【第五十三話】奇抜な転校生
「はーい、ホームルーム始めんぞー。先週言ったとおり、今日からこのクラスに新しいやつが2人増えんぞ。んじゃ、お前ら入れ」
神谷先生がそう言うと、教室の戸から生徒が入ってきた。そして、その瞬間に、目を疑った。
男女二人。
女子の方は、青髪で緑眼。
男子の方は、銀髪で銀眼。
「ネル」
「フレディー、と呼んでくれ」
とりあえず言おう。突っ込みどころが満載だった。
「黒井 麻央。桐谷 秀。話がある。聞いてくれないか」
学校の授業が終わった後、転校生達が尋ねてきた。
……何かした覚えはないのだが。というか、普通は逆じゃね、これ? 転校初日の人にフルネームで呼ばれるってどうよ。
麻央さんもきょとんとした様子でいる。
教室の視線も集まるが、別に場所を移動するということもなく、そのまま教室の中で彼らは話し始めた。
「本題から述べる。俺達の任務は、黒井 麻央、桐谷 秀、両名の守護だ」
いきなり素っ頓狂なことを言われた。
「……え、えぇと……なんでかな?」
麻央さんがどもりながら訊く。
「貴方達は、いずれ何者かによって狙われる。それらから護るのが私達の使命」
女子の方が答えた。
「『いずれ』っていうのは……」
「近からず、遠からず。一週間後か、はたまた一年後か」
……さて、全く事態が把握出来ない。
とりあえず、端から訊いていくか……。
「……その前にさ。君達は一体何なんだ?」
「俺達は、主人によって、造られた『存在』だ。そして、その方に命を受けてここにいる」
「……アンドロイド、みたいなもの?」
麻央さんが訊く。
「近いと思われる。こちらとしても明確な名称はない。元々存在した物の単なる応用型」
今、気付いた。僕が訊くと男子の方が答えて、麻央さんが訊くと女子の方が答えるみたいだ。
「主人の種族では、この世界で言う『テレパシー』という意思疎通能力があった。故に、言葉を用いる必要性が無い。しかし、他種族との意思疎通は不可能な為、言葉を媒介とするコミュニケーションツールを造った。そして、長い年月を経て改良が行われた。それが、今の私達の基」
女子の方は、眉一つ動かさずに喋った。
「基? じゃあ、君達は……」
僕が訊くと、やはり今度は男子の方が。
「俺達は言うなれば、戦闘用だ。意思疎通が目的ではない。戦い、対象を護るために造られた『存在』だ」
男子の方がいくらか感情的のようだ。本当に、微妙だが。
「……フレディー、って言ったっけ。君」
「ああ」
「その……主人って何者だい? 僕と麻央さんの危険を感じて、君達を送り込んだ主人っていうのは」
「言葉で情報を伝達するには限度がある。だが、一言で言うなれば人外の『存在』だ」
「じゃあ、僕らを護ることに、その人には何かメリットが?」
「俺達に課せられた任務は、お前達を別の『存在』から護れ、というものだ。詳細は受けてない」
「…………」
一旦、要点的にまとめてみよう。
一、この転校生達は命令で僕らを護りに来た。
二、主に何の得があるかは不明。
三、近いうちに、面倒なことがある。
漠然としすぎだ。
それにしても、あれだ。
最近、平穏な生活というものが続かない。
そして、これから面倒なことが起こると予言までされた。
頭が痛くなるよ、ほんと。