんでもござれの男だ。正直その方面の事なら役にしか立たない。
「その都会で流行ったりしてない挨拶やめない?」
「佳太はもう来てる?」
「無視か。二階で転ドラの新刊読んでる」
俺は優作と共に自室へと戻る。すると、どこにも佳太の姿がない。
「もしかしてあいつーー異世界に召喚されたな!」
「な、なんだってー!」
ノリが良いところも優作のいいところだ。
「なんで俺らも一緒に召喚されなかったんだ……」
「反省会やるか。反省会」
「そだな」
「ねえ、勝手に人を勇者にしないでくれる?」
後ろから佳太に声をかけられる。なんだ、召喚された訳じゃなかったのか。一安心。
「これでみんなで召喚されることができるな」
「そうだな!」
「召喚されるならせめて俺を巻き込まないでくれ」
「俺勇者な〜」
「じゃあ俺騎士で〜」
「佳太はバランス的に賢者な〜」
「いや、何で俺も召喚された前提で話が進む……」
俺と優作だけだと性格(簡単に言えばレベルを上げて物理で殴る感じ)的に魔法職居なくなるからね、仕方ないね。
ピンポーン
そんな会話をしていると、また玄関のチャイムが鳴った。
「え、まだ誰か呼んでたっけ」
「謎の第六感を持つ男、瀧澤に3000ペリカ」
「宅急便とかかと思ったけど瀧澤もありそうだから困る。でも宅急便に5000ペリカ」
「とりあえずめんどいから誰か出てきてー。宅急便だったら呼ぶべし」
「あいあい、行ってきますお」
優作が階段を降りて玄関へと向かっていった。因みに俺は瀧澤に2000ペリカだ。佳太はまだ転ドラを読んでいる。そろそろ俺に読ませろよと思っていると、階段を上がってくる音が聞こえてくる。宅急便ではなかったらしい。
「瀧澤、参戦!」
「てれれーってれれーてーれーてー」
という感じで滝沢と優作が部屋に入ってくる。謎にテンションが高いのはいつも通りだ。
「ほんといつも思うけど瀧澤の第六感凄いよな」
「それなー」
瀧澤 翔斗。バイパスを挟んで数分のところに住んでいる、俺らと小学校から同じ友人だ。こいつ抜きで集まっていて、なおかつこいつが暇な時、異様な確率でこいつは集まっているところへやってくるところから俺らはある種の敬意と畏怖を込めて第六感の持ち主と呼んでいる。
「気づいたらいつものメンバー揃ってるな」
「そうだな」
いつも集まって遊んでいる面子がいつのまにか揃っていた。……もしや!
「異世界に召喚される絶好のタイミングじゃないか!?」
「お前一回死ね」
「馬鹿は死んでも治らないらしいけどね」
そんな天丼ネタをしていると、なんと部屋の床が光り出し魔法陣を形成しだす。
「え、お!あ!?」
「うっそ!?」
光は次第に強くなっていき、視界が奪われる。気がつくとそこはーー、
「はっ!」
ベッドの上だった。クソ!
「夢オチかよぉぉぉぉ!」
こうして異世界チート無双したい系男子の一日がまた、始まるのだった。