表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の世界  作者: Sal
5/172

【第五話】崩壊編:頼みと幕開け

 それは、十月の下旬頃の出来事だった。



「秀くん、ちょっといい?」


 休み時間。次の授業の支度をしていた僕は、その人物に呼びかけられた。


「何だい、黒井さん?」


「あはは、秀くんいつも、よそよそしいよねー。苗字でなんて」


「ん……じゃ、麻央さん」


「…………」


 あれ、何だろう? なんか顔が赤くなってるような?


「……い、いや普通に『まーさん』でいいよ? トモダチくんみたいに」


「うーん……どうも、あだ名とかで人を呼ぶの嫌なんだよね」


 トモダチに関しては、本人が懇願してたから別だが。


「そ、そう……」


「で、麻央さん、なんか用?」


「あ、うん……」


 若干落ち着きが無いまま、麻央さんは話し始めた。






 麻央さんの話の内容は、簡単なものだった。


 黒板のチョークが無くなったから職員室まで貰いに行ってほしい、とのことだ。


 本来チョークの補充とは日直の仕事。今日の日直が誰であるかと訊かれれば、麻央さん以外の誰でも無いのだが、当の本人は別の用があるらしく、僕に頼んできたという訳だ。面倒ではあるが、麻央さんからの頼みなので、僕は引き受けることにした。特に断る理由も無いし、自分を頼ってくれているという風に考えれば別に悪い気はしない。彼女は、僕の数少ない女友達の一人だ。ただし、これで頼んできたのがトモダチとかだったら話は別であるが。



 そんなこんなで僕は今、職員室前にいる。まぁ、さっさと頂戴するとしよう。


 ガラッ、と戸を開けると、僕は一瞬自分の目を疑った。


「…………?」


 先生がそこに誰もいなかった。再度言うが、今は休み時間である。こんなことがあるのだろうか?


 考える。職員会とかは放課後だろう。ならば全員トイレとか……だがさすがに全員はおかしい。次の授業への移動でも、何人かは残るはず。


 …………ま、いっか。誰か来るのを待つのも面倒だ。チョークだけ取ってこう。確か、こっちの棚の中―――お、あったあった。白チョークは、4本くらいでいっか。他の色のも1本ずつ貰ってこう。計9本のチョークを持って、僕が職員室を出ようとした時だった。



 全身に黒いローブを纏った人物が、職員室の戸の前に立っていた。



「…………」


 何だ、こいつ。


 顔まで隠れているため、男か女かも判らない。


 ……っていや、そんなことは至極どうでもいい。男なのか女なのか何者なのか何故ここにいるのか等々、湧き出るあらゆる疑問は差し置いておく。そんなことよりも、アレだ。


 これは、間違いなく面倒な展開になってきている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ